千種区池下の歯医者 阿部歯科 副院長の阿部利晴によるブログで、アメリカの歯科医療についての事情等を載せています。

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当院副院長からのお知らせ、出来事のご紹介です。

宇宙空間の歯科治療.jpg

阿部歯科では千種区や千種区外の患者さんが歯が痛くなっても困らず受診できるように日曜も診療しており通常の歯医者さんが休診となる木曜日も診療をしておりますが、そのような日に来られる患者さんが「やっていている歯医者さんがあって良かった」と安堵されたり、平日に来られる患者さんも「日曜もやっていて安心できる」とお声をいただいています。日曜日もやっている歯医者さんというと代理の勤務の先生に当たるのではと心配される患者さんもいるのですが阿部歯科の場合では院長と副院長が共に戦前の80年前から続く現在の阿部歯科で歯科治療を行っている祖父や父親の後を引き継いで共に治療をあたっているという体制を取っているため、院長と副院長ともに非常に責任をもって治療を行っており患者さんがいつ阿部歯科を訪れても安心できるという強みがあります(関連記事:阿部歯科ができて80年が過ぎました)。

そのような困った時でも地域の患者さんが安心して歯科受診できるように体制を整えている阿部歯科ですが世界中の職業によっては歯科治療を受けるのが非常に困難な職業というのもあります。非常に歯科治療を受ける事が困難な職業の一つに宇宙飛行士があります。もちろん宇宙空間には歯科医院はありませんし、歯が痛くなったので気軽に帰る事もできません。そのような最も歯科治療を受ける事が困難な宇宙空間での歯科事情をお話しようと思います。

宇宙空間でも起きる歯科トラブル

宇宙での歯科トラブルの報告は非常に珍しいもののそれでもひとたび歯の問題が起きるとその対応の難しさから歯科トラブルへの対応はあらかじめ非常に厳密に予防や対応が練られているようです。かつてロケットの打ち上げの際に打ち上げの振動で歯の詰め物や被せ物が取れた際に応急で詰め物をしたり歯の被せ物を付けたり、虫歯が見つかり応急的に処置がされたりといった事が報告されており、1978年には96日間の宇宙フライトミッションで残り2週間の段階で激しい歯の痛みが発生したものの痛み止めで耐え続けたという報告もあります

微小重力下での歯や口の中の影響の研究は非常に少なく、微小重力下では歯周病、虫歯、歯の痛みや顎の骨折の可能性、唾石の発生、口腔癌のリスクが上がるという研究が出ていますが研究自体の規模がまだまだ小さく確実な答えが出ていない状態です。歯周病や虫歯に関しても環境による口腔内衛生環境の維持の難しさや飛行機に乗った時にも起きる圧力変化で歯が痛みを感じているかもしれないといったバイアスを排除しきれないからです。特に歯の神経は痛みしか感じる機能がないため様々な環境の変化による影響をどのように受けているかが分からないためそのような環境下での歯や口腔内への影響がはっきりと解明されるのはまだまだ先だと思います(関連記事:歯の神経を取る時って痛いの?)。

宇宙空間で決して歯科トラブルは軽視されていない

歯のトラブルは報告こそ少ないものの実際に歯の痛みや歯茎の腫れといった問題が発生すると治療の対応の面や計画への影響から古くからどのように対応していくのかといった事が考えられていたようです。今では宇宙空間ではトレーニングを受けた乗組員が用意された歯科治療キットを利用して応急処置をするマニュアルが用意されているそうですが、それでも宇宙空間での歯科トラブルを避けるためにNASAでは打ち上げ6ケ月前に検診を受けその際に歯科治療が望まれる場合は3ケ月前までに治療を終わらせて可能な限り歯が痛くなるなどのトラブルを避ける試みがされているようです。そして計画中の万が一の歯科トラブルに対応するために医療担当者が発射前の打ち合わせで歯科トラブルの際の段取りと対応を用意するというように入念に準備がされているそうです。

最初の頃は歯科治療キットがなかった

有人火星探査計画では18ケ月から24ケ月も計画にかかると言われておりその様な長期間の歯科治療トラブルへの対応の研究がすすめられているそうですが、初期の頃には歯科治療キットそのものが存在しなかったそうです。

最初に宇宙空間での歯科の対応ガイドラインができたのが1957年の事で1960年から宇宙飛行士の歯科トラブル対応訓練が始まりました。1961年から1972年には月への有人宇宙飛行計画が始まりましたがアポロ17号の18日の最長計画を含めて歯科の問題は起きませんでした。1973年から始まった最初の地球周回の宇宙ステーションを作るスカイラブ計画では初めて歯科治療キットが準備されて乗組員の口腔内図解付きで診断と対応マニュアルが用意されて実際に歯科検診も行われました。1980年から構想の始まった国際宇宙ステーション計画では歯科の緊急トラブルに対する対応マニュアルが用意されますます歯のトラブルへの対応が進んでいきました。

このようにどんな環境でも急に歯が痛くなったらどうしようという心配がつきないのであらかじめ定期的に検診と予防処置を受けていざという時に備える事が大切なのですがやはり人によっては歯科医院に行くのをためらってしまうと思います。そのため阿部歯科では患者さんがより受診しやすい環境を整えると共に痛みの少ない治療を実践して多くの患者さんが不安なく歯科医院を受診できるようになれるように努めています(関連記事:痛くない歯科治療をするための取り組み)。

参考文献:

1) The history and importance of aeronautic dentistry. B. Rai, J. Kaur. J. Oral Sci. 2011.

2) Review of Spaceflight Dental Emergencies. A. Menon. NASA report. 2012.

3) Dental Treatment during a human Mars Mission with remote support and advanced technology. S. Häuplik-Meusburger, H. Meusburger, U. Lotzmann. 46th International Conference on Environmental Systems. 2016.

