千種区池下の歯医者 阿部歯科 副院長の阿部利晴によるブログで、アメリカの歯科医療についての事情等を載せています。

<電話番号をタップするとお電話できます>
TEL:052-751-0613
<時間外受付はこちら(初診のみ)>
TEL:090-3300-5882
メール予約の受付は24時間可能です!ご予約・お問い合わせ
平日の遅めの時間と土日が予約が取りづらくなっていますので、お早めのご予約をおすすめします
東山線「池下駅」徒歩5分 「今池駅」徒歩6分 仲田銀座商店街 広小路通沿い ホカホカ弁当近くの歯医者
診療案内
副院長ブログ

当院副院長からのお知らせ、出来事のご紹介です。

歯ブラシと歯磨き粉.jpg

口の中の食べ物の残りや口腔内細菌によってできたプラークを取り除くために歯ブラシで歯を磨くときに多くの人は歯磨き粉を使うと思いますが、この歯磨き粉というもの自体はかなり昔から利用されてきていました。

池下の阿部歯科でも知覚過敏や歯周病、虫歯になりやすい人に合わせた様々な歯磨き粉を紹介していますが、現在では患者さんの症状に合わせた様々な歯磨き粉が発売されています。そのような歯磨き粉ですがその歴史は紀元前からはじまります。

古代エジプトで使われていた歯磨き粉

古代エジプトは歴史の古さから世界最古の歯医者さんがいたとも言われていますが、歯を磨くための歯磨き粉に関してもエジプトは歴史が古い事が分かっています。

紀元前3000年から5000年頃の古代エジプトで使われていた歯磨き粉は卵の殻、牛のヒズメ、樹脂、軽石を砕いた粉を歯の汚れを取る事に利用しておりそこに水を加えて歯磨き粉として使っていました。そして紀元前1000年頃の古代ペルシャ人はそれに加えて焼いたカタツムや牡蠣の殻を石こう、ハチミツ、ハーブに加えて歯磨き粉として利用しました。

エジプトと共に歴史の古い世界最古の口腔外科医がいたと言われるギリシアやローマでも砕いた骨や牡蠣の殻を利用し、香料を加えてより歯磨き粉として使いやすく進化させていきました。

(関連記事:世界で最初の歯医者さんって誰?

その頃アジア圏では別の歯磨き粉が

砕いた卵の殻や牡蠣の殻などを利用していたヨーロッパとは別に同時期のアジア圏、中国やインドでは歯磨き粉は別の発展をとげました。

快適に使いやすいように朝鮮人参やミントを加えそこに塩を入れて歯磨き粉として利用していました。古代の歯磨き粉は現在の歯磨き粉とはかなり違いが多く、現在の歯磨き粉と比べると味はいまいちで研磨性も強すぎ、そして何よりも高価で多くの人が広く使えるようなものではありませんでした。

産業革命でがらりと変わった歯磨き粉

あまり広く使われる事のなかった歯磨き粉が一変したのが18世紀の産業革命の時代でした。

産業革命の大量生産時代に突入して歯磨き粉はより一般的なものとなったものの、当時の歯磨き粉は未だに研磨性が強すぎ、レンガの粉や砕いた陶器などを重層に加えて歯磨き粉として利用していました。

19世紀に突入するとより使い心地の良い歯磨き粉を開発するためグリセリンや石鹸が入れられチョークなども研磨剤として加えられました。1873年には世界で初めての商業ベースでの歯磨き粉がColgate & Co.から発売されてより広く歯磨き粉が一般に普及する事となりました。

フッ素の登場

歯磨き粉がガラリと変わる大きな転機が起きたのが1914年の事です。

この年に初めて歯磨き粉にフッ化物を加える事がイギリスで紹介されました。しかし実際に広く商用としてフッ化物入りの歯磨き粉が広まったのは1955年から1956年の事でアメリカのProcter & Gambleから発売されました。

