千種区池下の歯医者 阿部歯科 副院長の阿部利晴によるブログで、アメリカの歯科医療についての事情等を載せています。

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予防歯科の最近のブログ記事

歯周病での破骨細胞.jpg

歯周病になると歯肉が下がるだけではなく、歯を支える歯槽骨自体も吸収されて溶けていきます。

そして、骨が溶ける事が結果的に歯が抜けるといった症状へとつながっていきます。

なぜ歯周病で骨が溶けるのかという事には体の機能が関係しています。

歯周病が骨を溶かす

歯周病は、通常では悪さをしていない悪性度の低い細菌の状態では骨は溶けません。

口腔内清掃の悪化などの理由で、悪性度の高いDysbiosisと呼ばれる細菌の状態へと変化する事(マイクロバイアルシフト)で骨が溶かされていきます。

しかし、歯周病による症状、腫れや出血、歯槽骨が溶けるといった症状は悪性度の増した細菌そのものが直接起こしているわけではありません。

それらは、細菌に反応した体の様々な細胞によって起きている反応です。

 

歯肉の腫れといった炎症も、悪性度の増した細菌に反応した免疫細胞が種々のサイトカインなど様々な物質を放出する事で起きます。

それに伴って血管の拡張や透過性の亢進などを引き起こし歯の周りが腫れるといった状態を引き起こしています。

それと同様に、歯を支える歯槽骨が溶けるのも悪性度の増した細菌からなんらかの物質が出て骨を溶かしているわけではありません。

別の細胞によって骨が溶かされています。

歯槽骨を溶かしている原因となる細胞は、通常でも体の骨の代謝(骨改造)を行っている破骨細胞によって行われています。

骨は溶けては作られているが歯周病では一方的に溶ける

体の中の骨は常に新しく作りかえられており、溶けては作ってを繰り返してどんどん新しい骨へと置き換わっていきます。

成人では1年間での骨の置き換わり(骨改造)は全体のおおよそ2%ほどと言われています。

そのため、通常では骨には骨を溶かす破骨細胞はまばらに見えるのみにとどまります。

しかし歯周病の起きている部位では破骨細胞が非常に多く見られます。

この組織学的な状態が歯を支える骨である歯槽骨を過剰に溶かすという症状を作り出しています。

 

正常な骨では骨を溶かす破骨細胞と骨を作る骨芽細胞がタッグとなるユニットを組んで行動します。

このユニットは行動を開始するとおおよそ4か月間共に骨の改造を行います。

このユニットは

・活性化

・破骨細胞による骨吸収

・骨吸収から骨添加への変化

・骨芽細胞による骨形成

といった手順を踏みます。

このようにして破骨細胞と骨芽細胞によって骨は溶かされては作られてといった恒常性が維持されています。

歯周病で溶かされる骨

通常では破骨細胞と骨芽細胞によるユニットの共同作業で骨は新しくどんどん置き換えられていきます。

歯周病ではこのような共同作業とは全く違った事が骨で行われています。

 

破骨細胞は重要な免疫細胞で単球やマクロファージの前駆細胞から分化をしており、それらの細胞と共通の起源を持ちます。

破骨細胞はM-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)やRANKL(破骨細胞分化誘導因子)といったサイトカインによって分化され活動を開始します。

炎症の際には、悪性度の増した歯周病細菌によって活発化した免疫細胞によってこのようなサイトカインが数多く放出されます。

その結果破骨細胞が急激に作り出され、そして骨を急激に溶かしていくのです。

 

つまり、通常の歯周病では

口腔内清掃状態が悪くなる

・悪性度の低い状態から悪性度の高い細菌状態へと変化する

・細菌に対して免疫細胞が集まりだす

・免疫細胞が様々なサイトカインなどを放出する

・腫れや易出血性などの炎症が起きると共に、破骨細胞が活性化される

・歯肉が腫れて歯槽骨が溶ける

・歯周病となる

・歯肉からの出血や細菌による代謝物が栄養となり、さらに細菌が増殖する

さらに歯周病が悪化する

といった悪循環が起きるのです。

 

千種区の歯医者の阿部歯科ではこのような歯周病の悪循環を断ち切るために、位相差顕微鏡を導入して細菌の密集具合を直接確認しています。

さらに消毒薬を使っての清掃をする事でいかに悪性化した細菌の状態を改善させていくかという事に力を入れています。

 

細菌感染によって歯肉に炎症が起きるのは免疫細胞が細菌と戦おうとした結果ともいえます。

その結果自分自身の組織も自ら痛めてしまう事となります。

一方で炎症によって大量に作り出された破骨細胞は歯を支える骨を溶かし結果として歯の脱落(歯が抜ける)といった結末へと向かっていくのです。

しかし、この理由は細菌感染を引き起こした感染源である歯そのものを脱落させる事でその感染源を取り除こうとする体の反応の進化ではないかという考察も報告されています。

実際に重度の歯周病でも、歯を失う事で感染源そのものがなくなると急激に状態が回復するのでこのような歯周病に対する破骨細胞の反応も体を守ろうとする防御機能の一つなのかもしれません。

(関連記事:どうして歯周病になるのか

 

参考文献)

1) Recent advances in osteoclast biology and pathological bone resorption. Blair H. C. and Athanasou. N. A. Histol. Histopathol. 2004

2) Osteoporosis and inflammation. Mundy G. R. Nutr. Rev. 2007

3) Mechanisms of Bone Resorption in Periodontitis. Hienz S. A., et al. J. Immunol. Res. 2015.

4) Host defense against oral microbiota by bone-damaging T cells. Tsukasaki M., et al. Nat. Commun. 2018.

CPP-ACP.jpg

CPP-ACP(カゼインホスホペプチド-非結晶リン酸カルシウム複合体)という名前を聞いた事があるでしょうか?

予防歯科を考える時にフッ素(フッ化ナトリウム)と並んで注目される物質の一つですが、まだまだフッ素ほど知名度はないもののその特性を知った上でフッ素と併用する事で虫歯予防に非常に有用になるのではと考えられています。

CPP-ACPとは

虫歯に対する抵抗性を持たせると共にエナメル質の再石灰化の機能も持っている可能性のある物質です。

元々乳製品由来の物質でWHOからリンタンパク質の一種であるカゼインを含むチーズが虫歯予防に効果がある食べ物として可能性を示されているように、CPP-ACPは乳製品にも含まれるカゼインホスホペプチドがリン酸カルシウムを安定化させる事で虫歯予防に効果があると考えられています。

CPP-ACPの虫歯予防に対する効果はよく研究されており、CPP-ACPを使う事で酸に対する抵抗性もあがり、その効果は塗布後3時間たっても発揮するという報告もあります。

このような、使用後に長時間効果を発揮するというのも非常に有用な点だと考えられます。

エナメル質、象牙質に対する効果は?

