千種区池下の歯医者 阿部歯科 副院長の阿部利晴によるブログで、アメリカの歯科医療についての事情等を載せています。

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2020年4月アーカイブ

バイオフィルムの発育様式.jpg

千種区の歯医者 阿部歯科副院長です。本日は「歯科」「予防歯科」系の話題となります。

虫歯や歯周病は口腔内で細菌が発育増殖して細菌集団であるバイオフィルム(プラーク)を形成して発症します。

細菌集団や代謝産物、食べ物の残渣など様々な物質を含むこのバイオフィルムが口腔内の様々な疾患の原因となりますが、バイオフィルムを形成するための細菌の増え方という点にはまだまだ不明な点が多くあります。

口腔内ではまず球菌が最初に付着してその後に桿菌など様々な形態の細菌が絡み合うようにして付着する事でバイオフィルムを形成していく事が分かっていますが、その増え方の様式自体ははっきりしていませんでした。

最新の研究から分かる口腔内細菌の増殖の様式

バイオフィルムの形成研究は多くが1つの細菌がどのように増殖していくのかという点から研究が行われています。

しかし、1つ1つのそれぞれに増殖する細菌がどのように巨大なバイオフィルムという細菌群を形成していくのかは不明な点が多くありました。

最近の研究では細菌は1つの細菌の付着から巨大なバイオフィルムを形成しているのではなく、それぞれに発育していく細菌集団が融合してどんどん巨大なバイオフィルムの細菌群を形成していく事が報告されています。

対象として確認されたのは虫歯の原因となる細菌の一つであるミュータンスレンサ球菌(Streptococcus mutans)で、その発育の様式が時間と空間的にどのように増えるかと経時的に調べられました。

報告された増え方の様式は、

最初に数マイクロメートル(1000分の1ミリ)の間隔をあけて球菌が付着をする。これはバイオフィルム形成の初期の段階における球菌の付着と同様となります。

その後それぞれの場所で付着した球菌がネバネバとしたextracellular polymeric substances(EPS:細胞外高分子)と呼ばれる物質を出して増殖を開始します。この発育の過程でおおよそ60%以上の球菌は発育できずに消滅していきますが、残りの生き残った球菌が平面的に増殖を続けてやがて近くの別の増殖している細菌集団と融合します。

融合する事によって形成された細菌集団は増殖を続けて、さらに別の場所で融合した細菌集団と融合をします。

平面的に増殖と融合を続けた細菌集団はやがて3次元的には盛り上がるように増殖を始めて巨大な細菌集団を形成した後にまた別の場所で巨大化した細菌集団と融合をして大量のバイオフィルムを形成していく事が分かりました。

つまり、バイオフィルム発育の段階では様々な場所で同時多発的に発生した球菌の付着と増殖により、寄り集まるようにしてバイオフィルムを形成していく事が示されています。

(関連記事:虫歯や歯周病の始まりとなるプラークの蓄積

口の中の汚れを悪化させる要素

口腔内の様々な細菌や清掃不足で口の中の汚れ(プラーク、バイオフィルム)が蓄積していく事となりますが、バイオフィルムの形成に影響する要因は細菌自体にも存在します。

特定の細菌のバイオフィルムの形成を阻害する別の細菌も存在しており、今回のミュータンスレンサ球菌に関してはStreptococcus oralisがそれにあたります。

ミュータンスレンサ球菌のバイオフィルム形成時に一緒にStreptococcus oralisを発育させるとバイオフィルムの形成が阻害される事が分かっており、共に競合してそれぞれの発育を争うように阻害する事が示唆されています。

一方でバイオフィルムの形成を促進させる細菌や真菌も存在しており、このような細菌や真菌が口の中で汚れとなる巨大なバイオフィルムに含まれて細菌の塊を作っています。

ミュータンスレンサ球菌と共に真菌であるカンジダ菌(Candida albicans)を発育させるとミュータンスレンサ球菌の発育を阻害する事なく細菌集団が融合する段階でのバイオフィルムの形成を促進させていく事が確認されました。

つまり口の中の汚れの問題は細菌自体の発育だけではなく、それぞれのプラーク(バイオフィルム)の融合という点からも注意していく事が大切となり、それぞれの細菌集団の融合を手助けするような口腔内の細菌への対処にも目を向ける事が大切となるのです。

