千種区池下の歯医者 阿部歯科 副院長の阿部利晴によるブログで、アメリカの歯科医療についての事情等を載せています。

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千種区の歯科医院 阿部歯科からのお役立ち情報の最近のブログ記事

便宜抜髄.jpg

歯の治療をして形を修復する際に歯の冠をまるごと被せる補綴処置をする事があります。

歯の神経を抜いた後やブリッジの支えとなる支台歯などに行われる処置ですが、ブリッジの支台歯に冠を被せる場合に歯の神経を残したまま形成をして被せる事があります。一方で便宜抜髄と呼ばれる方法で歯の神経を抜いてから形成をする事もあります。

便宜抜髄と呼ばれる方法であらかじめ痛みが出ないように歯の神経を抜いて(抜髄)してから形成をする場合と歯の神経を抜かずに形成をする場合と何が違うのでしょうか?

歯の神経を抜かずに(便宜抜髄をせずに)治療する事で起こる事

歯の周りをグルリと一周するように削ってクラウンを被せる処置をする場合、歯の神経を抜いて治療する場合と抜かないで治療する場合があります。

歯をグルリと一周して削る際に歯が生きていると歯に強い痛みを感じる可能性が残ります。

この際に、被せ物を被せて痛みが消える場合はいいのですが、被せた後も痛みを引きずってしまう事もあります。このような処置上での痛みの発生と予後のリスクを抑えるという意味であらかじめ神経を処理する便宜抜髄という治療がされる事があります。

削る量にもよりますが神経が生きたままだとクラウンを被せるために歯を削る量も制限されるため、その結果、被せ物は薄くなり被せ物が取れやすくなったり壊れやすくなったりといった問題に繋がっていく可能性もあります。

良かれと思って神経を残してクラウン形成をした後に眠れないほどの激しい痛みが出てきたといった事態が起きる事もあるため、神経を残して形成するのか、神経を処理して形成するのかは注意して決定する事が大切となります。

(関連記事:歯の神経を取る時って痛いの?

歯の神経を残した後は大丈夫?

歯の神経を抜かずにクラウン形成をした場合に痛みが出る事なく治療を終える事もあります。

しかしその場では痛みは出なくても、長期経過で見た場合に治療をした際の歯髄へのダメージが後々に歯髄壊死と感染を起こして痛みが出る事で歯の神経の治療をせざるを得なくなったといったケースはめずらしくありません。

では、実際に歯の神経を残してクラウン形成をした場合にはその後に歯髄壊死が起きるリスクがどれくらいあるのでしょうか。

歯の神経には神経の他に血管組織や結合組織といった組織が含まれており、歯をクラウン形成した際のダメージで虚血状態などになりその後回復せずに歯髄がそのまま死んでしまう歯髄壊死へと移行する事があります。

歯髄壊死では強い炎症が起きなければ痛みは引き起こされませんが、壊死した状態では血流はすでになくなっており免疫細胞が壊死した歯髄に到達する事もありません。

その結果何らかのきっかけで壊死した歯髄に感染が起きるとその部位が感染巣となり炎症を引き起こして痛みへと変わっていく事となります。

クラウン形成の際に歯の神経を抜かずに治療を行うと治療中に痛みが出なくても、10年以内におおよそ15%が、15年以内の経過でおおよそ20%が歯髄壊死に陥ると言われています。

この数字は健康な歯が自然と歯髄壊死に陥る可能性のおおよそ20倍以上にもなります。

この数値は決して低いものではなく、歯髄壊死は結果的に治療が完了した歯の必然的な再治療の必要性を意味する事となります。

そのため、クラウン形成をする際には形成量、その後のリスク、治療上の必要性といった様々な要素を考えた上で歯の神経を抜くのか抜かないのかを決定する事が大切になります。

歯の神経を抜くと歯はもろくなる?

歯の神経を抜くと歯がもろくなるといったイメージを持たれるかもしれません。

実際の報告を確認すると歯の神経を抜くと歯がもろくなるという報告から変わらないといった報告まで両方が存在しています。

実際の臨床現場では経験的に歯の神経が抜いてある歯がもろくなっているといった印象を受ける事になりますが、歯の神経が抜いてある歯はすでに虫歯などで歯の構造自体が大きなダメージを受けているという点が重要となります。

つまり、単純に歯の神経があるなしでもろくなっているといった印象を受けているのではなく、それに加えて歯の構造に大きなダメージを受けていないか受けているかの要素も含まれている事となります。

かつては歯の神経があるかないかが歯のもろさに影響しているのではないかと考えられていましたが、最近ではその考えは変わっています。

歯がもろくなるかどうかといった要素は最近では歯の構造の喪失自体にその原因があると言われています。

つまり、歯の神経のあるなしではなく歯の構造が虫歯などで失われている事そのものが歯のもろさを引き起こす原因になるという考え方です。

歯は嚙み合わせた時に歯の中心から外側に押し出すようなクサビを打ち込むような力がかかる部位があるためその外側にかかる力によって歯が割れたりするといった考え方です。

この力に歯が耐えうるためには歯の周囲の硬組織が十分保存されており構造的に保たれている事、具体的に言えば辺縁隆線を含めた周囲の組織が十分に残されている事が関連します。

一方で虫歯で歯の構造が失われていたり被せ物のクラウン形成をする場合はどうでしょうか?

歯の中心から外側に向かう力に耐えるための十分な構造を有していない場合は外側から内側に押さえつけるための構造を確保する必要があります。

帯環効果(フェルール効果)と呼ばれるもので歯の周囲70%を歯肉から厚み1mm以上、高さ2mm以上で保存し、その外側から被せ物を被せる事で中心から外側に向かう力を抑えるという効果です。

このフェルールがあるかないかで治療成績は大きく変わるためこのフェルールを確保できるかどうかでも歯のもろさといった状態に大きな影響がおよぼされます。

そのため、ただ単に歯の神経を抜くか抜かないかが歯のもろさにつながっているのではなく、歯の構造の状態自体にその原因があると現在では考えられるように変わってきているのです。

(関連記事:専門の歯科医が解説:歯の構造について

 

千種区の阿部歯科では歯医者さんとしての経験だけではなく様々な科学的根拠を基にして治療を行っていくために、新しい歯科治療の方法やその妥当性を知る事でより良い治療ができるように努めています。

参考文献:

1) Crowns and extra-coronal restorations: endodontic considerations: the pulp, the root-treated tooth and the crown. Whitworth J. M., et al. Br. Dent. J. 2002.