歯の表面が酸性になった時に歯が溶ける脱灰に対しての抵抗性は電子顕微鏡レベルでも確かめられており、CPP-ACPの存在下では歯が溶けにくくなっている事も確認できます。

その際に、CPP-ACPの存在下で脱灰により溶け出した歯のカルシウムイオンとリン酸イオンに対して緩衝する事で歯の脱灰を防ぎ、再石灰化を促進しているのではないとか考えられています。

さらにCPP-ACPはフッ素と併用する事でより効果が出るとされていますが、スポーツドリンクに含む事でも味を損なう事なく虫歯予防に効果を発揮するとも言われています。

CPP-ACPは第二のフッ素になるか?

このようにフッ素とは別の作用により虫歯の予防歯科に寄与する事ができると考えられているCPP-ACPですが、元々は乳製品からその効果が発見されてきたというのは興味深い点です。

フッ素と併用する事でさらに効果を発揮すると考えられているため、CPP-ACP単独というよりも両方同時に使用するというように使われていくようになるかもしれません。

CPP-ACPはチューイングガムやマウスウォッシュに入れたりと様々な可能性があるため、今後その使用範囲が広がっていけばいいなと思います。

フッ素の他にもキシリトールやCPP-ACPなど様々な予防歯科に効果的なものがあるため、それらの特性を知って効果的に使っていくとより歯の状態を健康で長持ちする事ができるようになると思います。

今池からすぐの歯医者の阿部歯科では予防歯科に力を入れているので虫歯や歯周病を予防するうえでの様々な情報もお伝えしています。

(関連記事:虫歯になりにくい食べ物は?

 

参考文献

1) Effect of CPP-ACP paste on tooth mineralization: an FE-SEM study. Oshiro M., et al. J. Oral Sci. 2007.

2) Analysis of dentin/enamel remineralization by a CPP-ACP paste: AFM and SEM study. Poggio C., et al. Scanning. 2013.

バイオフィルムの発育様式.jpg

千種区の歯医者 阿部歯科副院長です。本日は「歯科」「予防歯科」系の話題となります。

虫歯や歯周病は口腔内で細菌が発育増殖して細菌集団であるバイオフィルム(プラーク)を形成して発症します。

細菌集団や代謝産物、食べ物の残渣など様々な物質を含むこのバイオフィルムが口腔内の様々な疾患の原因となりますが、バイオフィルムを形成するための細菌の増え方という点にはまだまだ不明な点が多くあります。

口腔内ではまず球菌が最初に付着してその後に桿菌など様々な形態の細菌が絡み合うようにして付着する事でバイオフィルムを形成していく事が分かっていますが、その増え方の様式自体ははっきりしていませんでした。

最新の研究から分かる口腔内細菌の増殖の様式

バイオフィルムの形成研究は多くが1つの細菌がどのように増殖していくのかという点から研究が行われています。

しかし、1つ1つのそれぞれに増殖する細菌がどのように巨大なバイオフィルムという細菌群を形成していくのかは不明な点が多くありました。

最近の研究では細菌は1つの細菌の付着から巨大なバイオフィルムを形成しているのではなく、それぞれに発育していく細菌集団が融合してどんどん巨大なバイオフィルムの細菌群を形成していく事が報告されています。

対象として確認されたのは虫歯の原因となる細菌の一つであるミュータンスレンサ球菌(Streptococcus mutans)で、その発育の様式が時間と空間的にどのように増えるかと経時的に調べられました。

報告された増え方の様式は、

最初に数マイクロメートル(1000分の1ミリ)の間隔をあけて球菌が付着をする。これはバイオフィルム形成の初期の段階における球菌の付着と同様となります。

その後それぞれの場所で付着した球菌がネバネバとしたextracellular polymeric substances(EPS:細胞外高分子)と呼ばれる物質を出して増殖を開始します。この発育の過程でおおよそ60%以上の球菌は発育できずに消滅していきますが、残りの生き残った球菌が平面的に増殖を続けてやがて近くの別の増殖している細菌集団と融合します。

融合する事によって形成された細菌集団は増殖を続けて、さらに別の場所で融合した細菌集団と融合をします。

平面的に増殖と融合を続けた細菌集団はやがて3次元的には盛り上がるように増殖を始めて巨大な細菌集団を形成した後にまた別の場所で巨大化した細菌集団と融合をして大量のバイオフィルムを形成していく事が分かりました。

つまり、バイオフィルム発育の段階では様々な場所で同時多発的に発生した球菌の付着と増殖により、寄り集まるようにしてバイオフィルムを形成していく事が示されています。

(関連記事:虫歯や歯周病の始まりとなるプラークの蓄積

口の中の汚れを悪化させる要素

口腔内の様々な細菌や清掃不足で口の中の汚れ(プラーク、バイオフィルム)が蓄積していく事となりますが、バイオフィルムの形成に影響する要因は細菌自体にも存在します。

特定の細菌のバイオフィルムの形成を阻害する別の細菌も存在しており、今回のミュータンスレンサ球菌に関してはStreptococcus oralisがそれにあたります。

ミュータンスレンサ球菌のバイオフィルム形成時に一緒にStreptococcus oralisを発育させるとバイオフィルムの形成が阻害される事が分かっており、共に競合してそれぞれの発育を争うように阻害する事が示唆されています。

一方でバイオフィルムの形成を促進させる細菌や真菌も存在しており、このような細菌や真菌が口の中で汚れとなる巨大なバイオフィルムに含まれて細菌の塊を作っています。

ミュータンスレンサ球菌と共に真菌であるカンジダ菌(Candida albicans)を発育させるとミュータンスレンサ球菌の発育を阻害する事なく細菌集団が融合する段階でのバイオフィルムの形成を促進させていく事が確認されました。

つまり口の中の汚れの問題は細菌自体の発育だけではなく、それぞれのプラーク(バイオフィルム)の融合という点からも注意していく事が大切となり、それぞれの細菌集団の融合を手助けするような口腔内の細菌への対処にも目を向ける事が大切となるのです。