さらに細菌の代謝産物のネバネバとした細胞外高分子が産生されなくなるとバイオフィルムの形成が阻害される事も分かっており、様々な細菌同士がお互いに結びついて増殖しては融合、増殖しては融合といったプロセスを踏んでいく際の「細菌の増殖」と「細菌集団の融合」という別の視点から口の中の汚れが増えていかないようにする事が必要とされてくるのです。

(関連記事:外出自粛中に自分でできる虫歯や歯周病の食生活管理

 

当院ではこのような細菌集団の塊であるプラークの形成を顕微鏡で確認して、今現在口の中の汚れがどのような状態にあるのか把握する事で虫歯や歯周病の予防をする予防歯科に力を入れています。歯医者さんでできる予防歯科の処置と共に患者さん本人でもどのような対処ができるかを考える事でより効果的に虫歯や歯周病を予防していく事ができるのです。

 

参考文献:

1) Biogeography of a human oral microbiome at the micron scale. Mark Welch J. L., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2016.

2) The Peculiar Functions of the Bacterial Extracellular Matrix. Dragoš A., et al. Trends Microbiol. 2017.

3) Dynamics of bacterial population growth in biofilms resemble spatial and structural aspects of urbanization. Paula A. J., et al. Nat. Commun. 2020.

歯ブラシの形.jpg

千種区の頼れる歯医者 阿部歯科の副院長です。今日はよく患者さんからご質問いただく歯ブラシについてのお話です。

歯を磨く時にどのような形の歯ブラシを使えばいいのか悩む患者さんは多くいます。

患者さんにあったそれぞれの歯ブラシの硬さや形というのは様々にありますが、歯ブラシの硬さや毛の細さ、形といった要素には様々な歯磨きへの影響が色々とあります。

歯ブラシの様々な種類

現在日本には歯ブラシのモデルがおおよそ450種類以上もあると言われています。色々なメーカーから様々な形の毛先の歯ブラシが出ており、

・昔からある平らな、Flat

・毛先がギザギザになっている、Rippled

・複雑に入り組んだ特殊な形をした、Angled

など、色々な形態の歯ブラシが出ています。

これらの歯ブラシの形でどのような形がいいか悩まれる方も多くいるかもしれませんが、これらの形は歯の表面を均一に磨くのを目的としたり、歯と歯の間を効率的に磨けるようにしたりといったそれぞれの目的別に形が作られています。

平らなFlatタイプの歯ブラシでは歯と歯の間に毛先を入れるのが難しくなる事があるため、ギザギザとなっているRippledタイプの歯ブラシを選ぶようにするといったそれぞれの患者さんの歯磨きの癖や歯並びによって選んでいく必要があります。

千種区にある歯医者の阿部歯科のロゴは歯ブラシの形をしていますが、実はRippledタイプの歯ブラシの形を基にデザインしています。

歯ブラシの毛先の太さや硬さはどれくらい影響するか

歯ブラシの毛先の太さや硬さによる歯磨きの効率というのも実は色々と調べられています。

例えば、毛の太さが0.2mmと0.18mmのものを比べると0.2mmの太さの毛先の方が歯と歯肉の間の汚れをより効率的に落とす事ができるとされます。

さらに毛先の太さを0.13mmから0.28mmの間で比較するとより毛先が太い方がより、歯の表面や歯と歯の間の汚れを落とす事ができるとも言われます。

毛先の硬さに関しては柔らかい毛先よりも普通の硬さの毛先、さらには硬い毛先の方が汚れを落とす効率は上がるものの、知覚過敏といった症状がある場合には硬い毛先だと間違った歯磨きの仕方をすると知覚過敏を増悪してしまう可能性があるという場合もあります。

(関連記事:歯磨きと歯ブラシ

歯磨きに影響する歯ブラシの要素

歯ブラシの毛先の形や太さや硬さは歯磨きの際の汚れを落とす効率などに影響するものの歯ブラシの毛先の付いているプラスチックのヘッド部分の形はそこまで大きな影響を及ぼさないとも言われます。

しかし、歯ブラシのみの歯磨きによって落ちる口の中の汚れはおおよそ40%から50%ほどと言われており、歯ブラシのみでなくデンタルフロスやマウスウォッシュなども併用して歯磨きをする事が必要になる場合もあります。

推奨される歯ブラシによる歯磨きは1日に少なくとも2回以上、そして1回につき2から3分やさしい力で歯を磨く事がすすめられています。

そしてその際には上下左右それぞれのブロックを30秒から45秒かけて磨くといいとされています。

(関連記事:洗口液(マウスウォッシュ)は1日に何回使えばいいのか?