この年の翌年の1957年は現在の歯医者さんで使っているドリルに繋がるBorden Airotorというヒット商品のドリルが発売された年でこの時期に歯科医療に大きく関心が集まっていた事がよく分かります。そしてその後も水和シリカや炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの口腔内のプラークを効率よく取り除く成分や香料などを加えてより使いやすく歯磨き粉は発展していくのです。

(関連記事:昔の歯医者さんはどんなドリルを使っていた?(エアータービン編)

新しい時代の歯磨き粉はより小さなスケールへ

歯科医療が発展するにしたがっていわゆる、ある程度の大きさのある成分からより細かい部位に対応する口腔内ケアが新しい時代では始まってきています。

歯ブラシにしても数ミリレベルの構造を持った小型の物質を利用して歯磨きをしようと研究がすすめられたり、歯磨き粉においてもミリの大きさを対象としていた時代からナノ(1000分の1ミリメーター)を対象とした時代に変わってきています。

歯のエナメル質の強度を強くしたり歯の初期の脱灰を再石灰化させるフッ化物の塗布が今では一般的ですが今現在では新たにより効果的にプラークの付着を防いだり再石灰化を促す成分の開発が進められています。

実際に商品として販売されているものでもCPP-ACP(カゼインホスホペプチド-非結晶リン酸カルシウム複合体)といったものが含まれている商品も発売されています。CPP-ACPは直径2ナノメーター(1000分の2ミリメーター)ほどの成分で口腔内細菌の表面やプラークに付着したり歯の表面の高分子を吸収する事で歯への細菌の付着を抑制すると考えられています。

口腔内細菌集団の塊である強化なプラーク付着の抑制をする事は細菌集団のマイクロバイアルシフトを起こす事の抑制にもつながり、CPP-ACPにおいてはフッ化物のように初期虫歯の再石灰化を促す事も確かめられています。

再石灰化を促す成分としては他にも歯の主成分である20ナノメーター(1000分の20ミリメーター)のハイドロキシアパタイト粒子を成分として利用したりしており、新しい時代の歯磨き粉はより小さいスケール、ナノの世界を対象として進化を遂げているのです。

(関連記事:歯の汚れを磁力の力で取るロボット

参考文献:

1) Nanomaterials in preventive dentistry. M. Hanning, C. Hanning. Nat. Nanotechnol. 2010.

2) An introduction to toothpaste – its purpose, history and ingredients. F. Lippert. Monogr. Oral Sci. 2013

阿部歯科ツリー.JPG

阿部歯科では千種区内外からの仕事帰りに来られる患者さんも多くいますが、やはり遅い時間になるとこの頃では寒くなった事もあり患者さんも少し疲れが出てくると思います。

阿部歯科では以前より痛くない怖くない治療といった事の他にも親しみが持てて緊張せずに受診できる歯科医院にしようと取り組みを続けておりますがクリスマスまであと1か月ほどという事もあり院内にクリスマスの飾り付けと歯科医院の外側と内庭に患者さんの緊張感が少しでもほぐれるようにとクリスマス用のイルミネーションを設置しました。

院内に入る時の緊張感を少しでも和らげるために

一般的に患者さんが感じる緊張感は歯科医院で働いてる歯科医師が想像するよりも強い可能性があると以前から思っております。

私も患者側として病院を受診する事が時々ありますが、治療を受ける瞬間もそうですがやはり待合室での待ち時間というものが私自身も苦手です。治療を待つ間の無機質な感じや病院独特の静けさや雰囲気といった待ち時間はどうしても圧迫感や息詰まる感じがして私自身もやや辛いなと日頃から感じています。

普段治療をしている治療者側からしても医療機関の待合室は圧迫感を感じるくらいなので純粋な患者さんからすればその時に感じる圧迫感は私が患者側として感じる以上に強いのかもしれないと思います。

(関連記事:歯医者さんに行くのをどうしてためらってしまうのか?