さらに細菌の代謝産物のネバネバとした細胞外高分子が産生されなくなるとバイオフィルムの形成が阻害される事も分かっており、様々な細菌同士がお互いに結びついて増殖しては融合、増殖しては融合といったプロセスを踏んでいく際の「細菌の増殖」と「細菌集団の融合」という別の視点から口の中の汚れが増えていかないようにする事が必要とされてくるのです。

(関連記事:外出自粛中に自分でできる虫歯や歯周病の食生活管理

 

当院ではこのような細菌集団の塊であるプラークの形成を顕微鏡で確認して、今現在口の中の汚れがどのような状態にあるのか把握する事で虫歯や歯周病の予防をする予防歯科に力を入れています。歯医者さんでできる予防歯科の処置と共に患者さん本人でもどのような対処ができるかを考える事でより効果的に虫歯や歯周病を予防していく事ができるのです。

 

参考文献:

1) Biogeography of a human oral microbiome at the micron scale. Mark Welch J. L., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2016.

2) The Peculiar Functions of the Bacterial Extracellular Matrix. Dragoš A., et al. Trends Microbiol. 2017.

3) Dynamics of bacterial population growth in biofilms resemble spatial and structural aspects of urbanization. Paula A. J., et al. Nat. Commun. 2020.

歯ブラシの形.jpg

千種区の頼れる歯医者 阿部歯科の副院長です。今日はよく患者さんからご質問いただく歯ブラシについてのお話です。

歯を磨く時にどのような形の歯ブラシを使えばいいのか悩む患者さんは多くいます。

患者さんにあったそれぞれの歯ブラシの硬さや形というのは様々にありますが、歯ブラシの硬さや毛の細さ、形といった要素には様々な歯磨きへの影響が色々とあります。

歯ブラシの様々な種類

現在日本には歯ブラシのモデルがおおよそ450種類以上もあると言われています。色々なメーカーから様々な形の毛先の歯ブラシが出ており、

・昔からある平らな、Flat

・毛先がギザギザになっている、Rippled

・複雑に入り組んだ特殊な形をした、Angled

など、色々な形態の歯ブラシが出ています。

これらの歯ブラシの形でどのような形がいいか悩まれる方も多くいるかもしれませんが、これらの形は歯の表面を均一に磨くのを目的としたり、歯と歯の間を効率的に磨けるようにしたりといったそれぞれの目的別に形が作られています。

平らなFlatタイプの歯ブラシでは歯と歯の間に毛先を入れるのが難しくなる事があるため、ギザギザとなっているRippledタイプの歯ブラシを選ぶようにするといったそれぞれの患者さんの歯磨きの癖や歯並びによって選んでいく必要があります。

千種区にある歯医者の阿部歯科のロゴは歯ブラシの形をしていますが、実はRippledタイプの歯ブラシの形を基にデザインしています。

歯ブラシの毛先の太さや硬さはどれくらい影響するか

歯ブラシの毛先の太さや硬さによる歯磨きの効率というのも実は色々と調べられています。

例えば、毛の太さが0.2mmと0.18mmのものを比べると0.2mmの太さの毛先の方が歯と歯肉の間の汚れをより効率的に落とす事ができるとされます。

さらに毛先の太さを0.13mmから0.28mmの間で比較するとより毛先が太い方がより、歯の表面や歯と歯の間の汚れを落とす事ができるとも言われます。

毛先の硬さに関しては柔らかい毛先よりも普通の硬さの毛先、さらには硬い毛先の方が汚れを落とす効率は上がるものの、知覚過敏といった症状がある場合には硬い毛先だと間違った歯磨きの仕方をすると知覚過敏を増悪してしまう可能性があるという場合もあります。

(関連記事:歯磨きと歯ブラシ

歯磨きに影響する歯ブラシの要素

歯ブラシの毛先の形や太さや硬さは歯磨きの際の汚れを落とす効率などに影響するものの歯ブラシの毛先の付いているプラスチックのヘッド部分の形はそこまで大きな影響を及ぼさないとも言われます。

しかし、歯ブラシのみの歯磨きによって落ちる口の中の汚れはおおよそ40%から50%ほどと言われており、歯ブラシのみでなくデンタルフロスやマウスウォッシュなども併用して歯磨きをする事が必要になる場合もあります。

推奨される歯ブラシによる歯磨きは1日に少なくとも2回以上、そして1回につき2から3分やさしい力で歯を磨く事がすすめられています。

そしてその際には上下左右それぞれのブロックを30秒から45秒かけて磨くといいとされています。

(関連記事:洗口液(マウスウォッシュ)は1日に何回使えばいいのか?

(関連記事:正しい歯磨きの回数や時間は?
 

千種区の歯医者 阿部歯科ではブラッシング指導も行っています!

当院では正しいブラッシングに関する方法やどういった歯ブラシがその患者様にあっているか?のレクチャーも行っています。正しいブラッシング方法を知ることで、日々行う歯みがきがより効果的になります。ご自身の大切な歯を守り、長期的に快適な食生活をおくるためにも、ブラッシングはとても重要です。
 

 

 

参考文献

1) Relationship between the plaque removal efficacy of a manual toothbrush and brushing force. Van der Weijden G. A., et al. J. Clin. Periodontol. 1998.

2) Development and laboratory evaluation of a new toothbrush with a novel brush head design. Beals D., et al. Am. J. Dent. 2000.

3) Tooth brushing for oral prophylaxis. Hayasaki H., et al. Jpn. Dent. Sci. Rev. 2014.