(関連記事:正しい歯磨きの回数や時間は?
 

千種区の歯医者 阿部歯科ではブラッシング指導も行っています!

当院では正しいブラッシングに関する方法やどういった歯ブラシがその患者様にあっているか?のレクチャーも行っています。正しいブラッシング方法を知ることで、日々行う歯みがきがより効果的になります。ご自身の大切な歯を守り、長期的に快適な食生活をおくるためにも、ブラッシングはとても重要です。
 

 

 

参考文献

1) Relationship between the plaque removal efficacy of a manual toothbrush and brushing force. Van der Weijden G. A., et al. J. Clin. Periodontol. 1998.

2) Development and laboratory evaluation of a new toothbrush with a novel brush head design. Beals D., et al. Am. J. Dent. 2000.

3) Tooth brushing for oral prophylaxis. Hayasaki H., et al. Jpn. Dent. Sci. Rev. 2014.

虫歯になりにくい食べ物.JPG

今現在テレワークといった在宅勤務に伴い外出の自粛をしている方も多いかと思います。

そういった方の中には歯医者さんに歯科検診に行きたかったり、定期的なクリーニングに行きたいものの、受診を延期している患者さんも多くいると思います。

千種区でも最近は外を歩く人が目に見えて減っており、阿部歯科でも痛みや生活に大きな支障をきたさない緊急性の低い処置などに関しては3密を避けるために処置の延期や治療時間帯の調整などを行っております。

口の中の除菌、掃除や検診といった歯医者さんに行かないとできない事も多くありますが、その一方で在宅勤務に伴う外出自粛中でも自分でもできる虫歯や歯周病の管理もあります。

歯医者さんに行けない時にする自分でできる口腔内管理

歯医者さんに行けない期間が増えると虫歯や歯周病が悪化するのではないかと不安になっている患者さんもいると思います。

しかし、歯磨きの注意といったものの他にも食生活のコントロールである程度は虫歯や歯周病の対応も自分でコントロールしていく事もいくらかは可能です。

食生活においては在宅勤務中に虫歯や歯周病を悪化させないためには

間食をしないようにして朝昼晩の3食以外は取らない

加工食品は少な目にして調理の程度が少ない品目を増やす

・糖分のある食べ物を食べる場合には加工食品は避けて果物などにする

糖分の摂取量を減らすためにキシリトールなど虫歯になりにくい代替甘味料を利用する

といった工夫が効果的です。

間食をしないようにして朝昼晩の3食以外は取らない

虫歯や歯周病は細菌感染によって引き起こされた体への影響と言い換える事ができます。

虫歯はう蝕原因菌となる様々な細菌による歯の硬組織の脱灰(溶ける事)

歯周病は歯周病原因菌となる様々な細菌による体の免疫反応(炎症)

と言えます。

両方に共通しているのは細菌の付着とそれに伴う細菌の巣であるプラーク(バイオフィルム)の成熟です。

つまり、この細菌の巣であるプラークの成熟を遅らせる事が虫歯や歯周病の管理の一つとなるのです。

細菌は栄養源を口から摂取された様々な栄養素から取り入れ、それによって分裂、代謝といったサイクルを繰り返していきます。

間食をするという事は常に栄養源が細菌に供給されている事を意味するので、常に細菌の巣であるプラークが成熟を続けていく事となります。

そのため、食事のタイミングを決めて食事の回数が多くなりすぎないようにする事が口腔内のプラーク成熟のコントロールへと繋がる事になるのです。

加工食品は少な目にして調理の程度が少ない品目を増やす

食べ物には、未調理、素材の形や触感が残されて調理されているもの、高度に調理加工されているものといった食べ物があります。

その中でも未加工に近ければ近いほど虫歯になりにくいという特徴があります。

未調理の物を多く取ると虫歯になりにくい理由は、野菜で言えば、繊維質のものが口の中の汚れを取り除きやすくなるからといった事が言われる事がありますが、その理由の多くは繊維質のものによる洗浄効果よりもむしろ咀嚼の回数(噛む回数)と唾液の分泌にあると言われています。