そのため阿部歯科を作る時は最初から可能な限り緊張がほぐれて少しでもほっとする雰囲気を歯科医院の建物にも待合室にも作ろうと決めておりました。

クリスマスのイルミネーションとクリスマスツリー

阿部歯科ツリー2.JPG

クリスマスまであと少しという事で建物の外と中庭にはイルミネーションを飾り付け、待合室にはクリスマスツリーを設置しましたが、やはり待合室に入った時にいかにも歯科医院という雰囲気を取り払うためにツリーの飾り付けは気持ちが良く感じるように少し目立つようにしております。

ツリーの真ん中には今年の10月に阿部歯科に見学に来られたペンシルベニア大学歯学部のHajishengallis教授からいただいた青銅製のベルを取り付けました。

(関連記事:阿部歯科にペンシルベニア大学歯学部からHajishengallis教授が見学に来られました

明るい飾り付けのアクセントにやや渋めの青銅製のベルがなじんで良い雰囲気が出ているかなと思っております。受付の横には私が作ったイミテーションのクリスマスケーキを作って置いてあり、患者さんが可能な限り緊張しないクリスマスの雰囲気を作る用につとめています。

阿部歯科ケーキ.JPG

患者さん目線は入口から

私が学生の時も医療面接の授業があり、患者さんとの接し方や治療方針の決め方といった教育を受けておりましたが私が卒業してから病院や診療所に勤めた際に治療のやり取りに関しては習ったものの治療室の雰囲気や待合室の雰囲気といった事には教育を受けていなかったなとずっと思っておりました。

歯科医療の中心は治療や予防といった処置になりますが、処置が始まる前の段階、歯科医院に来るまでと治療を待つ間の時間にどういった事を感じるかといった事に関してはよく考えていました。実際にアメリカの歯学部で働いていた頃は医療機関の待合室や診察室の雰囲気といった点にも非常に気を配っているのを目にして、やはり患者さんの感じる待合室や診察室の雰囲気も大切なんだなと実感していました。

卒業してからの診察を通して患者さんの中にも「歯医者さんに行きたかったんだけど来る勇気がなかなか出なかった」といった事を打ち明けてくださった方もいました。

そういう事も言えずに歯医者さんに行きたいのに悩んでいてなかなか行けないという患者さんは本当に多いのだと思います。

歯医者さんの建物を目にした時に「入りやすいな」「安心できる雰囲気だな」とまず思って勇気がなくても行きたいと思った時に歯医者さんに通えるような歯医者さんにする事が患者さん目線の取り組みの第一歩なのかなと思っています。

 

口腔内細菌叢の介入.jpg

現在では歯周病や虫歯になる原因が通常は口腔内の細菌が悪さをしていないSymbiosisと呼ばれる安定した共生状態からDysbiosisと呼ばれる悪性度の高い細菌の状態に変化(マイクロバイアルシフト)する事で起きているという事が分かっています。しかし人によって口腔内清掃の状態や免疫の状態、あるいは口腔内細菌そのものがマイクロバイアルシフトを起こしやすくしているという点がある事も虫歯や歯周病が悪化しやすいかどうかという個人差を引き起こしています。そしてこの根本的な原因である口腔内の細菌叢(細菌の分布)を意図的に変えられるのかという事が疑問として出てきます