 

マイクロバイアルシフト.jpg

歯周病は成人の80%もの人が罹患していると言われる世界で最も有病者の多い疾患ですがその原因はかつて考えられていた特定の細菌による感染の結果から口腔内の細菌叢の変化とそれに伴う免疫反応の過剰反応による結果おきるというようにここ10年で考え方が大きく変わってきました(関連記事:歯周病に関わる免疫細胞)。

かつて言われていた歯周病の原因菌

歯周病の原因菌としてはポロフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、 トレポネーマ・デンディコラ(Treponema denticola)、 タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)という Red complexと総称される細菌群が引き起こしていると考えられていましたが現在ではこれらの細菌がいなくても歯周病になりえ、さらにこれらの細菌が口腔内から分離されても歯周病になっていない人もいるという事が分かっています(関連記事:歯周病は誰からうつる?)。元々Red complexとは歯周病患者から細菌を分離してその歯周病の程度と分離頻度の多さにより分類されたもので、その中でもRed complexと呼ばれる赤色でまとめられた菌群が疫学的に最も歯周病に大きな影響を及ぼすという事で歯周病の原因菌として研究がすすめられました(関連記事:歯周病に関連する細菌)。

特定の細菌ではなく細菌集団全体の悪性度の変化により起きる歯周病

ある特定の細菌から歯周病が起きていると考えられていた10年前とは変わり今ではマイクロバイアルシフト(Microbial Shift)と呼ばれる細菌集団全体の悪性度の変化により免疫が過剰反応して歯周病が起きると考えられるように変化してきました。そして、Red complexの細菌群は歯周病を悪化させる強い要因になりえるもののそれ自体がいなくても歯周病になりえるため、特定の細菌による歯周病の発症という考え方から細菌集団全体の悪性度の変化、Symbiosisと呼ばれる共生状態にある安定した細菌集団の状態からDysbiosisと呼ばれる安定性が失われて悪性度が増した細菌集団の状態へと変化する事でその結果免疫が過剰反応し歯周病になると考えられるようになってきました。マイクロバイアルシフトという考え方は虫歯の原因論に関しても大きな影響を及ぼしており、虫歯の原因に関してもここ10年ほどで考え方ガラリと変わりました(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話)。

細菌集団の悪性度の変化とは

共生状態にある安定した悪性度の低い細菌集団の状態から悪性度の高いDysbiosisの状態へとマイクロバイアルシフトする事で細菌集団内では様々な変化が起きます。細菌同士の相互作用により強いプラークを作り出すと共にお互いの代謝産物を相互に活用し、混合感染によるお互いの細菌の遺伝子発現の変化とタンパク質発現、それに対する過剰な免疫反応と炎症に伴う出血による細菌への栄養供給、それらの結果起きる歯止めの効かない細菌の増殖と炎症反応という悪循環を引き起こす事となります。現在ではそのような悪循環の結果が歯周病を引き起こす原因だと考えられるように変わってきたのです。千種区にある歯医者の阿部歯科ではこのような歯周病の悪循環に対応するために顕微鏡や特別な器具を用いた処置によって治療を行っています(関連記事:阿部歯科では健康保険内、別途費用なしで特別な歯周病検査・処置を行っています)。

参考文献:

1) Periodontal microbial ecology. S. S. Socransky, A. D. Haffajee. Periodontol 2000. 2005.

2) Microbial Shift and Periodontitis. A. B. Berezow, R. P. Darveau. Periodontol 2000. 2011.

 

 

 

 

 

アスリートと歯科.jpg

今池から5分の歯医者の阿部歯科には様々な職業の方が来院されますが、様々な職業の中で仕事内容によっては特定の疾患にかかりやすくなる職業があります。職業病と呼ばれる疾患なのですが、歯科領域においても酸を扱う職業で酸の影響で歯が溶けてしまい虫歯のようになる酸食症という疾患がありますが、職業病と呼ばれなくとも特定の仕事を生業にしている人が虫歯や歯周病などになりやすい事があります。その中でもスポーツを仕事にしている人、特にプロのアスリートは虫歯や歯肉炎・歯周病リスクが高まるという事が昔からしばしば言われる事をご存知でしょうか?

記事の追記:2019年10月19日

通常よりも多く歯を磨いているのに

オリンピックゲームのフィールド、トラック競技やスイミングなど、さらにはプロスポーツ選手など多くの競技においてトップアスリートは一般的な人に比べて1日に2回以上歯を磨きフロスの使用率が高いにも関わらず約半数が虫歯を持っており、酸食症も約半数ほどが疾患を抱えていると言われています(関連記事:デンタルフロスの効果的な使い方と頻度)。さらには歯肉炎・歯周病の罹患率も90%ほどに達していると言われます。このような虫歯や歯肉炎・歯周病による痛みがスポーツのパフォーマンスにも影響を及ぼしているという報告もたびたび上がっており、トップアスリートの約3分の1が何らかの歯科疾患により練習や試合のパフォーマンスに影響を訴えていると言われます。

アスリートの虫歯は職業病?