唾液には口腔内に蓄積した食べ物の残り(食物残渣)を洗い流したり緩衝能(口腔内のpHを中性に近づける能力)があります。

そのため、未調理の物を多く採ると咀嚼の回数が必然的に増えて、それに伴う唾液の分泌によってそれらの洗浄効果や緩衝能が働き虫歯になりにくいという事が言えます。

洗浄効果によっては食物残渣が洗い流される事で歯周病にもなりにくくなるため、虫歯や歯周病両方にある程度の効果が期待できる事になります。

しかし、未調理だと熱が通っていないという心配が今の時期の問題としてあるため、熱を通した食材を使った上で加工しすぎないようにしたり、調理済みの加工食品を減らすといった取り組みが効果的かもしれません。

(関連記事:虫歯になりにくい食べ物は?

糖分のある食べ物を食べる場合には加工食品は避けて果物などにする

甘い物を食べたい時に選ぶ選択肢として様々な食べものがあがってくると思います。

ケーキやアイス、果物といった様々な食べものがありますが、その中でも加工食品と糖分の組み合わせは甘い食べ物の中でも特に虫歯になりやすいという特徴があります。

一方で果物の摂取は1日の摂取量が過剰に多くなりすぎない限り(1日8回など)虫歯への影響は少ない事が分かっています。

そのため、同じ甘い物を取るにしても加工されているケーキやアイスよりも果物を摂取する方が在宅中にできる口腔内管理とは優れている事になります。

外側に触れるもので生で食べるのが心配という場合はリンゴやバナナといった外側をむいて中身を食べられる果物を選択するといいかもしれません。

注意が必要なのは缶詰のようなシロップにつけられて加熱調理が加えられているものは、果物であるものの加工食品に準じる部分があるため、果物の摂取はあくまでも生鮮食品を選択するという事が大切となります。

果物以外の甘い食べ物の選択肢の場合でも加工具合が少なければ少ないほど虫歯への影響が少なくなるため、どれくらい加工がされているかを見ながら選んでいくといいかもしれません。

糖分の摂取量を減らすためにキシリトールなど虫歯になりにくい代替甘味料を利用する

虫歯になる原因は言ってみれば糖分の摂取となるのですが、糖分は減らせば減らすほど効果があるという事が分かっています。

甘い物を減らせば虫歯になりにくいのは当然と思うかもしれませんが、数多くある虫歯対策の中でも自分でできる虫歯予防としては実はこの単純に聞こえる糖分の制限が実は最も効果的と言われています。

実際に砂糖の摂取量を1日10g以下、5g以下と減らしていくと明らかに虫歯予防への効果が出る事が分かっており、糖分を減らすという自分でもできる食生活のコントロールが非常に大きな効果を上げる事ができます。

しかし、1日の糖分摂取量を全く0にする事は不可能である事に加えて、炭水化物は咀嚼中に口腔内のアミラーゼ酵素によって糖分へと変化するため、糖分を減らすという食生活の変化だけで虫歯を0にするという事はできないのが実情です。

虫歯自体を0にする事はできなくても虫歯予防として糖分のコントロールは非常に優れているため、砂糖の代わりにキシリトールといった虫歯予防に効果的な代替甘味料を使ったりする事で全体の糖分の摂取量をコントロールしていく事もやりやすくなると思います。

(関連記事:1日にどれだけ甘い物を食べると虫歯になるのか

(関連記事:キシリトールガムの効果は?