そもそもの口腔内細菌叢(細菌の分布)を形作った原因

口腔内細菌叢は胎児期もしくは生まれてすぐにその分布を形成し始める事が分かっていますが最初の影響は母親から多くを受ける事が分かっています(関連記事:子供の口腔内細菌はお母さんから受け継いだ?)。しかしその細菌の分布は時間を経るごとに変化し、時にはパートナーや配偶者からその影響を受けます(関連記事:歯周病は誰からうつる?)。母親から最初の口腔内細菌叢を形成する影響を色濃く受けた後にどのようにその後の細菌叢を形成していくのかという研究も調べられています。大きく分けるとその影響は遺伝的な影響と環境による影響があります。個人の持つ遺伝子によっては疾患だけではなく特定の細菌やウイルスに感染しやすかったりその症状が強く表れやすいという事が判明しています。口腔内で細菌叢を形作る、特に共生細菌をどのように形成するかが遺伝的にどれほど影響があるのか調べようとして特定の遺伝的に近い集団群を比較した場合に遺伝子の影響によってわずかに口腔内細菌叢の形成に影響しえるものの、しかしその遺伝子の影響よりも家族内での環境の方がより口腔内の細菌叢の形成に強く影響を受けると報告されています。とりわけ子供の時の初期から家庭内の環境で影響を受けて口腔内の細菌叢が形成されるとその後に引っ越しなどをして大きく生活環境を変えても数か月から数年以上はその口腔内の細菌叢が維持されると分かっています。しかしこれは必ずしも永久的なものではなく、パートナーや配偶者からの歯周病に影響を起こす細菌の感染や口腔内衛生環境や免疫の変化によるマイクロバイアルシフトから見ても分かるように何かのきっかけで口腔内の細菌叢が変化する事が分かります

歯周病になりにくいより良い口腔内細菌叢を意図的に作れるのか?

生活環境から形成された口腔内細菌叢がその後に生活環境を変えても数か月から数年以上維持されると分かっているように一度形成された口腔内細菌叢はなかなか変化しにくい事が分かります。これはマイクロバイアルシフトを起こして一度歯周病になった口腔内細菌叢を元の悪性度の低い共生状態の細菌叢に戻す事がなかなか難しい点からも分かります。そのため、現在ではマイクロバイアルシフトを起こす前に予防処置によって共生状態にある口腔内細菌叢の状態を維持し続ける事を目的とした現在の予防歯科の考え方が非常に大切となってきます(関連記事:どうして歯周病になるのか)。

現在の共生状態にある口腔内細菌叢を維持する目的に加えて、より歯周病になりにくい口腔内細菌叢に変化させる目的で乳酸菌などを使ったプロバイオティクスと呼ばれる手法が試みられる事があります。腸内細菌叢では研究がより進んでいますが口腔内細菌叢に関してはまだまだ発展途上にあります。数ある研究を確認すると歯周病に関してはプロバイオティクスによる乳酸菌などの意図的摂取で歯周病を予防できる可能性があると言われていますが確定的な根拠はまだ未解明な状態にとどまります(関連記事:乳酸菌による歯周病治療の可能性(海外論文紹介))。

では実際のところプロバイオティクスと呼ばれる特定の乳酸菌などの細菌を摂取する事によって意図的に口腔内細菌叢の状態をマイクロバイアルシフトを起こしにくいようにできるのでしょうか?現在の強固に形成された口腔内細菌叢の中に乳酸菌などのいわゆる善玉の細菌を投入すると乳酸菌の加入によって口腔内細菌の多様性自体が増加すると分かっているものの口腔内細菌叢の分布の構成状態自体を根本的に変えるまではいかず、その影響も短期間に限定されると報告されています。しかしながらプロバイオティクスの手法が疫学的には歯周病の予防に対応できる可能性があると言われる通り短期間ではなく長期にわたって摂取し続ければ口腔内細菌叢の多様性の影響で歯周病予防に貢献を果たす可能性もあります。

実際のところは口腔内細菌叢を意図的に変化させる事はそう簡単ではなく、一度形成された細菌叢は数年以上の長期にわたって維持し続けられるものの、特定の影響や環境の変化を長期間にわたって受け続けるとその口腔内細菌叢は変化しうるという事も判明しています。そのため、実は歯周病になっていない人こそしっかり予防処置を受けて歯周病に罹患している人は元の共生状態にある口腔内細菌叢の状態に近づけるため口腔内衛生環境を整える事とマイクロバイアルシフトを起こした原因を根気強く取り除いていく事が大切となるのです。今池から5分の歯医者の阿部歯科ではこのようなマイクロバイアルシフトを起こしてしまった状態の口腔内に対する処置をはじめとして予防歯科に力を入れていますのでこのような治療法の今後の発展に目がはなせません。