2) Fate of vital pulps beneath a metal-ceramic crown or a bridge retainer. Cheung G. S., et al. Int. Endod. J. 2005.

3) Restoration of the root canal treated tooth. Eliyas S., et la. Br. Dent. J. 2015.

歯ブラシの形.jpg

千種区の頼れる歯医者 阿部歯科の副院長です。今日はよく患者さんからご質問いただく歯ブラシについてのお話です。

歯を磨く時にどのような形の歯ブラシを使えばいいのか悩む患者さんは多くいます。

患者さんにあったそれぞれの歯ブラシの硬さや形というのは様々にありますが、歯ブラシの硬さや毛の細さ、形といった要素には様々な歯磨きへの影響が色々とあります。

歯ブラシの様々な種類

現在日本には歯ブラシのモデルがおおよそ450種類以上もあると言われています。色々なメーカーから様々な形の毛先の歯ブラシが出ており、

・昔からある平らな、Flat

・毛先がギザギザになっている、Rippled

・複雑に入り組んだ特殊な形をした、Angled

など、色々な形態の歯ブラシが出ています。

これらの歯ブラシの形でどのような形がいいか悩まれる方も多くいるかもしれませんが、これらの形は歯の表面を均一に磨くのを目的としたり、歯と歯の間を効率的に磨けるようにしたりといったそれぞれの目的別に形が作られています。

平らなFlatタイプの歯ブラシでは歯と歯の間に毛先を入れるのが難しくなる事があるため、ギザギザとなっているRippledタイプの歯ブラシを選ぶようにするといったそれぞれの患者さんの歯磨きの癖や歯並びによって選んでいく必要があります。

千種区にある歯医者の阿部歯科のロゴは歯ブラシの形をしていますが、実はRippledタイプの歯ブラシの形を基にデザインしています。

歯ブラシの毛先の太さや硬さはどれくらい影響するか

歯ブラシの毛先の太さや硬さによる歯磨きの効率というのも実は色々と調べられています。

例えば、毛の太さが0.2mmと0.18mmのものを比べると0.2mmの太さの毛先の方が歯と歯肉の間の汚れをより効率的に落とす事ができるとされます。

さらに毛先の太さを0.13mmから0.28mmの間で比較するとより毛先が太い方がより、歯の表面や歯と歯の間の汚れを落とす事ができるとも言われます。

毛先の硬さに関しては柔らかい毛先よりも普通の硬さの毛先、さらには硬い毛先の方が汚れを落とす効率は上がるものの、知覚過敏といった症状がある場合には硬い毛先だと間違った歯磨きの仕方をすると知覚過敏を増悪してしまう可能性があるという場合もあります。

(関連記事:歯磨きと歯ブラシ

歯磨きに影響する歯ブラシの要素

歯ブラシの毛先の形や太さや硬さは歯磨きの際の汚れを落とす効率などに影響するものの歯ブラシの毛先の付いているプラスチックのヘッド部分の形はそこまで大きな影響を及ぼさないとも言われます。

しかし、歯ブラシのみの歯磨きによって落ちる口の中の汚れはおおよそ40%から50%ほどと言われており、歯ブラシのみでなくデンタルフロスやマウスウォッシュなども併用して歯磨きをする事が必要になる場合もあります。

推奨される歯ブラシによる歯磨きは1日に少なくとも2回以上、そして1回につき2から3分やさしい力で歯を磨く事がすすめられています。

そしてその際には上下左右それぞれのブロックを30秒から45秒かけて磨くといいとされています。

(関連記事:洗口液(マウスウォッシュ)は1日に何回使えばいいのか?

(関連記事:正しい歯磨きの回数や時間は?
 

千種区の歯医者 阿部歯科ではブラッシング指導も行っています!

当院では正しいブラッシングに関する方法やどういった歯ブラシがその患者様にあっているか?のレクチャーも行っています。正しいブラッシング方法を知ることで、日々行う歯みがきがより効果的になります。ご自身の大切な歯を守り、長期的に快適な食生活をおくるためにも、ブラッシングはとても重要です。
 

 

 

参考文献

1) Relationship between the plaque removal efficacy of a manual toothbrush and brushing force. Van der Weijden G. A., et al. J. Clin. Periodontol. 1998.

2) Development and laboratory evaluation of a new toothbrush with a novel brush head design. Beals D., et al. Am. J. Dent. 2000.

3) Tooth brushing for oral prophylaxis. Hayasaki H., et al. Jpn. Dent. Sci. Rev. 2014.

虫歯になりにくい食べ物.JPG

今現在テレワークといった在宅勤務に伴い外出の自粛をしている方も多いかと思います。

そういった方の中には歯医者さんに歯科検診に行きたかったり、定期的なクリーニングに行きたいものの、受診を延期している患者さんも多くいると思います。

千種区でも最近は外を歩く人が目に見えて減っており、阿部歯科でも痛みや生活に大きな支障をきたさない緊急性の低い処置などに関しては3密を避けるために処置の延期や治療時間帯の調整などを行っております。

口の中の除菌、掃除や検診といった歯医者さんに行かないとできない事も多くありますが、その一方で在宅勤務に伴う外出自粛中でも自分でもできる虫歯や歯周病の管理もあります。

歯医者さんに行けない時にする自分でできる口腔内管理

歯医者さんに行けない期間が増えると虫歯や歯周病が悪化するのではないかと不安になっている患者さんもいると思います。

しかし、歯磨きの注意といったものの他にも食生活のコントロールである程度は虫歯や歯周病の対応も自分でコントロールしていく事もいくらかは可能です。

食生活においては在宅勤務中に虫歯や歯周病を悪化させないためには

間食をしないようにして朝昼晩の3食以外は取らない

加工食品は少な目にして調理の程度が少ない品目を増やす

・糖分のある食べ物を食べる場合には加工食品は避けて果物などにする

糖分の摂取量を減らすためにキシリトールなど虫歯になりにくい代替甘味料を利用する

といった工夫が効果的です。

間食をしないようにして朝昼晩の3食以外は取らない

虫歯や歯周病は細菌感染によって引き起こされた体への影響と言い換える事ができます。

虫歯はう蝕原因菌となる様々な細菌による歯の硬組織の脱灰(溶ける事)