私も大学の時は陸上部に所属していたのですが、夏の暑い中での練習や試合中には電解質や糖質補給としてスポーツドリンクやエナジーバーを摂取していました。これらの電解質や糖質の補給は汗を多くかき激しく体を使うスポーツにはとても大切なものと言えるもので汗によって失われた体内の電解質の補給や即効性のエネルギー補給に糖質は欠かせないものとも言えます。トップアスリートにおいては約90%がスポーツドリングを利用し、エナジージェルも約70%、エナジーバーでは約60%のアスリートが何らかの形で利用していると言われています。これらを摂取して栄養補給する事が練習や試合のパフォーマンスにも大きく関わると同時に口腔内が酸性環境になってしまうという難しい点もあります。

そのため、職業の特性上どうしても口腔内環境が酸性になりやすいという事がアスリートにおいて一般的な人よりも歯を磨く傾向が高いのに虫歯や歯肉炎・歯周病になりやすいという傾向を引き起こしてしまっています(関連記事:正しい歯磨きの回数や時間は?)。激しいスポーツをする上で電解質や糖質の摂取はとても大切な事なので虫歯はアスリートの職業病とも言えるのかもしれません(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話)。さらにトップアスリートにおいて半数ほどが1年以内に歯科医にかかっており、歯磨きの頻度と合わせてむしろ一般的な人よりも口腔内衛生環境に関心を持っていると考えられるものの仕事の特性上歯が影響を受けやすくなっているのです。そのため、アスリートに対する口腔内衛生環境への対応が世界的に現在も模索されています。職業によっては様々な歯科事情が多くありますのでそれぞれの職業の特性に合わせた歯科治療への対応がとても大切になるのです(関連記事:宇宙空間での歯科事情)。

参考文献

1) Oral health and impact on performance of athletes participating in the London 2012 Olympic Games: a cross-sectional study. I. Needleman, et al. Br. J. Sports. Med. 2013.

2) Oral health of elite athletes and association with performance: a systematic review. P. Ashley, et al. Br. J. Sports. Med. 2015.

3) Oral health and performance impacts in elite and professional athletes. J. Gallagher, et al. Community Dent. Oral Epidemiol. 2018.

4) Oral health-related behaviours reported by elite and professional athletes. J. Gallagher, et al. Br. Dent. J. 2019

 

 

足踏みドリル.jpg

歯医者さんで歯を削る時に主に使用されるドリルは圧縮空気を利用したエアタービンと呼ばれるものとマイクロモーターという電動のモーターを利用したものがありますがそれぞれに特徴の違いがあります(関連記事:歯医者さんのドリル)。それぞれのドリルができた背景も違うのですが、今回はマイクロモーターによる切削器具についてお話をしようと思います。

世界発のモーター式歯科用切削器具はゼンマイ式だった

1850年頃はまだ歯科治療用の切削器具が発達しておらず手動でドリルの刃を回して虫歯を削るという非常に手間のかかる治療が行われていましたが1864年になるとより効率よく虫歯を削れるようにイギリス人歯科医師のGeorge Fellows Harringtonによるゼンマイ式の歯科用切削器具が発明されました。これがモーターを使った世界最初のドリルと言われています。この世界初のモーター式歯科用切削器具が出た同時期の1868年にもう一つの主なドリルであるエアータービンの始まりとなるドリルも発明されています(関連記事:昔の歯医者さんはどんなドリルを使っていた?(エアータービン編))。

ゼンマイ式から足踏み式のモーターへ

ゼンマイを使う事で虫歯の切削効率を上げたHarringtonのゼンマイ式ドリルでしたがこの世界初のモーター式切削器具もしばらくすると1871年にJames Beall Morrisonによって発明された足踏み式モーターによるドリルに取って代わられる事となります。この足踏み式のモーターによるドリルは当時としてはドリルの回転数も700 rpm(1分間に700回転)と高く虫歯の切削効率が非常に優れていたため世界中に広まる事となりそれから70年以上たった1940年代頃まで使われ続けました。池下の歯医者の阿部歯科の初代院長の祖父の阿部鉎弌も歯学部で教育を受けていた際にこの足踏み式のドリルを使っていたのかもしれません(関連記事:阿部歯科ができて80年が過ぎました)。

モーターは足踏み式から電動へ

世界最初の電動式歯科用切削器具は1875年にアメリカのGeorge F. Greenの発明したドリルなのですが、このGeorge F. Greenはエアタービンの基となるドリルも発明しておりエアタービンとマイクロモーターによる切削器具さらにはエアモーターのもととなるものまでも発明しています。電気モーターの歯科用切削器具への応用が模索された事によって、より効率的に虫歯を削れるように世界中で使われるようになったMorriosnの足踏み式モーターに電動モーターを接続したり電動モーターそのものを歯科用切削器具に応用する試みが始まり、電気モーターによる歯科用切削器具は1951年には10,000 rpmを達成する事ができました。

電動式歯科用ドリルはより小型に

元々は電動式モーターを置いてそこから動力をドリルに伝えていましたが1960年代に入るとドリル自体に直接接続する小型のモーターが開発されるようになりました。これが現代で使われるマイクロモーターによる歯科用切削器具の先駆けとなるのですが当時のモーターの回転数は20,000 rpmまで上昇しており、ドリルのギアの組み合わせを変える事で40,000 rpmまで回転数を上げる事ができました。しかし当時はすでに圧縮空気を利用したえたータービンであるBorden Airotorが発明されておりその回転数は200,000 rpmから300,000 rpm(1分間に20万から30万回転)とマイクロモーターによるドリルとは回転数の桁が違っていました。そして、可能な限り痛くない治療をするためには振動が少なく高速で回転する切削器具が必要不可欠だったのです。

しかしモーターによるドリルの最大の利点はその削る力(トルク)にあったため、その後も開発は継続され1970年代に入ると40,000 rpmのマイクロモーターと3倍のギア比のドリルを組み合わせて120,000 rpmの回転速度まで上がりエアータービンに迫る虫歯の切削効率を得る事ができるようになりました。そして現在虫歯を削る主役のドリルであるエアータービンとマイクロモーターによる回転速度はエアータービンでおおよそ1分間に40万回転、マイクロモーターによるドリルはマイクロモーターと5倍速ギアによるドリルの組み合わせでおおよそ1分間に20万回転と共に非常に高速回転でドリルを回す事ができるようになりそれによってより患者さんにとって不快感や痛みを軽減できる治療ができるようになったのです。

参考文献:

1) The development of the dental high-speed air turbine handpiece. Part 1. J. E. Dyson, B. W. Darvell. Aust. Dent. J. 1993.