参考文献:

1) The Human Salivary Microbiome Is Shaped by Shared Environment Rather than Genetics: Evidence from a Large Family of Closely Related Individuals. L. Shaw, et al. MBio. 2017

2) The short-term impact of probiotic consumption on the oral cavity microbiome. E. Dassi, et al. Sci. Rep. 2018

 

歯ブラシの保管.jpg

虫歯や歯周病を予防するために毎日歯ブラシで歯を磨く事が大切な事ですがみなさんは歯ブラシの保管方法についてどのようにしているでしょうか。

何気なく使った後に水洗いして歯ブラシを入れ物に入れているかもしれませんが歯ブラシの保管には色々な注意点があります

虫歯治療や歯周病治療を開始して最初にするのは歯ブラシの交換

虫歯や歯周病の治療のために歯科医院に行って治療を開始している方もいると思いますが家に帰ってきてまず最初にやった方がいいのが今使っている歯ブラシを新しい歯ブラシに交換するという事です

どういう事かと言うと歯ブラシは新しい物を使い始めたその瞬間から歯ブラシの汚染がはじまるためです。汚染というのは自分の口の中に存在する虫歯の原因となった細菌や歯周病を引き起こす細菌が歯ブラシについて歯ブラシ自体が細菌の温床となってしまう可能性があるという事です。

実際に使われた歯ブラシを確認するとStreptococcus属、Staphylococcus属、Lactobacillus属、Pseudomonas属といった口腔内の虫歯を引き起こす細菌や口腔粘膜への感染を引き起こす細菌、Candida属といった口の中に感染するカビといった様々な細菌や真菌に汚染されている事があると言われています。

そのため歯医者さんで治療を開始したらまず最初にした方がいいのは元々の口の中の虫歯や歯周病菌を引き起こした細菌に汚染されてしまっているかもしれない歯ブラシを新しい物に取り換えるという事になります。

せっかく治療を開始しても細菌の温床になっているかもしれない歯ブラシで歯を磨いてしまっては自分の歯ブラシで自分の口の中に細菌を感染させてしまっているかもしれないという事にもなりかねないのです。

湿った歯ブラシを密封された空間に保管しない方がいい理由

使用した歯ブラシは使った直後から汚染が始まるという事は誰にでも起きる事ですが、ここで重要なのが歯ブラシについた細菌を増殖させないようにしないといけないという事です。

湿った歯ブラシが湿度70%を超える密封された空間に保管された場合は密封されていない空気中に保管された場合よりも細菌の増殖が増えるという事が分かっています。そのため歯ブラシを保管する場合は歯ブラシの湿り気をしっかり取り、なおかつ歯ブラシのカバーやバッグや入れ物などの密封された空間ではなく風通しの良い場所に保管をした方が細菌の増殖を抑える事ができるのです。

歯ブラシのヘッドについている個別のカバーというと保管の際に良いと思われるかもしれませんが状況によって実は歯ブラシの毛先の周りの湿度を上げて細菌を増やしてしまう可能性があるのです。

そのため歯ブラシの保管は歯ブラシの毛先を上に向けて風通しの良い場所で湿度が上がらないように保管する事が大切になるのです。旅行などで歯ブラシを持ち歩く方もいると思いますが、歯ブラシはバッグにしまう前にしっかり乾燥して水分を限りなくなくした上でしまう事も大切になります。

他の人の歯ブラシと接触しないように

歯ブラシが実は使用者の口腔内の細菌で汚染されているかもしれない事を考えると当然他の人の歯ブラシの毛先と接触しないように注意しないといけません。

家族などで一緒の入れ物に歯ブラシを入れて保管している方もいるかもしれませんが、一緒の場所に保管する場合はそれぞれの歯ブラシがお互いに倒れ掛からないような工夫や歯ブラシ一本一本をそれぞれに立てられるような工夫が必要になります。

特に歯周病は配偶者やパートナーから感染するという事が分かっているので歯ブラシの保管においてもお互い注意をする事が虫歯や歯周病の予防にとっても大切になってきます。

(関連記事:歯周病は誰からうつる?