歯周病は歯周病原因菌となる様々な細菌による体の免疫反応(炎症)

と言えます。

両方に共通しているのは細菌の付着とそれに伴う細菌の巣であるプラーク(バイオフィルム)の成熟です。

つまり、この細菌の巣であるプラークの成熟を遅らせる事が虫歯や歯周病の管理の一つとなるのです。

細菌は栄養源を口から摂取された様々な栄養素から取り入れ、それによって分裂、代謝といったサイクルを繰り返していきます。

間食をするという事は常に栄養源が細菌に供給されている事を意味するので、常に細菌の巣であるプラークが成熟を続けていく事となります。

そのため、食事のタイミングを決めて食事の回数が多くなりすぎないようにする事が口腔内のプラーク成熟のコントロールへと繋がる事になるのです。

加工食品は少な目にして調理の程度が少ない品目を増やす

食べ物には、未調理、素材の形や触感が残されて調理されているもの、高度に調理加工されているものといった食べ物があります。

その中でも未加工に近ければ近いほど虫歯になりにくいという特徴があります。

未調理の物を多く取ると虫歯になりにくい理由は、野菜で言えば、繊維質のものが口の中の汚れを取り除きやすくなるからといった事が言われる事がありますが、その理由の多くは繊維質のものによる洗浄効果よりもむしろ咀嚼の回数(噛む回数)と唾液の分泌にあると言われています。

唾液には口腔内に蓄積した食べ物の残り(食物残渣)を洗い流したり緩衝能(口腔内のpHを中性に近づける能力)があります。

そのため、未調理の物を多く採ると咀嚼の回数が必然的に増えて、それに伴う唾液の分泌によってそれらの洗浄効果や緩衝能が働き虫歯になりにくいという事が言えます。

洗浄効果によっては食物残渣が洗い流される事で歯周病にもなりにくくなるため、虫歯や歯周病両方にある程度の効果が期待できる事になります。

しかし、未調理だと熱が通っていないという心配が今の時期の問題としてあるため、熱を通した食材を使った上で加工しすぎないようにしたり、調理済みの加工食品を減らすといった取り組みが効果的かもしれません。

(関連記事:虫歯になりにくい食べ物は?

糖分のある食べ物を食べる場合には加工食品は避けて果物などにする

甘い物を食べたい時に選ぶ選択肢として様々な食べものがあがってくると思います。

ケーキやアイス、果物といった様々な食べものがありますが、その中でも加工食品と糖分の組み合わせは甘い食べ物の中でも特に虫歯になりやすいという特徴があります。

一方で果物の摂取は1日の摂取量が過剰に多くなりすぎない限り(1日8回など)虫歯への影響は少ない事が分かっています。

そのため、同じ甘い物を取るにしても加工されているケーキやアイスよりも果物を摂取する方が在宅中にできる口腔内管理とは優れている事になります。

外側に触れるもので生で食べるのが心配という場合はリンゴやバナナといった外側をむいて中身を食べられる果物を選択するといいかもしれません。

注意が必要なのは缶詰のようなシロップにつけられて加熱調理が加えられているものは、果物であるものの加工食品に準じる部分があるため、果物の摂取はあくまでも生鮮食品を選択するという事が大切となります。

果物以外の甘い食べ物の選択肢の場合でも加工具合が少なければ少ないほど虫歯への影響が少なくなるため、どれくらい加工がされているかを見ながら選んでいくといいかもしれません。

糖分の摂取量を減らすためにキシリトールなど虫歯になりにくい代替甘味料を利用する

虫歯になる原因は言ってみれば糖分の摂取となるのですが、糖分は減らせば減らすほど効果があるという事が分かっています。

甘い物を減らせば虫歯になりにくいのは当然と思うかもしれませんが、数多くある虫歯対策の中でも自分でできる虫歯予防としては実はこの単純に聞こえる糖分の制限が実は最も効果的と言われています。

実際に砂糖の摂取量を1日10g以下、5g以下と減らしていくと明らかに虫歯予防への効果が出る事が分かっており、糖分を減らすという自分でもできる食生活のコントロールが非常に大きな効果を上げる事ができます。

しかし、1日の糖分摂取量を全く0にする事は不可能である事に加えて、炭水化物は咀嚼中に口腔内のアミラーゼ酵素によって糖分へと変化するため、糖分を減らすという食生活の変化だけで虫歯を0にするという事はできないのが実情です。

虫歯自体を0にする事はできなくても虫歯予防として糖分のコントロールは非常に優れているため、砂糖の代わりにキシリトールといった虫歯予防に効果的な代替甘味料を使ったりする事で全体の糖分の摂取量をコントロールしていく事もやりやすくなると思います。

(関連記事:1日にどれだけ甘い物を食べると虫歯になるのか

(関連記事:キシリトールガムの効果は?

 

外出自粛で歯医者さんに行けない期間が長くなって、口腔内の状態が不安になっている患者さんもこれらのような食生活のちょっとしたコントロールで様々に口腔内衛生環境の改善を自分でもある程度できるのです。

食生活を変える事はなかなかむつかしいですが、どのような理由で食生活の変化が口腔内環境に影響するかを知ると自分でも様々な食べ物の調理や選択などで工夫がしやすくなると思います。

執筆:阿部歯科 副院長 阿部利晴

略歴

1980年 名古屋市千種区に生まれる
2005年 愛知学院大学歯学部 卒業
2005年 豊川市民病院 歯科口腔外科 臨床研修医
2006年 愛知学院大学歯学部 顎顔面外科学講座に入局
2010年 愛知学院大学大学院 歯学研究科を修了 総代
2010年 愛知学院大学歯学部 顎顔面外科学講座 非常勤助教
2010年 名古屋大学医学部附属病院 麻酔科 医員
2011年 アメリカ ペンシルベニア大学歯学部勤務
2014年 アメリカ ペンシルベニア大学歯学部 講師
2014年 アメリカ 国立衛生研究所 国立歯科・頭蓋顔面研究所 非常勤連邦職員
2015年 阿部歯科 副院長に就任

Hallテクニック.jpg

千種区の頼れる歯科医院 阿部歯科では、予防歯科に力を入れており、虫歯や歯周病の進行抑制など最新の歯科医学的知識を取り入れています。

今回は虫歯に関する内容をお伝えします。

 

虫歯の治療においては感染源となっている虫歯の部位(う蝕)を除去して、その部位を修復するという治療が一般的となっています。

しかし、その修復の際に虫歯を取らずに穴の封鎖だけを行うとどうなるのでしょうか?