虫歯になりにくい食べ物.JPG

今現在テレワークといった在宅勤務に伴い外出の自粛をしている方も多いかと思います。

そういった方の中には歯医者さんに歯科検診に行きたかったり、定期的なクリーニングに行きたいものの、受診を延期している患者さんも多くいると思います。

千種区でも最近は外を歩く人が目に見えて減っており、阿部歯科でも痛みや生活に大きな支障をきたさない緊急性の低い処置などに関しては3密を避けるために処置の延期や治療時間帯の調整などを行っております。

口の中の除菌、掃除や検診といった歯医者さんに行かないとできない事も多くありますが、その一方で在宅勤務に伴う外出自粛中でも自分でもできる虫歯や歯周病の管理もあります。

歯医者さんに行けない時にする自分でできる口腔内管理

歯医者さんに行けない期間が増えると虫歯や歯周病が悪化するのではないかと不安になっている患者さんもいると思います。

しかし、歯磨きの注意といったものの他にも食生活のコントロールである程度は虫歯や歯周病の対応も自分でコントロールしていく事もいくらかは可能です。

食生活においては在宅勤務中に虫歯や歯周病を悪化させないためには

間食をしないようにして朝昼晩の3食以外は取らない

加工食品は少な目にして調理の程度が少ない品目を増やす

・糖分のある食べ物を食べる場合には加工食品は避けて果物などにする

糖分の摂取量を減らすためにキシリトールなど虫歯になりにくい代替甘味料を利用する

といった工夫が効果的です。

間食をしないようにして朝昼晩の3食以外は取らない

虫歯や歯周病は細菌感染によって引き起こされた体への影響と言い換える事ができます。

虫歯はう蝕原因菌となる様々な細菌による歯の硬組織の脱灰(溶ける事)

歯周病は歯周病原因菌となる様々な細菌による体の免疫反応(炎症)

と言えます。

両方に共通しているのは細菌の付着とそれに伴う細菌の巣であるプラーク(バイオフィルム)の成熟です。

つまり、この細菌の巣であるプラークの成熟を遅らせる事が虫歯や歯周病の管理の一つとなるのです。

細菌は栄養源を口から摂取された様々な栄養素から取り入れ、それによって分裂、代謝といったサイクルを繰り返していきます。

間食をするという事は常に栄養源が細菌に供給されている事を意味するので、常に細菌の巣であるプラークが成熟を続けていく事となります。

そのため、食事のタイミングを決めて食事の回数が多くなりすぎないようにする事が口腔内のプラーク成熟のコントロールへと繋がる事になるのです。

加工食品は少な目にして調理の程度が少ない品目を増やす

食べ物には、未調理、素材の形や触感が残されて調理されているもの、高度に調理加工されているものといった食べ物があります。

その中でも未加工に近ければ近いほど虫歯になりにくいという特徴があります。

未調理の物を多く取ると虫歯になりにくい理由は、野菜で言えば、繊維質のものが口の中の汚れを取り除きやすくなるからといった事が言われる事がありますが、その理由の多くは繊維質のものによる洗浄効果よりもむしろ咀嚼の回数(噛む回数)と唾液の分泌にあると言われています。

唾液には口腔内に蓄積した食べ物の残り(食物残渣)を洗い流したり緩衝能(口腔内のpHを中性に近づける能力)があります。

そのため、未調理の物を多く採ると咀嚼の回数が必然的に増えて、それに伴う唾液の分泌によってそれらの洗浄効果や緩衝能が働き虫歯になりにくいという事が言えます。

洗浄効果によっては食物残渣が洗い流される事で歯周病にもなりにくくなるため、虫歯や歯周病両方にある程度の効果が期待できる事になります。

しかし、未調理だと熱が通っていないという心配が今の時期の問題としてあるため、熱を通した食材を使った上で加工しすぎないようにしたり、調理済みの加工食品を減らすといった取り組みが効果的かもしれません。

(関連記事:虫歯になりにくい食べ物は?

糖分のある食べ物を食べる場合には加工食品は避けて果物などにする

甘い物を食べたい時に選ぶ選択肢として様々な食べものがあがってくると思います。

ケーキやアイス、果物といった様々な食べものがありますが、その中でも加工食品と糖分の組み合わせは甘い食べ物の中でも特に虫歯になりやすいという特徴があります。

一方で果物の摂取は1日の摂取量が過剰に多くなりすぎない限り(1日8回など)虫歯への影響は少ない事が分かっています。

そのため、同じ甘い物を取るにしても加工されているケーキやアイスよりも果物を摂取する方が在宅中にできる口腔内管理とは優れている事になります。

外側に触れるもので生で食べるのが心配という場合はリンゴやバナナといった外側をむいて中身を食べられる果物を選択するといいかもしれません。

注意が必要なのは缶詰のようなシロップにつけられて加熱調理が加えられているものは、果物であるものの加工食品に準じる部分があるため、果物の摂取はあくまでも生鮮食品を選択するという事が大切となります。

果物以外の甘い食べ物の選択肢の場合でも加工具合が少なければ少ないほど虫歯への影響が少なくなるため、どれくらい加工がされているかを見ながら選んでいくといいかもしれません。

糖分の摂取量を減らすためにキシリトールなど虫歯になりにくい代替甘味料を利用する

虫歯になる原因は言ってみれば糖分の摂取となるのですが、糖分は減らせば減らすほど効果があるという事が分かっています。

甘い物を減らせば虫歯になりにくいのは当然と思うかもしれませんが、数多くある虫歯対策の中でも自分でできる虫歯予防としては実はこの単純に聞こえる糖分の制限が実は最も効果的と言われています。

実際に砂糖の摂取量を1日10g以下、5g以下と減らしていくと明らかに虫歯予防への効果が出る事が分かっており、糖分を減らすという自分でもできる食生活のコントロールが非常に大きな効果を上げる事ができます。

しかし、1日の糖分摂取量を全く0にする事は不可能である事に加えて、炭水化物は咀嚼中に口腔内のアミラーゼ酵素によって糖分へと変化するため、糖分を減らすという食生活の変化だけで虫歯を0にするという事はできないのが実情です。

虫歯自体を0にする事はできなくても虫歯予防として糖分のコントロールは非常に優れているため、砂糖の代わりにキシリトールといった虫歯予防に効果的な代替甘味料を使ったりする事で全体の糖分の摂取量をコントロールしていく事もやりやすくなると思います。

(関連記事:1日にどれだけ甘い物を食べると虫歯になるのか

(関連記事:キシリトールガムの効果は?

