朝起きた時に歯が痛いという理由で歯医者さんを受診される患者さんがしばしばいます。
千種区の阿部歯科でもそのような理由で受診される患者さんが多くいます。
歯が痛くなる理由は様々ですが、その痛みが出る時間帯によって虫歯や歯周病以外の他の原因によって痛みが出ている事が予想できる事もあります。
歯が捻挫を起こす
歯が捻挫を起こす、と書きましたが、捻挫といえば関節で運動をしすぎて関節を痛めてしまう事ですね。
歯にはもちろん関節はありませんが、関節のように歯も噛み合わせや特定の癖などの条件が重なると関節の捻挫のように痛める事があります。
ただし、歯の場合に痛めるのは関節ではなく、歯を支える歯と骨の間にある「歯根膜」です。
この歯根膜ですが、歯で物を咬んだ時や歯を噛み合わせた時に衝撃を和らげるためのクッションの役割をしています。
このクッションである「歯根膜」が強いダメージを受けると、炎症を起こして痛みを感じるのです。
歯を痛めないために自然と備わっている機能
ところでみなさんは、通常は上下左右合わせて歯が何本あるからご存知ですか?
親知らずを含めて32本です。
親知らずがなかったり生えてない人は全部で28本です。
そしてこの、28本の歯ですが、それぞれの部位の歯で役割が違います。
この28本の内
①笑った時に見える上下左右の前歯8本は、顎を前に出している時にお互いに当たり、その他の歯が当たらないように役目をしています。
②前から3番目の犬歯(もしくは糸切り歯)は、歯を咬んでギリギリ横に動かした時に当たって顎をスライドさせて、他の歯が当たらないようにしています。
③残りの上下左右奥歯16本は上と下の歯を咬み合わせた時に、カチっと安定した位置に保つ役割を果たしています。
基本的にはそれぞれの歯にはこのような役割があるのですが、人によっては、前から4番目の歯や5番目の歯も、歯をギリギリした時に当たる場合があります。
この4番目と5番目の歯の形ですが、見てみると少しだけ犬歯(糸切り歯)に似ています。
ちょうどこれらの歯は、奥歯の大きな2本の歯と犬歯の中間のような形をしているので、これらの2つの機能の中間の性質を持っています。
八重歯などで、犬歯が噛み合ってない場合は、この犬歯の奥にある4番目の歯が、歯をギリギリした時に犬歯の代わりの機能を果たしたりします。
歯の当たり方によって痛みが左右される
さて、このそれぞれの役割ですが、それぞれの歯がその歯の得意な役割以外の役割を与えられた時に、不具合が生じる事があります。
つまり、歯根膜がダメージを受けて歯が捻挫を起こしたように痛みを感じる事があるわけです。
例えば、歯をギリギリした時に前から6番目の大きな歯が上下で当たっているとします。
すると、ギリギリした時に歯に痛みを感じる事があります。食事の時にも普通に咬んだ時にも感じる事があります。
これは正に、歯根膜がダメージを受けて炎症を起こしている状態です。
①では、なぜ犬歯は大丈夫なのでしょうか?
この、犬歯ですが、実は他の歯よりも骨に植わっている歯の根の長さが長いのです。
つまり、電柱が地面の奥に深く刺さっているようなもので、横揺れに強いわけです。
そのためにギリギリやった時にもしっかり歯の支えが得られるのです。
前から4番目と5番目の歯は奥歯よりは犬歯に近いものの、犬歯ほどはこのギリギリした時の横揺れの強さには強くはありません。
②前歯の場合はどうでしょうか?
前歯は犬歯ほど歯の根は深くがありませんが、全部で8本で顎を前に出した時に当たるようになっています。
ギリギリして犬歯が当たっている場合は、下顎を右に動かした時は右の上下の犬歯の2本が、下顎を左に動かした時は左の上下の犬歯の2本がそれぞれ当たっています。
前歯と犬歯の当たっている時の数を単純に数えると8本と2本で4倍違うわけです。
そのために、前歯の歯の根が犬歯ほどは深くなくても支えとしての役割を果たす事ができます。
どうして寝ている間に歯を痛めるのか
しかし、例えば、夜に歯ぎしりの癖がある人だと、毎晩得てる時に日常的に歯をギリギリするので、歯ぎしりをしない人に比べて犬歯がすり減ってきます。
犬歯がすり減ってくると、それまでギリギリした時に当たっていなかった4番目の歯が当たり出し、次に5番目の歯、そして6番目、7番目の歯へと当たるようになってきます。
4番目の歯が当たる場合は症状がない人が比較的多いですが、5番目、6番目と当たりが強くなってくると、痛みが出てくる人がチラホラと出てきます。
特に6番目と7番目の歯がギリギリした時に当たっている場合は、強い痛みが出る事もしばしばあります。
6番目と7番目の歯はギリギリした時の動きに本当に弱く、これが歯が捻挫を起こしたような状態になるのです。
このような場合は、夜につけるナイトガードを製作するなどして、そのナイトガードが奥歯を守るようにする事ができます。
そのためには、寝ている時にナイトガードはつける必要があります。
歯ぎしりの自覚がなくても、朝起きると歯の奥が痛かったり、顎の関節がなんだか痛い、というような人は、寝ている間に歯ぎしりをしている可能性がある事に注意しないといけません。