虫歯を取らない歯科治療も存在する

日本では一般的には行われていませんが、Hallテクニックという虫歯を取らずに封鎖を行う治療法があります。

この治療法は乳歯を対象としており、虫歯になった乳歯に対して歯を削らず虫歯の処理も行わずに既成の金属冠を歯の頭である歯冠にセメントで合着するという方法です。

主に治療が困難で歯を削る事が出来ない小児に対して行われる場合があり、歯が生え変わるという事を前提とした乳臼歯に対する治療法です。

元々は1980年代にDr. Norna Hallの乳臼歯の虫歯を封鎖して進行を止めるという手法から考え出されました。
 

この方法では、局所麻酔も虫歯の除去も形の形成も行わず、金属の既成冠をセメントで合着するという一見すれば蓋をしてしまう治療法となっています。元々は古い歴史のあるHallテクニックですが、治療成績に関する論文はここ10年くらいでしばしば見る機会が増えたように感じます。これは合着材の発達に伴う辺縁閉鎖性の向上に伴って治療成績が上がりだしたからかもしれません。

この治療法では、虫歯の感染巣に存在する細菌群に対して口腔内から環境的に隔絶させて栄養源を絶ち、飢餓状態にする事でその進行を止めようという方法で、完全に口腔内の環境から分断されているという事が必須条件になります。

歯髄炎を起こしていない虫歯に対する治療成績をおおよそ2ケ月から60ケ月の経過で追うと、歯髄炎や歯髄壊死、化膿といった致命的な状態に陥った歯が3%、単純性の歯髄炎や冠の脱落、二次う蝕といった再治療可能な状態が5%と、治療成績が比較的良いように思えます。
 

ただし、この状態はあくまでも虫歯の進行の停止を意味しており、治癒がされたわけではないのでひとたび辺縁漏洩が起きると再び虫歯が活性化しはじめるという事になります。

そのため、あくまでも生え変わる事を前提とした治療困難な子供の乳歯への一時的な処置として治療法が考え出された背景があります。

あくまでも虫歯の除去ではなく、虫歯の進行抑制を目的とした治療法であるという点に注意しないといけません。

(関連記事:虫歯や歯周病の始まりとなるプラークの蓄積
 

大人の歯に対し、虫歯を取らずに処置をしてもいいのか?

大人の虫歯に対してシーラントをして虫歯の抑制をできるのかという研究もされています。

虫歯は酸によって歯の無機質が脱灰される状態で、無機質がほとんどのエナメル質では空洞が開き、象牙質に達すると柔らかいコラーゲン線維などを残して軟化した象牙質として虫歯が形成されます。

初期の脱灰を除いて、虫歯によって脱灰された無機質は再石灰化する事はないので無機質が脱灰されコラーゲン線維などが残された軟化象牙質はその状態が石灰化され戻る事はなく、軟化されたままなので通常は虫歯の除去の対象となります。

永久歯の臼歯咬合面う蝕に対して虫歯の除去と治療ではなく、進行抑制という点から虫歯を残してレジンによる封鎖を行った場合25ケ月から38ケ月ほどで経過を追うと、

虫歯が退行したものが2%、

変化が特に見られないものが88%、

虫歯が進行したものが10%、

と進行抑制という点から見ると成績が良いように見えます。
 

ただし、この状態もあくまでもレジンなどによる辺縁封鎖が完全にされており、虫歯の病巣が口腔内環境から完全に隔絶されている事が前提となるのでレジンや修復物の劣化によって栄養源が病巣に供給されれば再び虫歯が進行しだす事を意味します。

一方で虫歯の除去を行い修復をした場合は完全に虫歯の進行は停止するため、一時的な進行抑制のみを目的としない場合は、やはり病巣である虫歯の除去と修復が基本となります。

そのため、今現在虫歯を取れない何らかの理由があり将来的に虫歯の除去と修復を予定するといった場合に用いられるような一時的な処置という状態にとどまります。

虫歯予防として行われるシーラントにおいても1年でおおよそ20%が、5年で半分が脱落すると言われているため、辺縁封鎖性の持続がいずれにせよ課題となります。

 

(関連記事:子供の虫歯予防のシーラントに効果はあるの?

(関連記事:阿部歯科での根拠に基づく歯科医療

 

参考文献:

1) The Hall Technique for managing carious primary molars. Innes N., et al. Dent. Update. 2009.

2) Sealing caries in primary molars: randomized control trial, 5-year results. Innes N. P., et al. J. Dent. Res. 2011.

3) Sealing occlusal caries lesions in adults referred for restorative treatment: 2-3 years of follow-up. Bakhshandeh A., et al. Clin. Oral Investig. 2012.

4) The success of stainless steel crowns placed with the Hall technique: a retrospective study. Ludwig K.H. et al. J. Am. Dent. Assoc. 2014.

画像診断.jpg

千種区で歯医者さんをお探しなら「患者様本位の頼れる阿部歯科」へ!
当院では歯科治療情報の他、最新の歯科業界情報等をお伝えしています!