 

外出自粛で歯医者さんに行けない期間が長くなって、口腔内の状態が不安になっている患者さんもこれらのような食生活のちょっとしたコントロールで様々に口腔内衛生環境の改善を自分でもある程度できるのです。

食生活を変える事はなかなかむつかしいですが、どのような理由で食生活の変化が口腔内環境に影響するかを知ると自分でも様々な食べ物の調理や選択などで工夫がしやすくなると思います。

執筆:阿部歯科 副院長 阿部利晴

略歴

1980年 名古屋市千種区に生まれる
2005年 愛知学院大学歯学部 卒業
2005年 豊川市民病院 歯科口腔外科 臨床研修医
2006年 愛知学院大学歯学部 顎顔面外科学講座に入局
2010年 愛知学院大学大学院 歯学研究科を修了 総代
2010年 愛知学院大学歯学部 顎顔面外科学講座 非常勤助教
2010年 名古屋大学医学部附属病院 麻酔科 医員
2011年 アメリカ ペンシルベニア大学歯学部勤務
2014年 アメリカ ペンシルベニア大学歯学部 講師
2014年 アメリカ 国立衛生研究所 国立歯科・頭蓋顔面研究所 非常勤連邦職員
2015年 阿部歯科 副院長に就任

プラークの蓄積.jpg

口腔内には500から700種類もの細菌がいると言われており、唾液の中にも1mlあたり1億から10億もの細菌が含まれていると言われていますが、そのような口腔内の常在菌が細菌集団の塊であるプラークと呼ばれるバイオフィルムを形成して100種類もの細菌集団を形成すると口腔内の様々な疾患が発生する事になります。

疾患を引き起こすプラーク蓄積のはじまり

虫歯や歯周病といった細菌感染による口の中の様々な疾患は口の中をただよう細菌の歯面や口腔粘膜への付着から始まります。

口の中を奇麗に磨いた後に最初に付着がはじまるのが口腔内のレンサ球菌だとされています。口腔内レンサ球菌によって最初に形成されたプラークは厚みも薄く付着の弱い脆弱なプラークとして形成がされます。

その後、桿菌やらせん菌など様々な細菌が積み重なるようにして強固で厚みのあるプラークを形成していく事となります。

そして、そのプラークの細菌集団から産生される物質や免疫作用の結果、虫歯や歯周病という疾患が発生していく事となります。

虫歯や歯周病の部位で増殖した細菌はさらに歯の神経の中や歯周ポケットのさらに深い部位へと進むと歯の神経を侵して根管内でプラークを形成したり、歯周ポケット内での炎症の結果、歯を支える骨を溶かしてしまい歯がグラグラして脱落の原因となっていきます。

つまり、そのような強固なプラークの形成が起きる前の段階のレンサ球菌が付着している初期の段階で口腔内プラークの除去を確実にしていく事が大切となるのです。

(関連記事:歯周病になりにくくする事はできるの?

(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話

積み重なったプラークの中身

レンサ球菌から始まるプラークの蓄積が進んだ結果、プラークの中には様々な形や性質の細菌の他にも真菌や古細菌やウイルス類といったものが含まれる事もあります。

プラークの中には食べ物の残りカスの栄養源や体から出た浸出液や血液、細菌が代謝産生した物質など様々な物質が入り乱れて入っています。

このプラーク内で細菌同士が様々にクオラムセンシングといった細菌間のコミュニケーションや相互の関わりをしてお互いに快適な増殖環境を作っていく事となります。

さらにこのプラークは栄養素の保管庫としても機能しており、食べ物の残りカスなどで栄養が供給されなくなってもこのプラークに貯蔵された栄養を利用して細菌が飢餓に耐えるというやっかいな能力も持っているのです。

そのため、プラークの蓄積が起きた時にはまず付着したプラークを取り除いて過剰に増殖した細菌の巣を取り除くとともに細菌の栄養の貯蔵庫も取り除いていくという事が大切になるのです。

池下の歯医者の阿部歯科では虫歯の治療後の再発予防や歯周病の悪化に対応するため予防歯科に力を入れています。

(関連記事:阿部歯科で行っている予防歯科

 

参考文献:Dental biofilm infections - an update. Larsen T, Fiehn N. E. APMIS. 2017.

 

虫歯と食生活.jpg

砂糖を取ると虫歯になりやすいという事は良く聞くと思いますが、逆にどういう食べ物なら虫歯になりにくいのかという事は聞いた事があるでしょうか?

単純に甘くない食べ物がいいのか、果物はダメなのか、そういった事に関してご存知でしょうか?

デンプンは虫歯に影響する?しない?

デンプンは炭水化物に多く含まれており、糖であるグルコースが結合してできた高分子でお米や小麦、芋など日常で食べる様々な食べものに含まれています。

デンプンは唾液の中に存在するアミラーゼと呼ばれる酵素によって分解され糖に変わりますが、デンプンは虫歯に影響するのでしょうか?

ご飯やパンなどデンプンを含む食事は口腔内のpHを5.5以下に下げて口の中を酸性環境にしますが、砂糖(ブドウ糖)そのものや砂糖を含む食事と比べると口の中を酸性環境へと変える影響は少ないと言われます。

さらに、生のデンプンでは摂取する事による虫歯への影響はほとんどないとも考えられており、調理されたデンプンにおいても虫歯への影響の程度は砂糖の3分の1から半分ほどと考えられており、砂糖自体に比べるとその影響は小さくとどまります。

さらに、砂糖とは違い、デンプンの摂取量の違いそのものは虫歯への影響はそれほど多くないとも言われます。

そのため、砂糖を多く摂取しデンプンを少なく摂取する人と、砂糖を少なく摂取しデンプンを多く摂取する人では、圧倒的に砂糖を少なく摂取しデンプンを多く摂取する人の方が虫歯のリスクは下がります。

実際に、第二次世界大戦中に砂糖の供給量が減った日本では戦時中は虫歯の数が減ったものの、その後の食糧事情の回復と砂糖の摂取量の増加で急激に虫歯が増えたと言われています。

デンプン単体では虫歯に対する影響が小さいものの、デンプンに砂糖を加えた加工食品の場合は虫歯への影響が大きくなるため、あくまでも自然のデンプン単体を摂取する場合のみに虫歯になるリスクを下げる事ができると言えます。

さらに、全粒粉など生成していないデンプンを含む食品ではさらに虫歯のリスクが下がると言われていますが、これは咀嚼の際に出る唾液が増える事で口の中の食渣(食べ物の残り)を洗い流す効果や酸性環境になった口腔内環境を中性に戻す緩衝能が上がるためと考えられています。

逆に加工されたデンプンを含む食事では虫歯のリスクが未加工の食品よりもあがると考えられています。

つまり

・砂糖を含む食事の変わりにデンプンを含む食事に切り替えた場合は虫歯になるリスクが下がる。

・生のデンプン(お米や小麦など)は調理されたデンプン(ご飯やパンなど)よりも虫歯のリスクが低くなる。

・調理されたデンプンでも虫歯へのリスクは砂糖の3分の1から半分ほどと低くなる。

・加工されたデンプン、さらに砂糖を加えられたデンプンは虫歯のリスクがあがり、未加工のデンプンほど虫歯のリスクが下がる。

という事になります。

お米や小麦、じゃがいもで比較すると

お米、小麦、じゃがいもそのもの

ご飯、パン、ポテト

砂糖をつけたお餅、ケーキ、スイートポテト

の順に虫歯になるリスクが上がっていくという事になります。

(関連記事:1日にどれだけ甘い物を食べると虫歯になるのか

果物は虫歯になる?