歯ブラシって消毒した方がいいの?

歯ブラシの消毒には薬剤を使った方法や紫外線保管庫にて保管したり、煮沸消毒してから保管するなど様々な方法が考えられますがある程度日常的に行える現実的な方法を取る事が大切となります。

歯磨きをするたびに煮沸するのは手間もかかる上に歯ブラシ自体の劣化が早くなる可能性もありますし、紫外線保管庫自体は持っている人もそうはいないと思われます。薬剤による歯ブラシの効果的な消毒方法としてはおおよそ0.12から0.2%のグルコン酸クロルヘキシジンを使用した方法がしばしば紹介されますがグルコン酸クロルヘキシジンを用意するという方法も少しハードルが上がってしまいます。

手に入りやすい物では市販のリステリンに20分歯ブラシを浸して消毒するという方法も紹介される事がありますが20分浸し続けるという手間も毎日やる事としてはやや大変かもしれません。

そのため現実的には歯ブラシの汚れをしっかり水洗いした後可能な限り水分をふき取って風通しの良い場所に歯ブラシの頭を上にして保管するという方法が一般的になります。

歯ブラシの交換っていつすればいいの?

歯ブラシの交換は可能であれば1ケ月に1回交換をすると好ましいです

報告によっては2週間ごとに歯ブラシの交換を推奨している事もありますが、2週間に1回の交換ではなかなか大変かと思われます。さらにどんなに長く使っても3ケ月以内には歯ブラシの交換をする事が自分の歯ブラシから自分自身の口の中への細菌の再感染を防ぐためにも推奨されています。

池下の歯医者の阿部歯科では患者さんのそれぞれの口の中の状態に合った歯ブラシの説明も行っておりますので歯ブラシの選び方で迷った時はぜひお尋ねください。

(関連記事:歯磨きと歯ブラシ

参考文献:

1) Microbial contamination of toothbrushes and their decontamination. Nelson Filho P., et al. Pediatr. Dent. 2000.

2) Toothbrush contamination: a review of the literature. Frazelle M.R., et al. Nurs. Res. Pract. 2012.

3) How clean is your toothbrush? Richards D. Evid. Based Dent. 2012.

4) Contaminated tooth brushes-potential threat to oral and general health. Naik R., et al. J. Family Med. Prim. Care. 2015.

 

 

マウスウォッシュの使い方.jpg

歯を磨いた後に歯肉炎や歯周病やまたは虫歯予防のために消毒作用のある洗口液(マウスウォッシュ)を使用して口の中の衛生環境に気を配る人もいると思いますがいわゆるマウスウォッシュですがどれくらいの頻度で使うと効果的という事はご存知でしょうか?