 

外出自粛で歯医者さんに行けない期間が長くなって、口腔内の状態が不安になっている患者さんもこれらのような食生活のちょっとしたコントロールで様々に口腔内衛生環境の改善を自分でもある程度できるのです。

食生活を変える事はなかなかむつかしいですが、どのような理由で食生活の変化が口腔内環境に影響するかを知ると自分でも様々な食べ物の調理や選択などで工夫がしやすくなると思います。

執筆:阿部歯科 副院長 阿部利晴

略歴

1980年 名古屋市千種区に生まれる
2005年 愛知学院大学歯学部 卒業
2005年 豊川市民病院 歯科口腔外科 臨床研修医
2006年 愛知学院大学歯学部 顎顔面外科学講座に入局
2010年 愛知学院大学大学院 歯学研究科を修了 総代
2010年 愛知学院大学歯学部 顎顔面外科学講座 非常勤助教
2010年 名古屋大学医学部附属病院 麻酔科 医員
2011年 アメリカ ペンシルベニア大学歯学部勤務
2014年 アメリカ ペンシルベニア大学歯学部 講師
2014年 アメリカ 国立衛生研究所 国立歯科・頭蓋顔面研究所 非常勤連邦職員
2015年 阿部歯科 副院長に就任

歯の萌出.jpg

口の中では乳歯が生えて(萌出)、その後永久歯へと生え変わっていきます。

歯が生え変わるという事はごく当然の事として受け取っていますが、中には永久歯が生えてこないといった方もいます。

池下の歯医者の阿部歯科でも多くの患者さんを見ていると、元々乳歯に続く永久歯が欠如している先天性欠如という状態の他に、後続の永久歯があるにもかかわらずうまく生えてこない患者さんが受診される事があります。

歯が生えてくる事ができる場合と歯が生えてくる事ができない場合で何が違い、どうして歯は口の中へと生えてくる事ができるのでしょうか

歯が口の中へと生える事ができる理由

歯が骨の中で作られる段階で歯嚢という袋のような組織が歯のエナメル質や象牙質といった組織を形成していきます。

この歯嚢が歯を作る段階において歯の外側のエナメル質を作ると同時に、歯の埋まっている顎骨の生える方向側の骨が破骨細胞によって溶かされていきます。

これによって歯が生える方向への道が作られ、さらに歯の歯根側には歯の根である歯根が形成されはじめると同時に骨芽細胞による骨の添加がすすんでいきます。

これによって

・歯の生える方向の骨が溶かされる

・歯が口腔側に進む

・進んだ後は骨が添加されていく

といったサイクルを繰り返して歯の組織が作られると同時に生えていく事ができるのです。

この歯嚢という組織は歯の組織を作るだけではなく、歯が生えるためにも必須な組織となっています。

しかし歯嚢が存在して歯が作られているにも関わらず歯が生えてくる事ができない方も実際には存在しています。

(関連記事:なぜ歯は乳歯から永久歯に生え変わる必要があるのか

実は歯根はなくても歯が生える事ができる

歯が生えるメカニズムにはいくつか説があり、中には歯の歯根ができる過程で歯根が歯を押し出して口の中に生えてくる(萌出)するといった説もありますが、実際の萌出において歯根がなくても歯は萌出する事ができるという事が分かっています。

現在は、破骨細胞による萌出側の骨の吸収とそれに伴う反対側の骨添加と歯の組織増生によってそれらが共同して歯の萌出を行っていると考えられています。

歯嚢には間葉系前駆細胞(mesenchymal progenitor cell)という細胞が存在しており、この細胞からの副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)という物質が萌出される事が分かっており、これによって歯の組織の一部が形成されると共に歯の萌出を行っていると考えられています。

実際に副甲状腺ホルモン関連蛋白が出されない状態では歯が生えてくる事ができずに歯が骨の中に埋まった状態になる事が分かっています。

一方でこの蛋白に対するレセプターのPTH/PTHrP(PPR)という物質が欠損している場合にも歯が生えてくる事ができないとされています。

この歯を作る組織である歯嚢の細胞と副甲状腺ホルモン関連蛋白とレセプターであるPPRが協調して骨の中を歯が掘り進むように生えてくる事ができると考えられています。

どうして歯が生えてくる事ができないのか

一方で歯が骨の中で作られているのに歯が生えてくる事ができないといった方もいます。

レントゲンを撮影すると骨の中に奇麗な永久歯があり、特に何かに引っかかっているわけではないのに歯が生えてこないといった状態に出くわす事があります。

歯嚢からの副甲状腺ホルモン関連蛋白の分泌異常によって破骨細胞が骨を溶かす事がなく歯が骨の中に埋まっているといった状態の他に、レセプターであるPPRの異常によっても歯が生えてくる事ができなくなる事もあります。