医療の世界では人工知能による診断という分野が発展を始めていますが、歯科業界においても人工知能による診断という分野は研究がすすめられています。
 

診断の先入観をなくすための試み

実際の臨床現場では患者さんの痛みや何が気になっているかといった医療面接を通して、より患者さんの苦痛を心理的にも肉体的にも取り除くようにする事を目的としています。

その際にやはり患者さんがより気になる部位に歯医者さんはフォーカスを当てて対処する事になります。

もちろん患者さん自身で気が付いていない虫歯や歯周病などの悪い部位にも目を向けて説明と治療を施していくのですが、やはりまずは患者さんが最も気になる主訴の部分に注意が向けられます。

その主訴に対してどのように苦痛を取り除いていくのか、どのような手順ですすめれば痛みのない治療をできるのかといった事を考えながら歯医者さんは治療計画をたてていくのですが、その際に主訴以外の部分にどれだけの注意力を向けるかという部分に個人差が出てきてしまいます。
 

患者さんとのコミュニケーションや何が気になるかなどの聞き取りは必須の行為となりますが、その際に心理的なバイアスがかかる可能性があります。

例えば患者さんが「右下が痛い」と訴えた場合に、当然ながら右下に注目するのですが、歯科疾患における痛みの中に関連痛という痛みが存在します。

関連痛とは本来の場所とは違う離れた場所に痛みを感じる事でこの例では「右が痛い」と訴えているにも関わらず実は右に病気が発生してそれが原因で右下に痛みがあるように感じている場合です。

このような聞き取りにおける先入観がバイアスとよばれるものとなります。
 

人工知能によるレントゲン画像からの画像診断

歯科における自動画像診断の研究はまだまだ始まったばかりですが、歯周病においてもその試みは始まっています。

レントゲン画像から分かる歯周病の状態は歯を支える歯槽骨の欠損状態、歯根膜腔の拡大、白線の肥厚・消失など様々な情報を基に診断を行います。自動画像診断ではまずこの中でも最も基本となる歯槽骨の欠損状態に焦点を当てて診断を試みています。

人工知能に学習させるため数万のレントゲン画像を読み込ませ、正常な歯槽骨の状態と歯周病となった歯槽骨の状態を記憶・学習させることでどの部位が正常な歯槽骨の状態からかけ離れているかというのを診断させるようにしています。
 

歯医者さん自身もレントゲン画像を見る事で歯周病を診断しますが、その診断の程度に先ほどのバイアスや差異が発生するのを取り除き常に一定の基準で診断しようというのが自動画像診断の大きな目的のひとつとなっています。

しかし、やはり歯科治療は患者さんを相手とする医療なので例え自動で診断がおりるようになったとしても、どんなに技術が進歩しても最後は歯科医師本人がどれだけ患者さんと向き合うかという事が大切になってきます。

(関連記事:仮想空間で歯を削る歯科治療シミュレーター

 

千種区の歯医者 阿部歯科では常に新たな歯科医療を取り入れています

ここ数年で、歯科治療は急激に発達してきているので、当院では新たな技術や材料などに関して日々の知識の獲得に力を入れています。
これからもより良い歯科医療を患者様へ提供できますよう、最新の医療を学びながら、新たな治療も取り入れてまいります。

患者様のお口の状態はもちろん、お一人お一人異なります。そして以前は治療が難しかった内容も歯科治療技術の進化と共に可能になっています。そのため、新たな治療技術や知識を吸収し、それを治療に活かすのは歯科医療において非常に重要と考えます。

 

参考文献:

1) Deep Learning for the Radiographic Detection of Periodontal Bone Loss. Krois J., et al. Sci. Rep. 2019.

2) DeNTNet: Deep Neural Transfer Network for the detection of periodontal bone loss using panoramic dental radiographs. Kim J., et al. Sci. Rep. 2019.

 

 

口腔内レジストーム.jpg

細菌の抗菌薬(抗生物質)に対する耐性菌の問題が世界的にも注意されていますが、口腔内の感染に対して抗菌薬は非常に重要な薬と言えます。

虫歯が進行すると歯の神経まで細菌感染を起こし、歯髄や歯根の先端に膿を作る事があります。

膿が大きくなって顔が腫れたり、親知らずが感染したといった場合にも抗菌薬は重要な対処方となりますが、それも抗菌薬が細菌に効くという事が前提になっています。

口腔内の細菌に抗菌薬は効き続けるの?

細菌の持つ抗菌薬耐性の遺伝子の保存にレジストームという概念があります。

レジストームとは抗菌薬に対する多数の耐性遺伝子の総体を示しています。このレジストームの存在が抗菌薬に対する耐性を示す事となります。

様々な抗菌薬に対する多くの遺伝子は細菌の中に保存、受け継がれて、新たな抗菌薬が発見、使用されるたびにあらたな抗菌薬耐性遺伝子が発現していき、その結果耐性菌ができる事があります。

不用意な抗菌薬の使用で耐性菌が生まれる一方で、まだ抗菌薬の存在しなかった時代の口腔内細菌にも様々なレジストームが確認されるため、抗菌薬の使用によってのみこれらの抗菌薬耐性遺伝子が発現したというわけではありません。

抗生物質は元々、真菌などの生物から発見されて自然界に存在したものもあるので、それらに対抗する形で古くから一部の細菌が耐性遺伝子を持ち続けて、保存し続けたという点もあります。

それに加えて、口腔内の細菌に対して抗菌薬耐性遺伝子が新たに増え続けると必然的に口の中の感染性の炎症に対しての効力が下がっていくという事になります。

口腔内の細菌でもβラクタム系、クリンダマイシン、エリスロマイシン抵抗性のある口腔内レンサ球菌が血流に乗って心内膜炎を起こす事も報告されており、口腔内の細菌に対して抗菌薬耐性を持たせないようにする事は体全体から見ても大切な事というのが分かります。

(関連記事:歯医者さんは出す抗生物質をどうやって決めているのか

口腔内細菌のレジストーム

原住民や古代の人々から確認されるレジストームを見ると医療的な抗菌薬の処方に関係なく、歯科医院でよく処方されるβラクタム系、マクロライド系の抗菌薬に加えて、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系といった様々な抗菌薬に対する耐性遺伝子が細菌から確認されます。

現代人において、サンプルの遺伝子を包括的に解析するメタゲノム解析を行うと口腔内のプラークや唾液中の細菌からβラクタム系、マクロライド系、テトラサイクリン系、アミノグリコシド系、ニューキノロン計、リンコサミド系、ストレプトグラミン系、プレウロムチリンといった多種多様な抗菌薬耐性遺伝子がレジストームとして確認されます。

ただ、これらの口腔内細菌のレジストームが抗菌薬の処方によってもたらされたかという事を確認すると、処方の量とレジストームの量との間には相関関係が発見できなかったと報告されました。

しかし、これは現段階で相関関係が見つけられなかったというだけであって今後常に関係ないという事を意味していません。そのため、今現在有効に活用できている抗菌薬を今後長く使用し続けられるようにするためにも抗菌薬の処方は必要性をしっかり確認した上で適切に使っていく事が大切となるかもしれません。

千種区の歯医者の阿部歯科では虫歯が痛い、歯周病で歯茎が腫れたなどさまざまな患者さんの悩みに対応しています。

(関連記事:口腔外科でも問題となる多剤耐性菌とは

参考文献:

1) Pathogens and host immunity in the ancient human oral cavity. Warinner C., et al. Nat. Genet. 2014.

