歯が大きな虫歯になってしまった場合に歯の神経を抜いて治療をする必要が出てくる場合がありますが、その場合は歯の神経を根元まで取る必要があります。では、目に見えない歯の根元をどうやって明らかにするのか、という内容について今回はお話をします。
歯の根の先は電気抵抗値で調べる
実は、実際に根の先端を目で見て位置を確認する事は出来ないので電気的な抵抗値を利用して位置を確定しています。歯の神経は歯の根の先端にある根尖孔に通じていますが、歯内治療ではこの根尖孔までの神経を取り除きガッタパーチャなどの根管充填剤で緊密に封鎖する必要があります。歯の根の先端には歯根膜があり、この歯根膜と口腔内の間の電気抵抗値が人種や性別に関わらず6.5kΩの値を示すという特性があります。この理論をもとに、歯の根の先端に近づくほど電気抵抗値が変化するという特性を利用して根の先端の位置を決定する最初の製品が発売されたのは1969年の事らしいです(写真の製品)。世界で最初に製品化されたこの製品が阿部歯科にも残されていましたが恐らく祖父が使っていたものだと思います。今ではこの電気抵抗値で歯の根の先端を決定する根管長測定器と呼ばれる機械は今では手のひらに収まるくらい小さなものまで出ていますが最初に発売されたものはこれほど重かったのかとびっくりしました。
根管長測定器がなかった頃は
まだ根管長測定器がなかった頃は手の感覚やレントゲンを頼りに歯の根の先端の位置を決定していたそうです。ただ、レントゲンに写る歯の根の先端と実際に歯の神経の出口は必ずしも一致せずレントゲンに写る歯の根の先端よりも2mmほどズレがある事もしばしばです。そのため、かつて手の感覚やレントゲンを頼りに行っていた歯の神経の治療も電気抵抗値による計測が行われるようになってからは正確性がずっと上がったそうです。
ただ、根管長測定器を使用する今現在でも根尖孔から神経を取る器具である手用ファイルが出る感覚は感じる事ができるため手の感覚というのも臨床現場では今でも根尖孔の位置決定の際の参考にする場合もあります。
最新の根管長測定器
1969年に始めて発売された根管長測定器も今では大きさがぐっと小さくなるとともに電気抵抗値の測定方法もかなり進歩して安定性が増してきました。かつては歯の中の水分の残り方によって計測が安定し辛く、根尖孔の位置を決定する際には根管内を乾燥する必要がありましたが、今では電気抵抗値の測定の周波数を複数使う事で根管内の水分など状況に左右されにくく安定性した結果が出せる製品が多く発売されるようになりました。歯の神経の治療の際に口にクリップのようなものをひっかけた事がある方もいるかもしれませんが、あれは電気抵抗値を測って歯の根の先端を探さそうとしているためにやっているのです。歯の根の先端の位置をしっかり見つけて根の先端まで感染した神経を取る事が大切になってくるのでこの電気抵抗値の測定を利用した根管長測定器は歯の神経の治療には欠かせない機械となっています。
根の先端の位置決定には2つの基準がある
歯の根の先端、つまり根尖孔の位置には解剖学的根尖孔と生理学的根尖孔という2つの決定基準があります。解剖学的根尖孔は、名前が示すように歯の根の先端を意味しますが、生理学的根尖孔は解剖学的根尖孔のおおよそ0.5mmから1mmほど歯冠に位置します。この生理学的根尖孔は歯の神経が根尖から歯根膜へと通じる際に最も空間の幅が狭くなる再狭窄部位とよばれる場所に位置します。通常の歯内治療では外部吸収によって根尖が吸収・破壊されていない場合この根尖の再狭窄部位(生理学的根尖孔)までの神経を取り除き根管充填剤を充填します。かつての根管長測定器では生理学的根尖孔を決定する事は難しく、そのため生理学的根尖孔の位置決定の際には解剖学的根尖孔を決定しそこから0.5mmから1mm引いた位置を生理学的根尖孔として決定していました。しかし現代の第三世代と呼ばれる根管長測定器では機械の内部的処理によって生理学的根尖孔を視認できるようになりました。このような新しい世代の根管長測定器によって歯ない治療の精度は現在ではさらに高くなってきています。池下にある歯医者の阿部歯科でも最新の第三世代の根管長測定器を使用してより精度の高い歯内治療に取り組んでいます。
世界で最初に発売された根管長測定器
下の写真の根管長測定器が世界で1969年に世界で最初に発売された根管長測定器(Root Canal Meter)です。阿部歯科でかつて使われていたもので祖父の時代に活躍していた機材ですが今では歴史的な資料としては価値がありますが、使用という点では現役を完全に引退しています。
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