2) The development of the dental high-speed air turbine handpiece. Part 2. J. E. Dyson, B. W. Darvell. Aust. Dent. J. 1993.

3) The dental handpiece - a history of its development. R. R. Stephens. Aust. Dent. J. 1986.

 

 

最初の歯医者さんのドリル.jpg

歯医者さんで虫歯を削る時にドリルを使いますが、このドリルは患者さんにとって苦痛が少なく、可能な限り痛くないように治療できるように進化をしてきました。切削器具であるドリルの高回転数の進化は患者さんの不快感の軽減と痛くない治療を目指すために必須のものでした。歯を削る際のドリルは現在最もよく使われるもので圧縮空気を利用したエアータービンとマイクロモーターによる駆動力を利用した切削器具に大きく分かれます(関連記事:歯医者さんのドリル)。エアータービンはトルクが小さいものの高速回転をして、マイクロモーターによる切削器具はトルクが大きく回転数が低いという特徴があります(関連記事:昔の歯医者さんはどんなドリルを使っていた?(モーター編))。今では大きく2種類に分かれた歯医者のドリルですが、今回は圧縮空気を利用したエアータービンのハンドピースに注目してエアータービンハンドピースは一体いつ頃から使われているのかというお話をしようと思います。

記事の追記:2019年9月27日

歯医者さんのドリルっていつ頃からあるの?

今では当然に使われる歯医者さんのドリルですが、書物に詳細が残る最初のドリルの原型は1728年に紹介された弓を使った弓ぎり式のドリルだと言われています。その後ゼンマイを利用したドリルや手で直接回すドリルが作られたものの、その回転数は300 rpm(1分間に300回転)程度のものでした。現在のエアータービンハンドピースによる切削回転がおおよそ400,000 rpm(1分間に40万回転)という事を考えるとその違いがよく分かります。しかし当時はまだ工業的に生産される主要な切削器具はありませんでした。

近代的な歯医者さんのドリルの始まり

近代的なエアータービンハンドピースの原型となるものができたのは1868年にアメリカでGeorge F. Greenが発表した空気を利用してギアを回転させてドリルを回すという歯科治療器具でした。この治療器具は現在の回転切削器具の基、エアータービンハンドピースの基、エアモーターの基となる器具と認識されています。この器具は口やふいごから供給された空気を器具の中に吹き込んで空気圧でギアを回転させるという車のロータリーエンジンのような構造をしており現在の回転切削器具とは大きく構造が違っていましたが世界で工業的に生産された最初の歯科治療用の回転切削器具だと言われています。

この器具はまだ現在のエアータービンハンドピースの構造とは大きく異なり、本当の意味での空気圧によって羽根車を回すタービンを用いた回転切削器具が出たのは1874年の事です。しかしこの器具はタービンを歯科医師の手元の部分に設置しており、タービンをドリルの先端のヘッド部分に設置する今現在のエアータービンハンドピースとは構造が大きく違っていました。この同時期に開発された歯科治療用回転切削器具が電気モーターを使ったものや足踏み式による駆動力を利用したもので当時の回転速度はまだ700 rpmから1000 rpmでした。

現在のエアータービンハンドピースの原型となったもの

現在のエアータービンハンドピースのようにヘッド部分にタービンを設置した最初の歯科治療用回転切削器具はニュージーランドのFrancis R. Callaghan から1952年に発表されたものでした。この器具の回転速度は60,000 rpmでかなりの回転速度をほこったものの使用の際の音が非常にうるさく使用の後にあまりの高速回転のためタービンがオーバーヒートを起こして回転軸をささえるボールベアリングも壊れてしまうものだったようで実際に市場に売り出される事はありませんでした。市場には売り出されなかったもののこの器具はまぎれもなく今現在あるエアータービンハンドピースの原型になったものと言われています。

実際に市場で製品となった最初のエアータービンハンドピース

現在のエアータービンハンドピースに近い製品が最初に市場で製品化されたのはそれから間もなくの1957年の事でBorden Airotorという製品名でアメリカのThe Dentists’s Supply Campany(現在のDentsply International)とドイツのKavo社から発売されました。この製品の回転速度はコンプレッサーによる圧縮空気を利用して200,000 rpmから300,000 rpmの速度で回転しており現在のエアータービンハンドピースの回転速度と比べて遜色ありませんでした。この製品はその後の改良品も含めてアメリカやヨーロッパや日本で発売され1年ほどで5万製品売れるほどの大ヒットをしました。日本でも発売されたBorden Airotorですが、1957年当時にはすでに千種区に阿部歯科があったので祖父がこの製品を使っていたかもしれません(関連記事:阿部歯科ができて80年が過ぎました)。

エアータービンハンドピースはその後、タービンの回転の安定性の改良やオーバーヒートを防ぐ冷却装置の改良、昔はベアリングに注油するためのオイルミストを吐き出しながらの使用だったものを軸受けのボールベアリングにセラミックを採用して、ベアリング部分に注油が必要なくなるなど様々な改良がすすめられて現在のエアータービンハンドピースへと進化しました。このような歯医者さんのドリルの進化が無痛の治療・痛くない治療への進化へと貢献しているのです。

参考文献:

1) How the development of the high-speed turbine handpiece changed the practice of dentistry. J. R. Eshleman, D. C. Sarrett. J. Am. Dent. Assoc. 2013.

2) The development of the dental high-speed air turbine handpiece. Part 1. J. E. Dyson, B. W. Darvell. Aust. Dent. J. 1993.