甘い物は虫歯になる、という考えから果物は虫歯になるからダメなんじゃないのかと思うかもしれません。

果物を摂取する事で口腔内のpHは酸性に傾きます。さらに果物を高頻度に食べると(例えば1日8から17回以上)虫歯になるリスクが上がるとされますが、日常的な程度の果物の摂取では虫歯へのリスクは比較的低く、砂糖を摂取するよりもずっとそのリスクは下がるとされています。

さらに過度な頻度の果物の摂取でなければ、果物の摂取頻度によって虫歯のリスクが変わる事はそれほどないとも言われます。

しかし、ドライフルーツのような口の中に残りやすく乾燥によって果物の細胞が壊され糖が出ている食べ物に関しては虫歯のリスクが上がるとも言われます。

果物に関しては、砂糖よりもその影響は小さく、日常的な範囲で食べるのであれば砂糖を含む加工食品を摂取する代わりに砂糖を加えない果物を摂取する方が虫歯のリスク低減に効果を示すという事になります。

虫歯を防ぐ食べ物はあるの?

虫歯になりにくい食生活というのが分かる一方で、逆に虫歯を防ぐ食べ物というのはあるのでしょうか?

虫歯をふせぐかもしれない食べ物の一つにチーズがあります。

チーズに含まれるカルシウムが口腔内プラークのカルシウム濃度を上げて歯の再石灰化に寄与するとともに唾液の量を増やすという事でWHOが2003年にチーズは虫歯リスクを下げそうである(probable)と報告しています。

ただ、この表現は(probable)という、(恐らく)という表現にとどまっています。

他にも食物繊維の多い食べ物やナッツ類も虫歯予防に寄与すると言われていますが、これは食物繊維による口腔内の食べ物の食渣(残り)を取り除く効果よりも、噛む頻度(咀嚼量)の増加によって唾液の流出が増え、その結果虫歯予防に寄与しているのではないかと言われています。

(関連記事:キシリトールガムの効果は?

結果として、精製された砂糖を含む加工食品を減らした上でその分の食事を通常の穀物や野菜、果物の食事に置き換える事が虫歯になりにくい食生活になりえるという事が分かります。

千種区の歯医者の阿部歯科では予防歯科に力を入れていますので虫歯や歯周病が心配な方はぜひご相談ください。

参考文献:

1) Diet, Nutrition and the prevention of Chronic Diseases. (Technical Report Sciences 916). WHO. WHO/FAO Expert consultation. 2003.

2) Diet, nutrition and the prevention of dental diseases. Moynihan P. and Petersen P. E. Public Health Nutr. 2004.

3) Diet and Dental Caries: The Pivotal Role of Free Sugars Reemphasized. Sheiham A. and James W. P. J. Dent. Res. 2015.

4) Effects of Starch on Oral Health: Systematic Review to Inform WHO Guideline. Halvorsrud K., et al. J. Dent. Res. 2019.

シーラント.jpg

シーラントは子供の乳歯や永久歯に対しての虫歯予防として行われますが、その効果をごぞんじでしょうか。

シーラントとは

シーラントは小窩裂溝(歯の溝)の深い乳歯や萌出したて(生えたて)の永久歯に対して、虫歯になりにくくする事を目的として行われます。

子供の乳歯は永久歯に比べて小窩裂溝が深く、プラークや食渣がたまりやすく、萌出したての永久歯はう蝕感受性(虫歯のなりやすさ)が高く、虫歯になる前にあらかじめ小窩裂溝をふさぐ事でプラークがたまり虫歯になる事を予防します。

シーラントの考え方が紹介されたのは1960年代の事で非常に歴史が深く、最初の頃は小窩裂溝にレジンを詰めて紫外線を当てて固める方法でシーラントが使われていました。

その後、

第二世代の化学重合型のレジン

第三世代の可視光重合型のレジン

第四世代のフッ素徐放性のレジン

と進化を重ねて今日のシーラントに至ります。

1970年代にはグラスアイオノマーセメント製のシーラントが紹介されました。

グラスアイオノマーセメント製のシーラントはレジン製のシーラントに比べて防湿がシビアではなく、グラスアイオノマーセメントそのものからフッ素が除法されるという特徴がありました。

その他にもレジン強化型グラスアイオノマーセメント製のシーラントなども出て使われています。

どのシーラントにしても最大の目的は同様で、小窩裂溝(歯の溝)に対するプラークの付着をあらかじめ予防し、その部位に対して虫歯を起こす細菌に栄養源が供給されないように封鎖をするという事が最大の目的となります。

シーラントの効果は?

シーラントの効果は昔から頻繁に調べられていますが、様々な予防処置の効果と比べても非常に根拠の強いものだとされています。

つまり、シーラント処置には虫歯予防効果があるという事が強く言える事になります。

シーラントの予防効果は、シーラントをしなかった場合と比べておおよそ30-70%の虫歯予防効果があると言われています。

これは、シーラントの期間や年齢が様々なため、その予防効果の割合に開きが出ているのですが、いずれにせよ高い予防効果を見せている事になります。

シーラントをした後にシーラントが歯に取れずに残っている割合は1年後でおおよそ80%とされており、この事を考えるとシーラントをした後は定期的に再シーラントをする事が大切となる事を示しています。

しかし、シーラントの虫歯予防効果は完璧なものというわけではなく、あくまでも予防処置という事に注意しないといけません。

それを示すものの一つに、かつてシーラントの施された大臼歯に対して虫歯があるか調べるためにレントゲンを撮ると、17歳の時点で50%にむし歯が確認されたという結果もあります。

これは、永久にシーラントの封鎖性が維持するという訳ではない事からも分かる結果となります。

シーラントは子供の歯にするもの?

