親知らずのスペシャリストとして
数多くの治療経験があります


「予防歯科への想い」等 是非とも
患者様へご覧いただきたいコラム


当歯科医院 副院長は数多くの
歯科医療の論文を執筆しています

千種区の痛くない歯医者

〒464-0074
愛知県名古屋市千種区仲田2-18-17

【電話予約】
TEL : 052-751-0613

平日遅め・土日は予約が
取りづらくなっています。
早めのご予約をお勧めします。

駐車場:あり

地下鉄池下駅より徒歩5分、
今池駅から6分

こちらはコラム記事になります。
一部、当院で行っていない治療もご紹介しております。
ご了承くださいませ。

【歯科治療系】虫歯を取らずに虫歯の穴の封鎖だけを行うとどうなるか?

Hallテクニック.jpg

千種区の頼れる歯科医院 阿部歯科では、予防歯科に力を入れており、虫歯や歯周病の進行抑制など最新の歯科医学的知識を取り入れています。

今回は虫歯に関する内容をお伝えします。

 

虫歯の治療においては感染源となっている虫歯の部位(う蝕)を除去して、その部位を修復するという治療が一般的となっています。

しかし、その修復の際に虫歯を取らずに穴の封鎖だけを行うとどうなるのでしょうか?

虫歯を取らない歯科治療も存在する

日本では一般的には行われていませんが、Hallテクニックという虫歯を取らずに封鎖を行う治療法があります。

この治療法は乳歯を対象としており、虫歯になった乳歯に対して歯を削らず虫歯の処理も行わずに既成の金属冠を歯の頭である歯冠にセメントで合着するという方法です。

主に治療が困難で歯を削る事が出来ない小児に対して行われる場合があり、歯が生え変わるという事を前提とした乳臼歯に対する治療法です。

元々は1980年代にDr. Norna Hallの乳臼歯の虫歯を封鎖して進行を止めるという手法から考え出されました。
 

この方法では、局所麻酔も虫歯の除去も形の形成も行わず、金属の既成冠をセメントで合着するという一見すれば蓋をしてしまう治療法となっています。元々は古い歴史のあるHallテクニックですが、治療成績に関する論文はここ10年くらいでしばしば見る機会が増えたように感じます。これは合着材の発達に伴う辺縁閉鎖性の向上に伴って治療成績が上がりだしたからかもしれません。

この治療法では、虫歯の感染巣に存在する細菌群に対して口腔内から環境的に隔絶させて栄養源を絶ち、飢餓状態にする事でその進行を止めようという方法で、完全に口腔内の環境から分断されているという事が必須条件になります。

歯髄炎を起こしていない虫歯に対する治療成績をおおよそ2ケ月から60ケ月の経過で追うと、歯髄炎や歯髄壊死、化膿といった致命的な状態に陥った歯が3%、単純性の歯髄炎や冠の脱落、二次う蝕といった再治療可能な状態が5%と、治療成績が比較的良いように思えます。
 

ただし、この状態はあくまでも虫歯の進行の停止を意味しており、治癒がされたわけではないのでひとたび辺縁漏洩が起きると再び虫歯が活性化しはじめるという事になります。

そのため、あくまでも生え変わる事を前提とした治療困難な子供の乳歯への一時的な処置として治療法が考え出された背景があります。

あくまでも虫歯の除去ではなく、虫歯の進行抑制を目的とした治療法であるという点に注意しないといけません。

大人の歯に対し、虫歯を取らずに処置をしてもいいのか?

大人の虫歯に対してシーラントをして虫歯の抑制をできるのかという研究もされています。

虫歯は酸によって歯の無機質が脱灰される状態で、無機質がほとんどのエナメル質では空洞が開き、象牙質に達すると柔らかいコラーゲン線維などを残して軟化した象牙質として虫歯が形成されます。

初期の脱灰を除いて、虫歯によって脱灰された無機質は再石灰化する事はないので無機質が脱灰されコラーゲン線維などが残された軟化象牙質はその状態が石灰化され戻る事はなく、軟化されたままなので通常は虫歯の除去の対象となります。

永久歯の臼歯咬合面う蝕に対して虫歯の除去と治療ではなく、進行抑制という点から虫歯を残してレジンによる封鎖を行った場合25ケ月から38ケ月ほどで経過を追うと、

虫歯が退行したものが2%、

変化が特に見られないものが88%、

虫歯が進行したものが10%、

と進行抑制という点から見ると成績が良いように見えます。
 

ただし、この状態もあくまでもレジンなどによる辺縁封鎖が完全にされており、虫歯の病巣が口腔内環境から完全に隔絶されている事が前提となるのでレジンや修復物の劣化によって栄養源が病巣に供給されれば再び虫歯が進行しだす事を意味します。

一方で虫歯の除去を行い修復をした場合は完全に虫歯の進行は停止するため、一時的な進行抑制のみを目的としない場合は、やはり病巣である虫歯の除去と修復が基本となります。

そのため、今現在虫歯を取れない何らかの理由があり将来的に虫歯の除去と修復を予定するといった場合に用いられるような一時的な処置という状態にとどまります。

虫歯予防として行われるシーラントにおいても1年でおおよそ20%が、5年で半分が脱落すると言われているため、辺縁封鎖性の持続がいずれにせよ課題となります。

 

 

参考文献:

1) The Hall Technique for managing carious primary molars. Innes N., et al. Dent. Update. 2009.

2) Sealing caries in primary molars: randomized control trial, 5-year results. Innes N. P., et al. J. Dent. Res. 2011.

3) Sealing occlusal caries lesions in adults referred for restorative treatment: 2-3 years of follow-up. Bakhshandeh A., et al. Clin. Oral Investig. 2012.

4) The success of stainless steel crowns placed with the Hall technique: a retrospective study. Ludwig K.H. et al. J. Am. Dent. Assoc. 2014.

カテゴリー

  • 虫歯