2) The microbiome of uncontacted Amerindians. Clemente J. C., et al. Sci. Adv. 2015.

3) Abundance and diversity of resistomes differ between healthy human oral cavities and gut. Carr V. R., et al. Nat. Commun. 2020.

 

キシリトール.jpg

虫歯予防にキシリトールが良いという言葉はどこかで聞いたことがあるかもしれませんがこのキシリトールの効果をどれくらいご存知でしょうか?

キシリトールって何?

キシリトールは自然に存在する糖アルコールの一種で砂糖の代替甘味料となる甘さを持っています。

数十倍から数千倍の甘さのある人工甘味料とは別で、その甘さは代表的な糖の一つであるブドウ糖(グルコース)のおおよそ2倍でカロリーはおおよそ75%の1gあたり3カロリーです。

キシリトールの歴史は意外と古く1970年代のフィンランドで虫歯予防の添加物として研究が行われており、40年以上の歴史があります。

実際に食品の添加物として使われるようになったのは、国連の食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で作るFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)で1996年に食品添加物としての安全性が確認されて使われるようになりました。

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キシリトールって結局は糖なの?

キシリトールは糖アルコールという性質上ブドウ糖とは色々と違った性質があります。

糖尿病で注意しないといけない血糖値の上昇具合を示すグリセミック指数はブドウ糖が100なのに対してキシリトールが7-13とブドウ糖に対して糖質の吸収が穏やかな事が分かります。

キシリトールは自然界に存在しており、果実や野菜に含まれていいますが、商品に使われるキシリトールはカバノキやブナなどの植物から精製されます。

あまりとりすぎるとおなかを下す事も少し有名ですが、個人差はあるものの子供では1日45g以上、大人では1日100g以上とるとおなかを下すと言われていますが大人なら1日40g以下であれば大体の大人は大丈夫とも言われます。

キシリトールは虫歯予防に効く?

キシリトールの作用はいくつかあり、それらを利用して虫歯予防に寄与します。

キシリトールは、非発酵性で口腔内細菌によって酸を産生させないという特徴があり、虫歯になる菌の中でも有名な細菌の一つであるミュータンス菌はキシリトールによって様々な影響を受けます。

キシリトールはミュータンス菌のエネルギー産生プロセスを阻害し、無意味にエネルギー使わせる事で細菌自身の増殖を防ぎ、さらには酸の産生とプラークの産生も阻害します。

実はキシリトールにはミュータンス菌を殺す作用もあり、ミュータンス菌の持つフルクトース・ホスホトランスフェラーゼ系を使ってキシリトールからホスホエノールピルビン酸を経てxylitol–5–phosphateを作る事でミュータンス菌の細胞内液胞と細胞膜減成によって細胞の死を引き起こす事でミュータンス菌を殺すという作用も持っています。

これらの作用によって、プラーク中のミュータンス菌の増殖を防ぐ事ができるのですが、虫歯の中のミュータンス菌の増殖を止めるわけではありません。

つまりあくまでも予防歯科という観点からキシリトールは有用なのであって、虫歯治療に使えるわけではないのです。

予防歯科という点から見たキシリトールはキシリトールガムの使用で虫歯リスクが50%近くまで下がるとも言われ、3歳以下の子供がいる母親に至っては母親がキシリトールガムを常用する事で母親から子供へのミュータンス菌の感染を防ぎ子供の虫歯が減る事も知られています。

その他にもキシリトールはプラーク中のアンモニアとアミノ酸濃度を上げる事でプラーク中の酸を中和するという作用も持っており予防歯科を考える場合は有用な代替甘味料となるのです。

(関連記事:子供の口腔内細菌はお母さんから受け継いだ?

キシリトールがあれば虫歯をなくせるの?

キシリトールが予防歯科という点から見た時に有用であるのですが、知っておかないといけない点もあります。

ミュータンス菌を殺す作用もあるキシリトールですが、キシリトールは全てのミュータンス菌の細菌株に効くわけではありません。

常習的にキシリトールを使う人の口の中のおおよそ80%のミュータンス菌の細菌株にはキシリトール抵抗性があるとも言われています。

しかし、キシリトール抵抗性のあるミュータンス菌は毒性が弱い事も分かっており虫歯の主要因となるような細菌株はキシリトールによる作用を受けると考えられます。

これはミュータンス菌の持つフルクトース・ホスホトランスフェラーゼ系とxylitol–5–phosphate生成との関係に関連しているのでしょう。

そして、キシリトールはプラーク中のミュータンス菌を減らす作用がありますが、口腔内の細菌構成を変えるわけではありません。そのためキシリトールを使っていれば虫歯を根絶できるというわけでもありません。

さらにキシリトールを使っていても他の糖類があればそれによって酸は産生されるため実際の食生活においてキシリトールを取り入れただけで虫歯がなくなるという事はないのです。

そのためキシリトールは使い方を知った上で予防歯科という点から適切に使う事が大切となるのです。

予防歯科に力を入れている千種区の歯医者の阿部歯科ではどのような事が患者さんの日々の虫歯予防に役立つか定期的にお伝えしています。

(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話

参考文献

1) Artificial sweeteners - a review. Chattopadhyay S., et al. J. Food Sci. Technol. 2014.

2) The effect of xylitol on dental caries and oral flora. Nayak P. A., et al. Clin. Cosmet. Investig. Dent. 2014.