シーラントは多くが子供に対して行われますが、その理由は

小窩裂溝が深い乳歯にシーラントが施されるから

う蝕感受性の高い幼弱永久歯(生えたての歯)に対してシーラントが施されるから

虫歯に対しては基本的にシーラントは施されないから

という事が主な理由となります。

さらに、シーラントの効果は若年者ほどより効果が高いと言われるため、子供に対して積極的にシーラントが行われる事となるのです。

ただし、子供以外にシーラントをしてはダメというわけではなく、14歳から17歳の年齢の未成年にも行われる事もあります。

シーラントって虫歯になった歯にはしてはダメなの?

シーラントは虫歯予防のために行われるという特性上から基本的に虫歯になる前に予防処置として行われます。

しかし、シーラントの効果として、シーラントをした部位の細菌の数はシーラントをする前と比べておおよそ100分の1から1000分の1になると言われており、そこに存在する菌種も半分ほどまでに減少すると言われています。

これは、シーラントをする事でその部位が好気性環境(酸素の触れる環境)から嫌気性環境(酸素の触れない環境)に変化するという事と、その部位に食べ物などの栄養源が供給されなくなり細菌が飢餓状態になる事でこのような結果をもたらすと言われています。

そのため、理屈的には虫歯に対してシーラントを行い封鎖をすると虫歯の進行が抑えられるという事になりますが、現実としては

・シーラントの保持期間は1年後でおおよそ80%

・象牙質まで脱灰のすすんだ虫歯はハイドロキシアパタイト結晶を失いコラーゲン線維などの軟化象牙質が残るのみで再石灰化する事はない

・好ましい環境と栄養源を絶たれた細菌の一部は死滅するものの、一部は休眠状態となりひとたび環境と栄養が取り戻されたら再び活性化する

という事実を考えると、虫歯に対してはシーラントではなく、基本的には虫歯の除去と修復処置を行うのが原則となります。

ただし、ごく初期の虫歯に対してはシーラントを行い、う蝕感受性を低下させるという意味でシーラントを行う事も選択肢の一つとなりますが、あくまでもごく初期の虫歯が対象となります。

(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話

シーラントはどれくらいの期間でやり直せばいいの?

虫歯になっていない歯に対してシーラントを行ってからは基本的には定期健診でシーラントが脱落したかどうかを確認して、脱落していたらやり直すという事が大切となります。

シーラントは目に見える脱落の他に一部がはがれてその隙間から辺縁漏洩を起こす事もあります。

シーラントは長期で5年もつこともありますが、その際の予防効果は下がり続ける事となります。

シーラントが剥がれていない状態でも効果は50%まで低下する事もあり、単純にシーラントが剥がれていないかどうかという事だけが判断基準になるわけではありません。

この事はシーラントの施された歯が17歳の時点でも50%にむし歯が確認されたという話からも分かります。

シーラントが剥がれかけているか、子供のう蝕感受性はどうか、他の歯にむし歯が確認されないか、と言った事の他に定期的なレントゲン撮影による検診が大切となるのです。

今池から5分の歯医者の阿部歯科では子供だけでなく大人に対しての予防歯科にも力を入れていますのでお気軽にご相談ください。

(関連記事:治療後の虫歯予防と歯周病予防

参考文献:

1) Caries-preventive effect of fissure sealants: a systematic review. Mejàre I., et al. Acta Odontol. Scand. 2003.

2) The effectiveness of sealants in managing caries lesions. Griffin S. O., et al. J. Dent. Res. 2008.

3) The effect of dental sealants on bacteria levels in caries lesions: a review of the evidence. Oong E. M., et al. J. Am. Dent. Assoc. 2008..

4) Preventing dental caries through school-based sealant programs: updated recommendations and reviews of evidence. Gooch B. F., et al. J. Am. Dent. Assoc. 2009.

 

口腔内細菌叢の介入.jpg

現在では歯周病や虫歯になる原因が通常は口腔内の細菌が悪さをしていないSymbiosisと呼ばれる安定した共生状態からDysbiosisと呼ばれる悪性度の高い細菌の状態に変化(マイクロバイアルシフト)する事で起きているという事が分かっています。

しかし人によって口腔内清掃の状態や免疫の状態、あるいは口腔内細菌そのものがマイクロバイアルシフトを起こしやすくしているという点がある事も虫歯や歯周病が悪化しやすいかどうかという個人差を引き起こしています。

そしてこの根本的な原因である口腔内の細菌叢(細菌の分布)を意図的に変えられるのかという事が疑問として出てきます

記事の追記:2020年3月19日

そもそもの口腔内細菌叢(細菌の分布)を形作った原因

口腔内細菌叢は胎児期もしくは生まれてすぐにその分布を形成し始める事が分かっていますが最初の影響は母親から多くを受ける事が分かっています。

しかしその細菌の分布は時間を経るごとに変化し、時にはパートナーや配偶者からその影響を受けます。母親から最初の口腔内細菌叢を形成する影響を色濃く受けた後にどのようにその後の細菌叢を形成していくのかという研究も調べられています。

大きく分けるとその影響は遺伝的な影響と環境による影響があります。個人の持つ遺伝子によっては疾患だけではなく特定の細菌やウイルスに感染しやすかったりその症状が強く表れやすいという事が判明しています。

口腔内で細菌叢を形作る、特に共生細菌をどのように形成するかが遺伝的にどれほど影響があるのか調べようとして特定の遺伝的に近い集団群を比較した場合に遺伝子の影響によってわずかに口腔内細菌叢の形成に影響しえるものの、しかしその遺伝子の影響よりも家族内での環境の方がより口腔内の細菌叢の形成に強く影響を受けると報告されています。

とりわけ子供の時の初期から家庭内の環境で影響を受けて口腔内の細菌叢が形成されるとその後に引っ越しなどをして大きく生活環境を変えても数か月から数年以上はその口腔内の細菌叢が維持されると分かっています。

しかしこれは必ずしも永久的なものではなく、パートナーや配偶者からの歯周病に影響を起こす細菌の感染や口腔内衛生環境や免疫の変化によるマイクロバイアルシフトから見ても分かるように何かのきっかけで口腔内の細菌叢が変化する事が分かります。

(関連記事:子供の口腔内細菌はお母さんから受け継いだ?

(関連記事:歯周病は誰からうつる?

歯周病になりにくいより良い口腔内細菌叢を意図的に作れるのか?

