名古屋市千種区の歯医者 阿部歯科副院長の阿部利晴によるブログ。より良い歯科医院作りや患者様に役立つ歯科情報を発信。

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注射針の太さの謎(バーミンガムワイヤーゲージ)

こんにちは、千種区池下の歯医者の阿部歯科です。

注射針は歯科治療の局所麻酔の際の口腔粘膜への注射や、点滴の際の静脈への循環へのルート確保の際、時には全身麻酔下でのリアルタイムでの血圧モニタリングのために動脈に留置針を刺入する際などに使われますがそれらの針の太さは目的に合わせて様々なものが用意されています。針の太さは直径が大きければ大きいほど刺入時の刺激が強く痛みが強いのですが、この注射針の太さはG(ゲージ)と呼ばれる規格が決められておりその規格を見てどの太さの注射針を使うかを決定します。そこで今回は普段あまり気にすることのない注射針に焦点を合わせてお話をしようと思います。

注射針の太さ

注射針の太さはその目的によって太さが変わってきます。細ければ細いほど刺入時の痛みを感じにくいのですがその反面、細いほど液体の流入速度も遅くなります。歯科治療の際の口腔粘膜へに局所麻酔ではかなり細いものが使われており、これは敏感な口腔粘膜に対して可能な限り刺入時の痛みを感じにくくする目的のために細いものが使われています。針の太さは「G(ゲージ)」という単位で太さが決められており、数字が小さければ小さいほど太く、大きければ大きいほど注射針の直径が小さくなっていきます。歯科治療の際の局所麻酔では通常はおおよそ30Gから33Gの太さの注射針のものが使われる事が多くなっています。数字だけ30Gから33Gと聞いてもイメージがつきにくいと思いますが、インフルエンザワクチンの予防注射目的の皮下注射ではおおよそ26G付近の太さの注射針が、点滴などの目的の静脈内注射では22G付近の太さの注射針が、全身麻酔中の術中管理目的の輸液では目的に合わせて18Gから22G付近、全身麻酔中の失血に対する輸液や輸血ではかなり太いものだと16Gに太さの注射針が使われる事もあります。33Gの太さと16Gの太さを比べるとそれぞれおおよそ直径1.6mmと0.2mmと、直径で8倍もの太さの差があります。この注射針の太さの比較から見ても歯科治療の際の局所麻酔の注射針にはかなり細いものが使われている事がわかりますね。

どうしてG(ゲージ)が大きいほど注射針の直径が小さくなるのか

なんとなくのイメージだとゲージの数字が大きくなれば太く、小さくなれば細くなりそうですが注射針の太さの場合は逆になります。ゲージの数字が大きくなれば細く、小さくなれば太くなります。そしてゲージの数字が半分になったから注射針の太さが2倍になるといったような規則性もなくゲージの数字から注射針の太さをイメージするのは非常に困難です。実際の臨床現場ではゲージの数字から大体の太さのイメージを記憶していても、それぞれの注射針のゲージ数の比較からそれぞれの太さの差を計算で出す事はできません。実はこのゲージという規格は19世紀のイギリスで鉄線や鋼鉄線の金属線(ワイヤー)の規格として決められたBirmingham Wire Gauge(バーミンガムワイヤーゲージ)からきており、このゲージの部分をGauge(ゲージ)という規格で注射針に利用したのです。このバーミンガムワイヤーゲージという針金類などに使われる規格が注射針に応用されたのは少し不思議ですね(尚、このバーミンガムワイヤーゲージという金属線の規格は今では大分古いもののようですが、一部では使われているようです)。そしてこのゲージと太さの関係ですが数式では計算不可能でバーミンガムワイヤーゲージで規定された太さに金属線の伸線(金属線を円錐状の筒に通して太さを変える工程)を行い決められているようです。一時期この金属線の太さの定義を数式的に再定義し直すようにするという試みもあったようですが、数式に当てはめてしまうと現在ある規格との太さの間に誤差が生まれてしまうという理由で結局は見送られたようです。これらの金属線の太さについても19世紀のイギリスの時代から色々な人が色々な規格を提案しており、当時のイギリスでも規格が乱立して大変だったようです。

今回は注射針の太さ「G(ゲージ)」についてお話をしましたが元々は19世紀のイギリスの金属線規格のバーミンガム ワイヤー ゲージからきており、太さは計算式ではなく決められた伸線工程での太さで定義されているというお話をしました。歯科治療でも局所麻酔のための注射に使われる注射針ではかなり細いものが採用されていますが、その注射針の太さの規格の成り立ちにはこのようなお話が隠されていたのです。

参考文献:The story of the gauge. J. S. Poll. 1999. Anesthesia

 

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