虫歯が大きくなってしまったり親知らずが腫れたりして歯を抜かなくなってしまった場合に歯の状態によっては抜歯の難易度が変わります。
そこで今回は抜歯をする際に抜歯を難しくする要素についてお話をしようと思います。基礎疾患によっても抜歯に関する判断は変わるのですが今回は抜歯の手技的な難易度に焦点を絞ってお話をします。
抜歯に関する専門ホームページ「阿部歯科 親知らずと抜歯専門サイト」も合わせてご覧いただければ抜歯に関わる様々な情報をご確認できます。
記事の追記:2020年5月25日
抜歯をする前に
歯自体を見る前にその方自身の情報で抜歯の難易度がある程度分かる部分があります。それが性別と年齢です。
一般的に女性に比べて男性の方が骨が硬く抜歯の際も女性は骨がたわんで歯が抜けてくるものの男性では骨にがっちり歯が囲われているといったような状況があります。
そのため男性の方が女性に比べてやや抜歯をしにくくなる場合があります。年齢では年齢が上がってくると骨がガッチリしてくるのでこの要素も抜歯を難しくする場合があります。骨が固い場合はその後の抜歯窩の治癒でドライソケットになるといった治癒が遅れる要素となる事もあります
(関連記事:抜歯後の消毒、抜歯後感染やドライソケット)。
歯自体の情報
抜歯をする前の患者さん自身の情報を確認したら今度は歯自体の情報を確認する必要があります。歯自体の情報は目で見て分かる情報とレントゲンから分かる情報の2種類があります。
目で見て分かる情報で抜歯が難しくなる要素は、歯が虫歯で大きくなくなっており力をかけると折れそう、すでに歯の頭の部分がなくなっており根っこだけの状態になっている、大きなヒビが入っているなどといった状態です。
いずれも抜歯の際に力をかけることが難しいため抜歯が難しくなる要素となっています。
虫歯が大きくボロボロになっていると抜歯をするために力をかけた際にそのままボロボロと歯が折れてきてしまうかもしれないからです。
大きなヒビが入っている場合も力をかける事でそのままさらにバキバキと割れてしまう事があります。歯が根っこだけの状態になっている場合では歯を抜くための道具を引っかける部位が限定的になり抜歯が難しくなる事があります。
レントゲンから分かる情報
レントゲンで見るのは主に骨の密度、歯と骨の密接さ、歯の根の方向や形などといった点です。骨の密度は密度が高ければ高いほど歯が骨にしっかり囲まれており、歯と骨の密接さは歯が動いて揺れる余裕がどれだけあるかを予測できます。
骨の密度が高く歯と骨の密接さがあるほどガッチリとしっかり歯が骨に掴まれているので抜歯が難しくなります。歯の根の方向や形は骨の中に埋まっている根の部分が骨に引っかかるような方向や形をしていないかどうかを判断します。
骨密度の他にも下顎の親知らずを抜歯する際には下歯槽管の位置を確認する事も大切になります。時には下顎の親知らずの根の先端が下歯槽管と交通している事もあり、そのような時にはコロネクトミーといった手技を取る事もあります。
このように抜歯の際は性別や年齢から始まり、歯の状態、レントゲンから得られる骨の状態や歯自体の形といった情報を総合的に判断して抜歯の難易度を予測していきます。
(関連記事:親知らずを抜くときにあえて歯の根を残す事がある)
執筆:池下の歯医者 阿部歯科