洗口液(マウスウォッシュ)は1日1回以下を目安に

マウスウォッシュをどれくらいの頻度で使えばいいのかという話題は実はかなり昔から議論がされています。ここ10年で歯周病や虫歯が口腔内細菌叢の変化によるマイクロバイアルシフト(Microbial Shift)によって起こる事が判明してきている事と合わせて口腔内細菌全てを対象にして消毒をする必要があるわけではないという点にも注目が必要になっています(関連記事:どうして歯周病になるのか「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話)。消毒作用のあるマウスウォッシュは悪性度の高い口腔内細菌に対応する事ができるものの同時に無害な共生細菌にも影響を及ぼしてしまう可能性もあるという事が過剰にマウスウォッシュを使いすぎる事に気を配らないといけないという結果をもたらしています。そして消毒作用のあるマウスウォッシュでは同時に過剰な使用によって口の中の粘膜を傷つけてしまう可能性があるので口内炎がある場合や頻度にも気をくばる事が大切になるのです。その目安が現在ではおおよそ1日1回以下、2日に1回でもいいと言われています。1日3回など頻回な使用ではマウスウォッシュの効き目や濃度にもよりますが使用頻度が多い可能性もあり粘膜を痛めてしまう事を考えると基本は歯磨きやデンタルフロスの使用を中心として補助的に1日1回以下を目安にマウスウォッシュを使う事がいいかもしれません。

マウスウォッシュの効き目って?

マウスウォッシュの効き目に関しては中に含まれる成分や濃度によっても違いますが、メジャーなものではアルコールの成分があります。マウスウォッシュは口腔内のプラークへの作用やそれに伴う歯肉炎予防の作用が報告されていますが、アルコールの成分が入っているかどうかの効果はまだまだはっきりしていない部分もあります。マウスウォッシュに含まれるアルコール成分の濃度は多いものでは26%ほどのものもありますが、アルコールの成分が入っているかどうかは歯肉炎予防に寄与する可能性があるもののその効果はアルコールの成分が入っているかどうかはそこまで気にするものではないという事も言われたりします。マウスウォッシュの成分は色々な製品によって様々な薬効成分が入っていますが実際にはどのような成分が入っているか以上にやはり適切に使っているか、適切な頻度で使っているかという事が大切になってくるのです(関連記事:口臭予防にも使えるマウスウォッシュ(洗口液)の効果がよく効く使い方は?)。さらに人によって口腔内細菌叢は様々なので自分の口の中の状況にあったマウスウォッシュを使うという事も大切になってきます。千種区にある歯医者の阿部歯科では予防歯科に力を入れているのでマウスウォッシュのように補助的に使える道具も様々な患者さんがそれぞれにあった適切な使い方ができるようにお話をしております。

参考文献:

1) Are alcohol containing mouthwashes safe? C. W. Werner, R. A. Seymour. Br. Dent. J. 2009.

 

DSC00108.JPG

歯医者さんに来る際にどうしても気が重かったり、歯医者さんに行きたいのに来院する一歩が踏み出せないという人も多くいますが、そのような気持ちが実はごく自然な感情という事が心理的な理由からも分かっています(関連記事:歯医者さんに行くのをどうしてためらってしまうのか?)。そのような患者さん側の気持ちを軽くするために今池から5分の歯医者の阿部歯科では怖くない治療、痛くない治療をするよう心掛けています。しかしやはり最初の第一歩は患者さんと歯科医院の入り口の間にある目には見えない気持ちの壁を取り除いてあげるというところから始まると思います。

来院しようとする患者さんと歯科医院の建物の間にある見えない心理的な壁

患者さんが最初に思う事としてやはり歯医者さんに入る一歩が踏み出せるかどうか、という事があると思います。医療機関というとどうしても入るための一歩がなかなか踏み出せない事が多くあります。「どういう先生がいるんだろう」といった心配や「怖いかな、痛いかな」といった不安もそうですが、建物に入るその瞬間も患者さんは緊張をしているという事を医療従事者自身がしっかり理解している事がとても大切だと考えています。普段と違う行動をすると誰でも不安や心配を感じるという事を身をもって知っているはずなのに患者さんが初めて歯医者さんの建物の扉をくぐる時の緊張感を治療する歯医者さん自身がしっかり理解しているのかという点がとても大切になってくるものの、歯医者さん自身はいつも自分の歯科医院に通って治療をしているためその「はじめての場所や行動に伴う不安や緊張」という事柄に目がいかなくなってしまっている可能性が少なからずあるように思えます(関連記事:歯医者さんの日常は患者さんの非日常)。患者さんにとって歯医者に通う事が緊張もなく慣れる事はとても良い事ですが、それを受け止める歯医者さん自身が緊張もなく慣れてしまうという事は患者さんの気持ちから遠ざかってしまう危険性があるのかもしれません。