生活環境から形成された口腔内細菌叢がその後に生活環境を変えても数か月から数年以上維持されると分かっているように一度形成された口腔内細菌叢はなかなか変化しにくい事が分かります。

これはマイクロバイアルシフトを起こして一度歯周病になった口腔内細菌叢を元の悪性度の低い共生状態の細菌叢に戻す事がなかなか難しい点からも分かります。

そのため、現在ではマイクロバイアルシフトを起こす前に予防処置によって共生状態にある口腔内細菌叢の状態を維持し続ける事を目的とした現在の予防歯科の考え方が非常に大切となってきます。

現在の共生状態にある口腔内細菌叢を維持する目的に加えて、より歯周病になりにくい口腔内細菌叢に変化させる目的で乳酸菌などを使ったプロバイオティクスと呼ばれる手法が試みられる事があります。腸内細菌叢では研究がより進んでいますが口腔内細菌叢に関してはまだまだ発展途上にあります。

数ある研究を確認すると歯周病に関してはプロバイオティクスによる乳酸菌などの意図的摂取で歯周病を予防できる可能性があると言われていますが確定的な根拠はまだ未解明な状態にとどまります。

では実際のところプロバイオティクスと呼ばれる特定の乳酸菌などの細菌を摂取する事によって意図的に口腔内細菌叢の状態をマイクロバイアルシフトを起こしにくいようにできるのでしょうか?

現在の強固に形成された口腔内細菌叢の中に乳酸菌などのいわゆる善玉の細菌を投入すると乳酸菌の加入によって口腔内細菌の多様性自体が増加すると分かっているものの口腔内細菌叢の分布の構成状態自体を根本的に変えるまではいかず、その影響も短期間に限定されると報告されています。

しかしながらプロバイオティクスの手法が疫学的には歯周病の予防に対応できる可能性があると言われる通り短期間ではなく長期にわたって摂取し続ければ口腔内細菌叢の多様性の影響で歯周病予防に貢献を果たす可能性もあります。

実際のところは口腔内細菌叢を意図的に変化させる事はそう簡単ではなく、一度形成された細菌叢は数年以上の長期にわたって維持し続けられるものの、特定の影響や環境の変化を長期間にわたって受け続けるとその口腔内細菌叢は変化しうるという事も判明しています。

そのため、実は歯周病になっていない人こそしっかり予防処置を受けて歯周病に罹患している人は元の共生状態にある口腔内細菌叢の状態に近づけるため口腔内衛生環境を整える事とマイクロバイアルシフトを起こした原因を根気強く取り除いていく事が大切となるのです

今池から5分の歯医者の阿部歯科ではこのようなマイクロバイアルシフトを起こしてしまった状態の口腔内に対する処置をはじめとして予防歯科に力を入れていますのでこのような治療法の今後の発展に目がはなせません。

(関連記事:どうして歯周病になるのか

(関連記事:乳酸菌による歯周病治療の可能性(海外論文紹介)

 

参考文献:

1) The Human Salivary Microbiome Is Shaped by Shared Environment Rather than Genetics: Evidence from a Large Family of Closely Related Individuals. L. Shaw, et al. MBio. 2017

2) The short-term impact of probiotic consumption on the oral cavity microbiome. E. Dassi, et al. Sci. Rep. 2018

 

マウスウォッシュの使い方.jpg

歯を磨いた後に歯肉炎や歯周病やまたは虫歯予防のために消毒作用のある洗口液(マウスウォッシュ)を使用して口の中の衛生環境に気を配る人もいると思いますがいわゆるマウスウォッシュですがどれくらいの頻度で使うと効果的という事はご存知でしょうか?

記事の追記:2020年4月23日

洗口液(マウスウォッシュ)は1日1回以下を目安に

マウスウォッシュをどれくらいの頻度で使えばいいのかという話題は実はかなり昔から議論がされています。

ここ10年で歯周病や虫歯が口腔内細菌叢の変化によるマイクロバイアルシフト(Microbial Shift)によって起こる事が判明してきている事と合わせて口腔内細菌全てを対象にして消毒をする必要があるわけではないという点にも注目が必要になっています。

消毒作用のあるマウスウォッシュは悪性度の高い口腔内細菌に対応する事ができるものの同時に無害な共生細菌にも影響を及ぼしてしまう可能性もあるという事が過剰にマウスウォッシュを使いすぎる事に気を配らないといけないという結果をもたらしています。

そして消毒作用のあるマウスウォッシュでは同時に過剰な使用によって口の中の粘膜を傷つけてしまう可能性があるので口内炎がある場合や頻度にも気をくばる事が大切になるのです。

その目安が現在ではおおよそ1日1回以下、2日に1回でもいいと言われています。1日3回など頻回な使用ではマウスウォッシュの効き目や濃度にもよりますが使用頻度が多い可能性もあり粘膜を痛めてしまう事を考えると基本は歯磨きやデンタルフロスの使用を中心として補助的に1日1回以下を目安にマウスウォッシュを使う事がいいかもしれません。

(関連記事:どうして歯周病になるのか

(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話

マウスウォッシュの効き目って?

マウスウォッシュの効き目に関しては中に含まれる成分や濃度によっても違いますが、メジャーなものではアルコールの成分があります。

マウスウォッシュは口腔内のプラークへの作用やそれに伴う歯肉炎予防の作用が報告されていますが、アルコールの成分が入っているかどうかの効果はまだまだはっきりしていない部分もあります。

マウスウォッシュに含まれるアルコール成分の濃度は多いものでは26%ほどのものもありますが、アルコールの成分が入っているかどうかは歯肉炎予防に寄与する可能性があるもののその効果はアルコールの成分が入っているかどうかはそこまで気にするものではないという事も言われたりします。

マウスウォッシュの成分は色々な製品によって様々な薬効成分が入っていますが実際にはどのような成分が入っているか以上にやはり適切に使っているか、適切な頻度で使っているかという事が大切になってくるのです。

さらに人によって口腔内細菌叢は様々なので自分の口の中の状況にあったマウスウォッシュを使うという事も大切になってきます。

千種区にある歯医者の阿部歯科では予防歯科に力を入れているのでマウスウォッシュのように補助的に使える道具も様々な患者さんがそれぞれにあった適切な使い方ができるようにお話をしております。

(関連記事:口臭予防にも使えるマウスウォッシュ(洗口液)の効果がよく効く使い方は?

 

参考文献:

1) Are alcohol containing mouthwashes safe? C. W. Werner, R. A. Seymour. Br. Dent. J. 2009.

 

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