3) The development of the dental high-speed air turbine handpiece. Part 2. J. E. Dyson, B. W. Darvell. Aust. Dent. J. 1993.

4) The dental handpiece - a history of its development. R. R. Stephens. Aust. Dent. J. 1986.

 

 

歯科恐怖症.jpg

みなさんは歯の治療に行きたかったり歯の検診に行きたいと思った時に歯医者に行かないと、と思ったり歯医者に行きたいと思ったりするもののなかなか歯医者に行く一歩が踏み出せないという経験がないでしょうか?今池から5分の歯医者の阿部歯科では痛くない治療(関連記事:痛くない歯科治療をするための取り組み)や怖くない治療を目指して患者さんがより来院しやすい治療環境(関連記事:歯科用治療椅子とリラックス)を作ると共に建物の外観や歯科医院の雰囲気という点からも患者さんがより歯医者に気軽に来院できる環境を整えています(関連記事:診療室から見える庭)がそれでも患者さんの中にはなかなか歯医者への第一歩を踏み出す勇気が出ないという方もいます。今回はどうして患者さんが歯医者さんに行くのをためらってしまうのかという事に関してお話しようと思います。

実は歯医者さんに行くのをためらってしまうのはごく普通の感情

歯医者さんに行くのをためらってしまうという感情は実は歯医者さんに限りません。どういう事かというと普段と違う行動を取り環境を変化させる事に人自身が不慣れだという心理的な作用が働いていると言われているからです。つまり体の体温や心拍を一定に保ち続ける恒常性の維持と同様に心理的にも普段と違う環境に変化させるという行為自体に良い悪いの結果は関係なく多かれ少なかれ人はストレスと不快感を感じるという特性があるからです。例えばみなさんは部屋の掃除をしないといけないと分かっているのになかなか腰が上がらないものの部屋の片づけを始めたら今度は片付けが止まらなかったなんていう経験はないでしょうか?これも、「部屋を掃除しないといけない」という良い事だと分かっている物事にたいして「今は動いていない」という状態を維持したがって「片付ける」という環境や行動の変化に不快感を感じているものの、ひとたび「片付ける」という状態と行動に変化したらその状態を今度は維持しようという心理状態が働くためだからと言われています。

同様に「歯医者さんに行かないと、歯医者さんに行きたい」という良い事に対して「歯医者さんに行っていない」という状態の変化をする事にどうしても抵抗感を感じてしまうのです。これらの問題は患者さんだけの問題ではなく歯医者さん自身の患者さんへの不理解も一つの要因になってしまっています。つまり歯医者さんにとっては歯科医院という環境は普段の日常であるものの患者さんにとっては環境の変化を伴う非日常であるという事を我々歯科医師が本当の意味で理解しきれてないという点にあります(関連記事:歯医者さんの日常は患者さんの非日常)。逆に普段から歯科医院で予防処置や定期的な歯科検診を受け続けている患者さんは口の中の健康面に限らず心理的な点からも定期受診を続ける事は大変大きな利点がある事になります。

歯医者さんに行けずに困っている患者さんもいる

阿部歯科では従来からある歯医者さんのイメージを取り払うために怖くない治療、痛くない治療、親近感を感じられる歯医者の雰囲気という点に力を入れて患者さんがより歯医者さんへの第一歩を踏み出せるように歯科医院への心理的な扉を取り除く取り組みをしています(関連記事:怖くない気持ちで来院できる阿部歯科の取り組み患者さんが緊張せずに来院できる阿部歯科の夏の取り組み)。一般的な報告によると歯医者さんに行くのをためらってしまう患者さんの内の10~20%はためらいだけでなく不安や怖さを感じてしまっていると言われています。さらに怖さを感じている患者さんの内の約20%が歯科治療を必要としているものの歯科医院を受診できないでいると言われています。これらのいわゆる歯科恐怖症の原因は先ほどのべた普段と違う状態に環境を変化させるという不安感のみの問題ではなく幼少期や最初に歯科を受診した時の環境が影響していると言われています。例えば幼少期に最初に受診した歯医者さんで「親から引き離されて治療する」「どんな治療をされるか分からないまま治療が開始される」といったような不安感を抱えたまま過ごすと大人になっても歯科への恐怖感を持ち続ける事があると言われます。多くの子供の治療では歯医者さんの環境の慣れによって不安感が減少して消えていくのですがこれも環境への適応と慣れという心理的な状態が関係しています。逆に幼少期には不安感が強いまま治療に突入してはその後の歯科医院受診に対して大きな障壁を残してしまう可能性があるとも言えます。

大人に関しても同様に怖くない治療と痛くない治療を行い不安感を解消して親近感のもてる歯科医院環境を整えるという事がより早く歯科医院への親密さと安心感を持てるようになる近道だと考えています(関連記事:緊張しない歯医者さんとは)。これの点に関してはまさに歯医者自身が患者さん自身をどれだけ理解しようと努力しているかにかかっていると思います。

参考文献:Dental fear & anxiety and dental pain in children and adolescents; a systemic review. Y. S. Shim, et al. J. Dent. Anesth. Pain. Med. 2015.

 

胎児の口腔内細菌叢.jpg

口腔内には虫歯の原因となるう蝕関連細菌や歯周病の原因となる歯周病関連細菌をはじめとして比較的無害な細菌から有害な細菌も含めて数百種類の細菌が住み着いていますがこれらの細菌はいつ口の中に住み着いたのでしょうか?口腔内に住み着いた細菌はその時の年齢や体の状態によって共生細菌として細菌叢を作り上げて常に宿主となる人と共にいるのですが(関連記事:口の中の細菌口の中の口腔内細菌は普段はどうして体に害がないのか)、当然、人の発生の段階で臓器のように体の中に作られているわけではなく外来から体にもたらさせます。しかし口の中の細菌が最初にいつ住み着き始めたのかは不明な点が多くあります。う蝕関連細菌(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話)や歯周病関連細菌(関連記事:歯周病に関連する細菌)は親族やパートナーに関連して感染する事が分かっていますが(関連記事:歯周病は誰からうつる?)その他の共生細菌は生まれた時にいつどこから感染していたのでしょうか?

