こんにちは、千種区の歯医者の阿部歯科です。
口の中の病気には虫歯ではないのに歯が冷たいものにしみたり歯磨きの際に痛みを感じるものがあります。知覚過敏と呼ばれる状態では歯が刺激を感じやすくなりこのような状態が起きる事があります。今回はその中でも歯の横の面が大きく磨り減ったような状態になっている楔状欠損という状態についてお話をしようと思います。
楔状欠損とは
歯の横の面が大きくくぼみができたように磨り減っている状態です。この状態では冷たいものや熱いもの、歯磨きの際に刺激を感じる場合もありますが感じない場合もあります。組織学的には歯の構造の内の象牙質が大きく磨り減った状態になっています。象牙質がむき出しになっているため象牙質へと伸びる象牙細管内の水分が刺激の影響を受けやすく痛みを感じる場合があります。しかしながら大きく象牙質が磨り減っている状態でも歯髄側に新たな象牙質が反応性にできてきたり、表面の象牙細管が閉鎖されたりなどで刺激に対して痛みを感じにくくなっていく場合もあります。
なぜ楔状欠損ができるのか
組織学的な状態としては象牙質が磨り減っているのですがその始まりは象牙質の上にある硬い組織のエナメルの一部が剥がれて取れたり歯周病によって歯茎が下がり歯の根の部分が露出してきたりといったような状態から始まります。象牙質は比較的柔らかい組織なので象牙質が露出した状態で歯ブラシをゴシゴシしすぎると象牙質がすり減りやすくなってしまう可能性があります。
楔状欠損は治さないといけないのか?
楔状欠損を治すかどうかの判断はレビュー論文においてもたびたび基準が出されています。最初に大切となるのは楔状欠損という状態はう蝕とは別の状態だという事です。虫歯ができている場合は楔状欠損ではなく通常通りのう蝕として扱われますが楔状欠損の発生機構通りにできた状態がでは区別をして考えます。冷たいものにしみるなど痛みの発生機序は虫歯と似たようなところがありますが治療に対する考え方に差が出てきます。
レビュー論文でよく確認される楔状欠損の取り扱いは、痛みがあれば知覚過敏処置やう蝕の処置に準じて治療を行う必要があるものの、痛みなどの自覚症状がない場合は処置をせずに経過観察する事も選択肢に入るという点にう蝕との処置の取り扱いの差が出てきます。ただ、自覚症状がなくても見た目の審美的に気になる場合は磨り減った部分を修復します。ただし、処置をせずに経過観察とする場合はその後さらに楔状欠損が進まないように歯磨き指導や修復以外の処置などを行い楔状欠損が進まずに痛みが出てこない事を確認していく必要があります。