歯の神経と血管.jpg

虫歯が大きくなって細菌が歯の奥深くまで感染した結果、歯の神経を取らないといけないとなってしまった場合に歯の神経がまだ一部生きている場合もあります。

その際に歯の神経を取る治療の過程で麻酔をしないといけないのですが、炎症が起きている歯の神経には麻酔が効きにくい事がしばしばあります

そういった際に痛くない治療や可能な限り無痛な治療をするために麻酔を打つ時だけではなく、麻酔の効かせ方や歯を削る時の治療の方法にも気を配らないといけません。

この、歯の神経を取るという治療は歯の中にある神経を取り除く治療なのですが、この歯の神経とは具体的にどういったものかご存知でしょうか?

(関連記事:歯医者さんのドリル

記事の追記:2020年5月14日

歯の神経って何?

歯医者さんに行くと歯の神経を取りましょうという説明を受ける事があるかもしれませんが、この歯の神経とは具体的にどういったものかイメージがつく患者さんは多くないかもしれません。

「歯の中に1本神経が通ってるの?」「歯に神経が繋がってるの?」と様々な疑問がわくかもしれません。

歯の構造は歯の頭側から硬組織でできているエナメル質・象牙質(原生象牙質・第二象牙質・修復象牙質)、軟組織でできている歯髄という順番で構造を作っています。

歯医者さんで歯の神経を抜きますという説明はこの歯髄という構造を歯から物理的に取り除く事を意味しているのです。細菌感染をおこしてしまった軟組織である歯髄を取り除く事で感染源を取り除くという治療を行うのが歯内療法という治療になります。

(関連記事:歯の構造について

(関連記事:最近の歯の神経の治療方法の進化

歯髄には神経が入っている?

ではこの歯髄という軟組織ですが、具体的にどういうものなのでしょうか?

神経だけが中に入っているというわけではなく、歯髄の構造のおおよそ40%が神経組織で占められ、残りの40%は血管組織が満たされており、残りのおおよそ20%は線維芽細胞などの間葉系細胞成分とコラーゲンを含む結合組織成分で占められます。

つまり、歯の神経を抜きましょうねと歯医者さんで分かりやすく説明していますが、具体的には40%の神経組織を含む血管結合組織を取り除いているという事になります。

歯の中の神経は痛みしか感じない

歯髄は知覚神経である上歯槽神経もしくは下歯槽神経から分布します。歯の神経は非常に特徴的で触覚、圧覚、温覚などの判別はできず感じるものは全て痛みである痛覚のみとして感じ取ります。

そのため歯の神経を触った時にはどんな触り方をしようとも痛みしか感じないのです。

この事を十分認識する事が痛くない治療・可能な限り無痛の治療を行う上で大切となるのです。そして歯の神経は歯の中でも位置によって特性が大きく変わり、象牙質に近い歯髄ではAδ線維が、歯髄の深部ではC線維が存在しており、Aδ線維は鋭く速い痛みを感じ取り、C線維は鈍く遅い痛みを感じとると言われています。

(関連記事:歯の神経って何?

(関連記事:原始人も恐竜も虫歯に悩んでいた?

歯の神経は1本の線維?

歯の神経が根尖孔から歯の内部に入った際にどのような構造を取っているかと言うと1本の神経が中を通っていると思う方もいるかもしれませんが根尖孔から入った神経は枝分かれするように歯の中を広がっていきその太さはおおよそ40-60マイクロメートルから始まり、細い一本一本の神経線維に枝分かれするとおおよそ0.5-5マイクロメートルの細さへと変わっていきます。

そしてこの枝分かれした神経の先端で象牙質の直下にいる細胞の象牙芽細胞やその細胞突起に結合してそれを介して歯を削った時の痛みを感じているのです。

(関連記事:歯の神経は歯の中で複雑に枝分かれしている

歯を削った時と神経を触った時どちらが痛い?

歯の神経は歯の内部で枝分かれして歯冠部へと向かいますが歯冠部で枝分かれした神経はラシュコフの神経叢と呼ばれる象牙芽細胞下神経叢を形成して象牙芽細胞またはその細胞突起へと結合します。

この象牙芽細胞の感じ取る感覚が歯を削った時に感じる痛みで、この象牙質で感じ取る痛みや歯冠部の歯髄で感じ取る痛みは鋭く速い痛みを感じるAδ線維が関与すると言われており、歯髄の深くで感じる痛みは鈍く遅い痛みを感じとるC線維が関与していると言われています。

そのため、強い痛みがすでにでてしまっている場合の歯の神経を取り除く治療の際には鋭く速い痛みを引き起こしているこの歯髄の象牙質付近に存在するAδ線維の神経をしっかり取り除く事が大切になるのです。

そして最も痛みを感じる部位は象牙質を削って歯髄のAδ線維の神経へと触れる段階が最も痛みを感じる可能性が高くなるのです。

つまり歯の神経を取り除くという事は

歯の中にある40%の神経を含む血管結合組織を取り除くという事で、痛みを取り除くという目的のためには特にAδ線維という鋭く速い痛みを感じる神経を取り除く事が大切になります。

もちろん鈍く遅い痛みを感じるC線維の神経も取り除きますが、最初の段階でどれだけ多くAδ線維を取り除くかでその後の痛くない治療・なるべく無痛の治療が達成できるかが変わるのです

そのため、千種区の歯医者の阿部歯科ではこのような科学的に根拠のある手技や治療手順を大切にして日々の治療を行っています。

(関連記事:見えない歯の根の先端をどうやって測るのか(歯内治療)

(関連記事:阿部歯科での根拠に基づく歯科医療

参考文献:3D-Imaging of Whole Neuronal and Vascular Networks of the Human Dental Pulp via CLARITY and Light Sheet Microscopy. C. M. Franca, et al. Sci. Rep. 2019.

 

高病原性化.jpg

みなさんは虫歯と聞いてどこかで「ミュータンス菌が虫歯の原因に」という言葉を聞いたなと思い出さないでしょうか?

虫歯が進行して神経まで到達すると神経の処置をしないといけなくなるといった事になります。

しかし、ここ10年で「ミュータンス菌が虫歯の原因に」という考え方に変化が起きている事をご存知でしょうか?