胎内にいる時に最初の胎児の口腔内細菌叢ができあがった?

かつて妊娠中の子宮内は無菌で胎盤や羊水は無菌だと考えられていましたが、ここ数年の研究でサンプルを包括的に分析するメタゲノム解析によって胎盤や羊水にごくわずかに細菌の遺伝子が確認されるようになりました。その結果を踏まえて胎盤や羊水には細菌が含まれており胎児の時点で体の中に細菌叢を作り上げて口腔内にもその段階で初期の口腔内細菌叢が作り上げられるのではないかという話が出てきました。しかしこの胎盤や羊水が無菌か無菌でないかという話は未だに決着がついていません。メタゲノム回析によって胎盤や羊水から得られた細菌の痕跡はごくわずかでサンプル採取の際や試験中の器具からのコンタミネーション(汚染)の可能性を排除しきれていないからです。

子宮内は無菌なのか?無菌でないのか?という最終判断がまだついていない中でメタゲノム回析と16S rRNAのアンプリコン回析を組み合わせて偽陽性(陰性が陽性として確認される状態)を可能な限り排除して胎盤が無菌かどうか調べようという研究が537人を対象とした大規模研究として行われました。その結果では数多くの細菌の痕跡が見つかったもののB群溶血性連鎖球菌のみを除いて他の全てがサンプル回収や試験中のコンタミネーションと報告されました。そしてB群溶血性連鎖球菌の感染もサンプルの5%にとどまりました。そのため、元々言われていたやはり子宮内は通常の状態では無菌ではないのか?という事が考えられるようになりました。

口腔内細菌は乳児にいつ感染したのか?

偽陽性を可能な限り排除した大規模研究で昔から考えられていたようにやはり子宮内は通常は無菌なのでは?という可能性が出てきた事でそれではいつ乳児に口腔内細菌叢が形成されたのかという疑問が再び出てきます。そして最近の研究では細菌の分布の類似性を確認した時に母乳の細菌叢が乳児の口腔内の細菌叢に類似しているという結果が出ています。母乳には免疫に必要な成分の他に数百種類の細菌が含まれていると言われておりその細菌が乳児の口腔内の共生細菌叢を形作るのに寄与しているのではという考え方です

子宮内が未だに無菌か無菌でないのかはっきりしていないものの、その他の要因を考えた時にもごく初期の生まれたばかりの乳児の口腔内細菌叢の状態は母親から受け継いだ細菌叢の影響を色濃く反映しているのかもしれません。池下の歯医者の阿部歯科では口腔内細菌の状態を確認するために顕微鏡による検査を取り入れており、虫歯や歯周病と細菌の関わりには大変注意を払っているため口腔内の細菌叢の成り立ちには強い関心を持っております(関連記事:阿部歯科の歯周病治療に関して)。

参考文献

1) Could baby’s first bacteria take root before birth?. C. Willyard. Nature. 2018.

2) Human placenta has no microbiome but can contain potential pathogens. M. C. de Goffau, et al. Nature. 2019.

3) Microbiota of human precolostrum and its potential role as a source of bacteria to the infant mouth. L. Ruiz, et al. Sci. Rep. 2019.

 

 

歯の神経と血管.jpg

虫歯が大きくなって細菌が歯の奥深くまで感染した結果、歯の神経を取らないといけないとなってしまった場合に歯の神経がまだ一部生きている場合もあります。その際に歯の神経を取る治療の過程で麻酔をしないといけないのですが、炎症が起きている歯の神経には麻酔が効きにくい事がしばしばあります。そういった際に痛くない治療や可能な限り無痛な治療をするために麻酔を打つ時だけではなく、麻酔の効かせ方や歯を削る時の治療の方法にも気を配らないといけません(関連記事:歯医者さんのドリル)。この、歯の神経を取るという治療は歯の中にある神経を取り除く治療なのですが、この歯の神経とは具体的にどういったものかご存知でしょうか?

歯の神経って何?

歯医者さんに行くと歯の神経を取りましょうという説明を受ける事があるかもしれませんが、この歯の神経とは具体的にどういったものかイメージがつく患者さんは多くないかもしれません。「歯の中に1本神経が通ってるの?」「歯に神経が繋がってるの?」と様々な疑問がわくかもしれません。歯の構造は歯の頭側から硬組織でできているエナメル質・象牙質(原生象牙質・第二象牙質・修復象牙質)、軟組織でできている歯髄という順番で構造を作っています(関連記事:歯の構造について)。歯医者さんで歯の神経を抜きますという説明はこの歯髄という構造を歯から物理的に取り除く事を意味しているのです。細菌感染をおこしてしまった軟組織である歯髄を取り除く事で感染源を取り除くという治療を行うのが歯内療法という治療になります(関連記事:最近の歯の神経の治療方法の進化)。

歯髄には神経が入っている?