PPRに異常がある場合は歯が生えるための道筋はできるものの歯根を形成する過程で歯と骨を分離しているセメント質、歯根膜、歯槽骨の間に問題が出ると報告されています。

PPRの発現に遺伝子異常がある場合は歯の萌出が阻害されると報告されており、歯の形成と萌出の段階においてセメント質形成に問題が出る事で歯の組織の一部であるセメント質が骨と癒着する事で萌出する道筋ができているにも関わらず歯が生えてくる事ができないとされるものです。

セメント質と歯根膜と歯槽骨の関係は、歯根膜の存在によって歯のセメント質と骨が癒着しないようにされておりこの歯根膜が失われる事で骨性癒着(アンキローシス)といった問題を引き起こす事があります。

この骨性癒着は歯を強く打ったり再植をした際に認められる事がありますが、歯の萌出段階におけるセメント質と骨との癒着もこの状態と似た部分があるように思われます。

実際に、子供の時に転んだりして乳歯を強く打つ事で後続の永久歯がうまく生えてこないといった事が起きる事がありますが、これが乳歯を打つ事で後続永久歯の歯嚢にダメージを与え副甲状腺ホルモン関連蛋白の分泌異常やレセプターであるPPRの問題へと繋がると考えると

永久歯が骨に包まれて出てこない

永久歯が奇麗に作られているのにその場所から動かない

といった事が

破骨細胞による歯が生える方向への道筋を作る事ための骨の吸収に問題がおきている

歯の形成段階におけるセメント質と骨との癒着によって歯が動かなくなっている

といった永久歯ができる前に起きたトラブルがその後の永久歯が生えてこないといったトラブルのへと繋がる説明ができます。

歯が生えるメカニズムは単純ではありませんが、歯嚢の間葉系前駆細胞からの蛋白分泌とレセプターとのシグナリングの関係といった様々な要素が複雑に絡み合って歯がうまく口の中に生えてくるという事が分かるにつれて、どのような処置をしていけば歯の萌出障害に対応できるのかといった事が分かるようになってきています。

(関連記事:子供の歯の生え変わりが遅い場合

 

参考文献:

1) Parathyroid hormone-related protein is required for tooth eruption. Philbrick W. M., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 1998.

2) Identification of Six Novel PTH1R Mutations in Families with a History of Primary Failure of Tooth Eruption. Risom L., et al. PLoS One. 2013.

3) Parathyroid hormone receptor signalling in osterix-expressing mesenchymal progenitors is essential for tooth root formation. Ono W., et al. Nat. Commun. 2016.

4) Autocrine regulation of mesenchymal progenitor cell fates orchestrates tooth eruption. Takahashi A., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2019.

Hallテクニック.jpg

千種区の頼れる歯科医院 阿部歯科では、予防歯科に力を入れており、虫歯や歯周病の進行抑制など最新の歯科医学的知識を取り入れています。

今回は虫歯に関する内容をお伝えします。

 

虫歯の治療においては感染源となっている虫歯の部位(う蝕)を除去して、その部位を修復するという治療が一般的となっています。

しかし、その修復の際に虫歯を取らずに穴の封鎖だけを行うとどうなるのでしょうか?

虫歯を取らない歯科治療も存在する

日本では一般的には行われていませんが、Hallテクニックという虫歯を取らずに封鎖を行う治療法があります。

この治療法は乳歯を対象としており、虫歯になった乳歯に対して歯を削らず虫歯の処理も行わずに既成の金属冠を歯の頭である歯冠にセメントで合着するという方法です。

主に治療が困難で歯を削る事が出来ない小児に対して行われる場合があり、歯が生え変わるという事を前提とした乳臼歯に対する治療法です。

元々は1980年代にDr. Norna Hallの乳臼歯の虫歯を封鎖して進行を止めるという手法から考え出されました。
 

この方法では、局所麻酔も虫歯の除去も形の形成も行わず、金属の既成冠をセメントで合着するという一見すれば蓋をしてしまう治療法となっています。元々は古い歴史のあるHallテクニックですが、治療成績に関する論文はここ10年くらいでしばしば見る機会が増えたように感じます。これは合着材の発達に伴う辺縁閉鎖性の向上に伴って治療成績が上がりだしたからかもしれません。

