昔の歯医者さんはどんなドリルを使っていた?(エアータービン編)
歯医者さんで虫歯を削る時にドリルを使いますが、このドリルは患者さんにとって苦痛が少なく、可能な限り痛くないように治療できるように進化をしてきました。切削器具であるドリルの高回転数の進化は患者さんの不快感の軽減と痛くない治療を目指すために必須のものでした。歯を削る際のドリルは現在最もよく使われるもので圧縮空気を利用したエアータービンとマイクロモーターによる駆動力を利用した切削器具に大きく分かれます(関連記事:歯医者さんのドリル)。エアータービンはトルクが小さいものの高速回転をして、マイクロモーターによる切削器具はトルクが大きく回転数が低いという特徴があります(関連記事:昔の歯医者さんはどんなドリルを使っていた?(モーター編))。今では大きく2種類に分かれた歯医者のドリルですが、今回は圧縮空気を利用したエアータービンのハンドピースに注目してエアータービンハンドピースは一体いつ頃から使われているのかというお話をしようと思います。
記事の追記:2019年9月27日
歯医者さんのドリルっていつ頃からあるの?
今では当然に使われる歯医者さんのドリルですが、書物に詳細が残る最初のドリルの原型は1728年に紹介された弓を使った弓ぎり式のドリルだと言われています。その後ゼンマイを利用したドリルや手で直接回すドリルが作られたものの、その回転数は300 rpm(1分間に300回転)程度のものでした。現在のエアータービンハンドピースによる切削回転がおおよそ400,000 rpm(1分間に40万回転)という事を考えるとその違いがよく分かります。しかし当時はまだ工業的に生産される主要な切削器具はありませんでした。
近代的な歯医者さんのドリルの始まり
近代的なエアータービンハンドピースの原型となるものができたのは1868年にアメリカでGeorge F. Greenが発表した空気を利用してギアを回転させてドリルを回すという歯科治療器具でした。この治療器具は現在の回転切削器具の基、エアータービンハンドピースの基、エアモーターの基となる器具と認識されています。この器具は口やふいごから供給された空気を器具の中に吹き込んで空気圧でギアを回転させるという車のロータリーエンジンのような構造をしており現在の回転切削器具とは大きく構造が違っていましたが世界で工業的に生産された最初の歯科治療用の回転切削器具だと言われています。
この器具はまだ現在のエアータービンハンドピースの構造とは大きく異なり、本当の意味での空気圧によって羽根車を回すタービンを用いた回転切削器具が出たのは1874年の事です。しかしこの器具はタービンを歯科医師の手元の部分に設置しており、タービンをドリルの先端のヘッド部分に設置する今現在のエアータービンハンドピースとは構造が大きく違っていました。この同時期に開発された歯科治療用回転切削器具が電気モーターを使ったものや足踏み式による駆動力を利用したもので当時の回転速度はまだ700 rpmから1000 rpmでした。
現在のエアータービンハンドピースの原型となったもの
現在のエアータービンハンドピースのようにヘッド部分にタービンを設置した最初の歯科治療用回転切削器具はニュージーランドのFrancis R. Callaghan から1952年に発表されたものでした。この器具の回転速度は60,000 rpmでかなりの回転速度をほこったものの使用の際の音が非常にうるさく使用の後にあまりの高速回転のためタービンがオーバーヒートを起こして回転軸をささえるボールベアリングも壊れてしまうものだったようで実際に市場に売り出される事はありませんでした。市場には売り出されなかったもののこの器具はまぎれもなく今現在あるエアータービンハンドピースの原型になったものと言われています。
実際に市場で製品となった最初のエアータービンハンドピース
現在のエアータービンハンドピースに近い製品が最初に市場で製品化されたのはそれから間もなくの1957年の事でBorden Airotorという製品名でアメリカのThe Dentists’s Supply Campany(現在のDentsply International)とドイツのKavo社から発売されました。この製品の回転速度はコンプレッサーによる圧縮空気を利用して200,000 rpmから300,000 rpmの速度で回転しており現在のエアータービンハンドピースの回転速度と比べて遜色ありませんでした。この製品はその後の改良品も含めてアメリカやヨーロッパや日本で発売され1年ほどで5万製品売れるほどの大ヒットをしました。日本でも発売されたBorden Airotorですが、1957年当時にはすでに千種区に阿部歯科があったので祖父がこの製品を使っていたかもしれません(関連記事:阿部歯科ができて80年が過ぎました)。
エアータービンハンドピースはその後、タービンの回転の安定性の改良やオーバーヒートを防ぐ冷却装置の改良、昔はベアリングに注油するためのオイルミストを吐き出しながらの使用だったものを軸受けのボールベアリングにセラミックを採用して、ベアリング部分に注油が必要なくなるなど様々な改良がすすめられて現在のエアータービンハンドピースへと進化しました。このような歯医者さんのドリルの進化が無痛の治療・痛くない治療への進化へと貢献しているのです。
参考文献:
1) How the development of the high-speed turbine handpiece changed the practice of dentistry. J. R. Eshleman, D. C. Sarrett. J. Am. Dent. Assoc. 2013.
2) The development of the dental high-speed air turbine handpiece. Part 1. J. E. Dyson, B. W. Darvell. Aust. Dent. J. 1993.
3) The development of the dental high-speed air turbine handpiece. Part 2. J. E. Dyson, B. W. Darvell. Aust. Dent. J. 1993.
4) The dental handpiece - a history of its development. R. R. Stephens. Aust. Dent. J. 1986.
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