ではこの歯髄という軟組織ですが、具体的にどういうものなのでしょうか?神経だけが中に入っているというわけではなく、歯髄の構造のおおよそ40%が神経組織で占められ、残りの40%は血管組織が満たされており、残りのおおよそ20%は線維芽細胞などの間葉系細胞成分とコラーゲンを含む結合組織成分で占められます。つまり、歯の神経を抜きましょうねと歯医者さんで分かりやすく説明していますが、具体的には40%の神経組織を含む血管結合組織を取り除いているという事になります。

歯の中の神経は痛みしか感じない

歯髄は知覚神経である上歯槽神経もしくは下歯槽神経から分布します。歯の神経は非常に特徴的で触覚、圧覚、温覚などの判別はできず感じるものは全て痛みである痛覚のみとして感じ取ります(関連記事:歯の神経って何?)。そのため歯の神経を触った時にはどんな触り方をしようとも痛みしか感じないのです。この事を十分認識する事が痛くない治療・可能な限り無痛の治療を行う上で大切となるのです。そして歯の神経は歯の中でも位置によって特性が大きく変わり、象牙質に近い歯髄ではAδ線維が、歯髄の深部ではC線維が存在しており、Aδ線維は鋭く速い痛みを感じ取り、C線維は鈍く遅い痛みを感じとると言われています(関連記事:原始人も恐竜も虫歯に悩んでいた?)。

歯の神経は1本の線維?

歯の神経が根尖孔から歯の内部に入った際にどのような構造を取っているかと言うと1本の神経が中を通っていると思う方もいるかもしれませんが根尖孔から入った神経は枝分かれするように歯の中を広がっていきその太さはおおよそ40-60マイクロメートルから始まり、細い一本一本の神経線維に枝分かれするとおおよそ0.5-5マイクロメートルの細さへと変わっていきます(関連記事:歯の神経は歯の中で複雑に枝分かれしている)。そしてこの枝分かれした神経の先端で象牙質の直下にいる細胞の象牙芽細胞やその細胞突起に結合してそれを介して歯を削った時の痛みを感じているのです。

歯を削った時と神経を触った時どちらが痛い?

歯の神経は歯の内部で枝分かれして歯冠部へと向かいますが歯冠部で枝分かれした神経はラシュコフの神経叢と呼ばれる象牙芽細胞下神経叢を形成して象牙芽細胞またはその細胞突起へと結合します。この象牙芽細胞の感じ取る感覚が歯を削った時に感じる痛みで、この象牙質で感じ取る痛みや歯冠部の歯髄で感じ取る痛みは鋭く速い痛みを感じるAδ線維が関与すると言われており、歯髄の深くで感じる痛みは鈍く遅い痛みを感じとるC線維が関与していると言われています。そのため、強い痛みがすでにでてしまっている場合の歯の神経を取り除く治療の際には鋭く速い痛みを引き起こしているこの歯髄の象牙質付近に存在するAδ線維の神経をしっかり取り除く事が大切になるのです。そして最も痛みを感じる部位は象牙質を削って歯髄のAδ線維の神経へと触れる段階が最も痛みを感じる可能性が高くなるのです。

つまり歯の神経を取り除くという事は

歯の中にある40%の神経を含む血管結合組織を取り除くという事で、痛みを取り除くという目的のためには特にAδ線維という鋭く速い痛みを感じる神経を取り除く事が大切になります。もちろん鈍く遅い痛みを感じるC線維の神経も取り除きますが、最初の段階でどれだけ多くAδ線維を取り除くかでその後の痛くない治療・なるべく無痛の治療が達成できるかが変わるのです(関連記事:見えない歯の根の先端をどうやって測るのか(歯内治療))。そのため、千種区の歯医者の阿部歯科ではこのような科学的に根拠のある手技や治療手順を大切にして日々の治療を行っています(関連記事:阿部歯科での根拠に基づく歯科医療)。

参考文献:3D-Imaging of Whole Neuronal and Vascular Networks of the Human Dental Pulp via CLARITY and Light Sheet Microscopy. C. M. Franca, et al. Sci. Rep. 2019.

 

歯医者さんの歴史.jpg

虫歯で歯が痛くなったり歯周病や親知らずで口の中が腫れてしまった時に歯医者さんに行く事になるのですが、昔の人々はそういった時にどうしていたのでしょうか。虫歯は恐竜や原始人でさえあったのですが、それほど昔からあった虫歯に対して昔の人々はどのように対処していたのでしょうか?(関連記事:原始人も恐竜も虫歯に悩んでいた?

記事の追記:2019年10月12日

世界最古の歯科医師は古代エジプト人だった?

現在確認されている世界最古の歯科医師と考えられている人物は紀元前2600年頃のエジプト第3王朝時代の古代エジプト人の高官のHesy Reだと言われています。Hesy Reは様々な役を持っていたようで王の腹心の友とも伝えられているそうです。歯科医師と伝えられているもののその治療の内容は分かってはおらず役職として最古の歯科医師であると考えられているにとどまります。

紀元前1550年頃に書かれたエジプト医学の書物であるエーベルスパピルスには口の中の膿瘍や歯肉の腫れ、歯の痛みを含む口腔内の様々な病気やその治療法が書かれており古代のエジプトでは歯が抜けてなくなってしまった状態に対して金のワイヤーを使って歯を束ねて処置した事も分かっています。

世界最古の口腔外科医は古代ギリシア人?