この治療法では、虫歯の感染巣に存在する細菌群に対して口腔内から環境的に隔絶させて栄養源を絶ち、飢餓状態にする事でその進行を止めようという方法で、完全に口腔内の環境から分断されているという事が必須条件になります。

歯髄炎を起こしていない虫歯に対する治療成績をおおよそ2ケ月から60ケ月の経過で追うと、歯髄炎や歯髄壊死、化膿といった致命的な状態に陥った歯が3%、単純性の歯髄炎や冠の脱落、二次う蝕といった再治療可能な状態が5%と、治療成績が比較的良いように思えます。
 

ただし、この状態はあくまでも虫歯の進行の停止を意味しており、治癒がされたわけではないのでひとたび辺縁漏洩が起きると再び虫歯が活性化しはじめるという事になります。

そのため、あくまでも生え変わる事を前提とした治療困難な子供の乳歯への一時的な処置として治療法が考え出された背景があります。

あくまでも虫歯の除去ではなく、虫歯の進行抑制を目的とした治療法であるという点に注意しないといけません。

(関連記事:虫歯や歯周病の始まりとなるプラークの蓄積
 

大人の歯に対し、虫歯を取らずに処置をしてもいいのか?

大人の虫歯に対してシーラントをして虫歯の抑制をできるのかという研究もされています。

虫歯は酸によって歯の無機質が脱灰される状態で、無機質がほとんどのエナメル質では空洞が開き、象牙質に達すると柔らかいコラーゲン線維などを残して軟化した象牙質として虫歯が形成されます。

初期の脱灰を除いて、虫歯によって脱灰された無機質は再石灰化する事はないので無機質が脱灰されコラーゲン線維などが残された軟化象牙質はその状態が石灰化され戻る事はなく、軟化されたままなので通常は虫歯の除去の対象となります。

永久歯の臼歯咬合面う蝕に対して虫歯の除去と治療ではなく、進行抑制という点から虫歯を残してレジンによる封鎖を行った場合25ケ月から38ケ月ほどで経過を追うと、

虫歯が退行したものが2%、

変化が特に見られないものが88%、

虫歯が進行したものが10%、

と進行抑制という点から見ると成績が良いように見えます。
 

ただし、この状態もあくまでもレジンなどによる辺縁封鎖が完全にされており、虫歯の病巣が口腔内環境から完全に隔絶されている事が前提となるのでレジンや修復物の劣化によって栄養源が病巣に供給されれば再び虫歯が進行しだす事を意味します。

一方で虫歯の除去を行い修復をした場合は完全に虫歯の進行は停止するため、一時的な進行抑制のみを目的としない場合は、やはり病巣である虫歯の除去と修復が基本となります。

そのため、今現在虫歯を取れない何らかの理由があり将来的に虫歯の除去と修復を予定するといった場合に用いられるような一時的な処置という状態にとどまります。

虫歯予防として行われるシーラントにおいても1年でおおよそ20%が、5年で半分が脱落すると言われているため、辺縁封鎖性の持続がいずれにせよ課題となります。

 

(関連記事:子供の虫歯予防のシーラントに効果はあるの?

(関連記事:阿部歯科での根拠に基づく歯科医療

 

参考文献:

1) The Hall Technique for managing carious primary molars. Innes N., et al. Dent. Update. 2009.

2) Sealing caries in primary molars: randomized control trial, 5-year results. Innes N. P., et al. J. Dent. Res. 2011.

3) Sealing occlusal caries lesions in adults referred for restorative treatment: 2-3 years of follow-up. Bakhshandeh A., et al. Clin. Oral Investig. 2012.

4) The success of stainless steel crowns placed with the Hall technique: a retrospective study. Ludwig K.H. et al. J. Am. Dent. Assoc. 2014.

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