(関連記事:歯の神経を取る時って痛いの?)。

記事の追記:2020年年1月8日

虫歯の原因になる菌は現在これだけ分かっている

かつては虫歯の原因と言えば口をそろえてミュータンス菌と言っていました。

しかし、現在では虫歯の原因となる菌は分かっているだけでも

Streptococcus mutans(ミュータンス菌)

Lactobacillus(ラクトバシラス属)

Bifidobacterium(ビフィドバクテリウム属)

Actinomyces(アクチノマイセス属)

Veillonella(ベイロネラ属)

Scardovia wiggsiae

と非常に多くの菌がおり、これらの菌は糖やデンプンを栄養として酸を産生して歯を脱灰する(虫歯にする)事が分かっています。

これらの菌は歯の表面についたバイオフィルム(プラーク)の中に生息して歯を溶かして虫歯を作りだします。

なぜ虫歯になるのか

かつては特定の細菌のみをターゲットとして、その細菌がいるかいないかで虫歯になるかどうかを研究していましたが、現在では特定の細菌のみでなく細菌の集団、細菌叢の状態によりう蝕(虫歯)が発生すると考えられています。

つまり、個々の細菌が存在するかどうかではなく、口腔内の細菌叢の状態(病原性)により疾患が発生すると考えられるようになりました。

常に口の中にいる常在菌が低病原性の時は疾患(う蝕)が発生しないものの、口腔内清掃状態が悪化してひとたび細菌叢が乱れると細菌の集団が高病原性へと変わりう蝕を引き起こすというように認識が変わったのです。

このような変化をマイクロバイアルシフト(Microbial Shift)と言いますがこのような考え方は歯周病治療に関しても大きな変化をもたらしています。

(関連記事:1日にどれだけ甘い物を食べると虫歯になるのか

(関連記事:どうして歯周病になるのか)。

これからの新しい虫歯予防

この細菌叢の乱れ、つまり高病原性への変化はありとあらゆる細菌の関係性が関連しており、高病原性へと変化したバイオフィルム内での菌叢内では細菌の代謝産物同士がお互いの栄養源となりさらに菌が活発になるという悪循環を引き起こしていきます。

そのため、今現在のう蝕予防(虫歯予防)はミュータンス菌単独ではなく様々な酸産生菌の活動を活性化させないようにするという考え方に変わってきているのです。

このような細菌叢の乱れや細菌全体での病原性の変化という考え方は予防歯科という言葉が普及してきて急速に研究がすすみだしました。

そして今や予防歯科を含めた虫歯の研究ではミュータンス菌のような単独の細菌だけではなく様々な酸産生細菌とその活動性の変化、細菌同士の関係性というところへと広がっています。

千種区の歯医者の阿部歯科ではこのような細菌叢の高病原性への変化を確認するための顕微鏡検査や高病原性へと変化してしまった細菌叢の活動を抑えるための処置などの予防歯科に力を入れています。

(関連記事:どうして虫歯菌はなくならないのか

(関連記事:治療後の虫歯予防と歯周病予防

(関連記事:阿部歯科では健康保険内、別途費用なしで特別な歯周病検査・処置を行っています

歯が虫歯になってしまった等の理由で歯に冠を被せる事になった時に歯を削った後の仮歯を被せる場合もあるのですが、仮歯というと患者さんの中には聞いた事がある方もいるかもしれません。ですが、プロビショナルレストレーションという言葉はあまり馴染みがないと思います。実はこの二つは一見見た目には似たように見えるのですが、その目的も作製工程も素材も大きく違います。難しい名前のプロビショナルレストレーションですが、治療計画によってはなくてはならない非常に大切なものになります。
今日はそんな仮歯とプロビショナルレストレーションというものについてお話をしようと思います。

仮歯

仮歯の目的はその文字の通り仮の歯を入れる事です。例えば前歯に被せ物をする時には歯をぐるっと削らないといけませんが削ったままではあまりに目立ちすぎるため前歯の形をしたプラスチック製の仮の歯を入れる事があります。この仮歯は基本的に歯の周りを削って型を取ってから被せ物が入るまでのかりそめの歯という位置ずけで1番の役割は削った歯が目立ちすぎないようにするという事です。

プロビジョナルレストレーション

一方プロビジョナルレストレーションの目的は仮歯とは全く違います。プロビジョナルは日本語で仮、レストレーションは復元、回復を意味します。見た目には一見して仮歯と似ているように見えますが、その目的は歯の機能を仮に回復するというものなのです。
少しわかりにくいかもしれませんが、仮歯は見た目の体裁を保つのが1番の目的なのに対してプロビジョナルレストレーションは最終的に入る被せもののリハーサルのようなものです。もっと言ってしまえばプロビジョナルレストレーションとは最終的に入る被せものと材質が違うだけの同じ姿形をしたものと言ってしまってもいいのです。
患者さんによっては下の歯全部を直したり形を変える必要のある方もいますが、いくつもの歯の形が急に変われば噛み合わせや歯同士のあたりも非常に難しくなります。それを本番一発で治すのではなく、まずリハーサルを入れてその噛み合わせや見た目、形、歯茎へのあたりなど事細かに調整をしていきます。そのため治療計画によってはこのプロビジョナルレストレーションを1年以上入れ続けて形を調整して行くことさえあります。そのためにもプロビジョナルレストレーションに使われる素材はただのプラスチックではなく硬さも耐久性もある素材が使われます。素材にはハイブリッドセラミックと呼ばれるプラスチックにセラミックの粉を混ぜて耐摩耗性を高めた上に高温で固く焼き固めた耐久性の高い物を使う事があります。これくらいしっかりとしないと長期間にわたる被せもののリハーサルには耐えられないのですね。
このプロビジョナルレストレーションを入れて噛み合わせが自然になるように調整した上で歯自体の見た目や歯茎に接する面の形、機能性を完成させていき最終的に同じ形の被せ物を入れて行くのです。まさにかりそめに(歯の機能性を)回復させるという名前の通りの目的のものなのです。千種区の歯医者の阿部歯科では歯の見た目だけではなくこのように歯の機能といった面からも治療計画を立てて治療をすすめています。
 
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