紀元前12世紀のギリシアではEsculapiusと呼ばれる人物が抜歯を行っていたと書物に書かれています。そのため、書物に書かれて確認されている最も古い口腔外科手術はEsculapiusによって行われた抜歯だと言われています。

紀元前500年から300年頃には医学を呪術から切り離して科学へと昇華させた事で有名な医学の父であるヒポクラテスや哲学者として有名なアリストテレスによって歯の生え変わりのパターンや歯周病、抜歯やグラグラした歯の固定などの方法が書かれるようになりました。

専門的な歯科治療の始まり

虫歯になってしまった歯を治そうという試みとしては、アラビアで虫歯になった歯を抜くのではなく木の樹脂やミョウバンを混ぜたセメントを齲窩に詰める事で対処しようという専門的な治療として行われました。8世紀には歯の神経の感染によってできた根尖病巣に対しての処置が始まり、歯の痛みに対して化学物質を使って対処する事が試みられました。

ヨーロッパでは16世紀になると歯科医学はさらに発展し、歯の萌出や歯のもととなる顎骨の中の歯胚などの存在が認識されるようになり、18世紀には現代歯科医学の父とも言われるフランスの歯科医師ピエール・フォシャールによって口腔内の解剖や機能、虫歯になった歯の保存修復方法や入れ歯の作り方が書かれた専門書が出版されるようになりました。

1839年には世界で最初の歯科専門論文雑誌のAmerican Journal of Dental Scienceがアメリカで出版され翌年の1840年には世界で最初の歯学部がアメリカ国内にでき、「Doctor of Dental Surgery (DDS)」という歯科医師の専門的なタイトルができる事となりました(関連記事:日本とアメリカの歯医者さんって何か違うの?)。そして専門的な歯学部ができて以降さらに歯科医学は発展していき今日の歯科医学へと繋がっていく事となるのです。さらに今では歯医者さんで使われるドリルの発達もこの時期を境目に急激に発達をしてきているのです(関連記事:歯医者さんのドリル)。今池から5分の阿部歯科では日々新しくなる歯科医学知識と技術の研鑽のために歯科医学専門の論文を読み続ける事を大切としているため(関連記事:阿部歯科での根拠に基づく歯科医療)、専門的な歯科医学がどのように発展したのか非常に興味があります。

参考文献:History of dentistry. A. Hussain, F. A. Khan. Archives of Medicine and Health Sciences. 2014.

 

 

歯周病の感染.jpg

ミュータンス菌を代表する虫歯菌は親から経口で感染する可能性があるという話はしばしば耳にする事があるかもしれませんが(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話)、では日本人の70-80%もの成人が罹患していると言われる歯周病菌は誰から感染するかという事をご存知でしょうか?歯周病は20歳を過ぎれば誰でもなる可能性がありますが、ここ10年以内の歯周病の研究で歯周病の原因となる歯周病菌の考え方も大きく変化が起きてきています(関連記事:口の中の口腔内細菌は普段はどうして体に害がないのか)。それでもどこからか歯周病菌が感染するという元々の原因がある事には変わりがありません。池下の歯医者の阿部歯科では予防歯科に力を入れているため歯周病予防のお話として今回は、子供の時には歯周病にならなかったのに大人になってから歯周病になるその細菌の感染のもとについてお話しようと思います。

どうして子供は歯周病にならないのか

大人は歯周病になるのにほとんどの子供は歯周病にならないのはなぜかと疑問に思うのではないでしょうか。歯周病を引き起こす高病原性へとシフトした細菌は空気を嫌う嫌気性細菌という種類になるのですが、この細菌は空気があまり届かない歯周ポケットの奥底に住み着きます。大人では歯周ポケットの奥底の空気が届きにくい嫌気性環境の場所に歯周病を引き起こす細菌群が高病原性の細菌叢を作り上げて歯周病を引き起こします(関連記事:歯周病に関わる免疫細胞)一方で子供はどうでしょうか?

子供の場合は乳歯から永久歯への生え変わり、顎の発育による歯の移動や萌出によって歯の嚙み合わせや位置はたえず大きく変わり続けます(関連記事:なぜ歯は乳歯から永久歯に生え変わる必要があるのか)。この歯が動き続けるという状態はいわば歯肉という地盤が常に動き続ける地殻変動のような状態になっているので歯と歯肉の間にある歯肉溝に嫌気性細菌が住み着こうとしてもたえず起き続ける地殻変動で嫌気環境をうまく維持しつづける事が出来ずに歯周病を引き起こす嫌気性の高病原性の細菌群が住み着く事ができなくなっているのです。この歯肉溝が動きのない安定した環境なのか、地殻変動のようにたえず大きく動き続ける環境なのかによって空気の少ない嫌気環境を保てるかどうかが変わり、その結果大人と子供で歯周病になるかどうかの違いが生まれてくるのです。

歯周病の原因となる細菌は誰からうつったのか?

子供の頃は歯周病の原因となる細菌がうまく住み着く事ができないのですが、20歳にもなれば歯の動きは落ち着き歯周病を引き起こす細菌群が住み着けてしまうおちついた環境ができあがるのですが、それでは子供の時には感染していなかった歯周病を引き起こす細菌群はどこからやってきたのでしょうか(関連記事:子供の口腔内細菌はお母さんから受け継いだ?)?

感染には母親から子供へと感染する垂直感染とその他の要因で感染が成立する水平感染がありますが、歯周病を引き起こす細菌群は水平感染によって感染すると言われています。そして歯周病を引き起こす細菌群の中でも特に有名なポロフィロモナス・ジンジバリス(関連記事:歯周病に関連する細菌)という細菌に関して注目すると30%から75%もの割合でパートナーもしくは配偶者間で感染が成立していると言われています。つまり、虫歯菌は親子間で、歯周病菌はパートナーもしくは配偶者間で感染していると言われているのです。

歯周病罹患は自分だけでは対策できない

歯周病はパートナーもしくは配偶者間による水平感染が大きな原因のひとつというやや衝撃的な事柄を考えると歯周病に感染しないためには自分だけが対策しても難しい事が分かります。この事実が日本の70%から80%もの成人が歯周病に感染しているという事実を作り出しているのです。そのため、自分だけではなく身近にいる人にも歯周病に気を付けて定期的に歯医者さんで口腔内の衛生環境を保ってもらうという事が自分の口腔内の衛生環境を保つ事に役立つ可能性が高いのです。

参考文献:Transmission of periodontal bacteria and models of infection. A. J. Van Winkelhoff, K. Boutaga. J. Clin. Periodontol. 2005.

 

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