緊張せずに来院できる阿部歯科の秋の取り組み

阿部歯科の歯科医院の建物の雰囲気や設計はそういった患者さんの心理的な心の壁を少しでも取り除けるようにと考えて作られています。もちろん患者さんが安心して治療を受けられるように治療や説明においても力をいれていますが、入った瞬間から心理的な緊張感があってはやはり患者さん目線とは言い難いのかなと考えています。患者さんは歯医者さんに来ようと思った瞬間から緊張しはじめるという事を治療する当の歯医者さん自身がしっかり理解している必要があると考えています。そういった患者さんの緊張を少しでも和らげられるように阿部歯科では季節に合わせて歯科医院の雰囲気という点でも取り組みを続けています(関連記事:春の取り組み夏の取り組み)。

DSC00105.JPG

この秋には10月31に合わせて親しみやすいハロウィンの置物を設置して少しでも阿部歯科に親しめる雰囲気が出るように取り組みを続けています。ハロウィンの置物は晴れた日は阿部歯科の看板の前に大きなカボチャの置物を置いて院内には小さめのカボチャを何個か並べて歩道から見える花壇にはカボチャを何個か吊り下げて少しでも親しみやすく患者さんの心理的な緊張感を取り除けるように心がけています。ハロウィンのカボチャの置物はすべて私の手作りですが患者さんにも喜んでいただける方が多く、去年と今年とすでにいくつかのカボチャの置物は患者さんの希望でおゆずりしています。カボチャの置物を喜んで欲しがる患者さんがいるのを見るとこういった小さな取り組みが少しでも患者さんと歯科医院の心の壁を取り除き、より多くの患者さんが安心して緊張もなく阿部歯科の入り口をくぐってこられるようになる手助けになっているのかなと思うと患者さん目線としてこういった小さな取り組みでも少しずつ続けていく事が患者さんのためになっていくのかなと強く思えます。

虫歯と砂糖.jpg

虫歯にならないように甘いものは控えた方がいいとみなさんは言われたりまたは誰かに伝えたりする事があるかもしれませんが、ではどれくらいひかえればいいかという話は聞いたことがあるでしょうか?

生活の中で普通に食生活をする上で1日の間で糖分を全く取らないという事は現実的には不可能であるものの、いったいどれくらいの糖分が1日で推奨されているのかと言うのはあまり聞いた事がないと思います。

WHOから推奨される糖分は1日の摂取カロリーの10%以下または5%以下

WHOから疫学的に推奨される糖分の摂取量は1日の摂取カロリーの10%以下、可能であれば5%以下が望ましいと報告しています。

これは一般的な成人で言えばおおよそ砂糖50g以下、ティースプーンで10杯以下、もしくは砂糖25g以下、ティースプーンで5杯以下の量となります。

一日の通常の食事では様々な素材が使われているのでこれらの数字をクリアーするのはなかなか難しいという部分もあります。そして糖分を10%と5%以下にひかえるとどれほど効果があるのかと言うと複数の論文を分析した結果10%以下に糖分をひかえると実際に虫歯のリスクが下がり、さらに5%に下げるとさらに虫歯のリスクが下がるという事が分かっています。

つまり10%(ティースプーン10杯分)や5%(ティースプーン5杯分)に1日の糖分の摂取量をひかえると虫歯になりにくくなるという効果が出るという事になります。

しかし、これらの糖分摂取の制限をしても全く虫歯にならないようになるというわけではありません。それは虫歯が慢性疾患であり歯の脱灰の積み重ねで少しずつできてくるという特徴に原因があります。

ミュータンス菌はいなくても虫歯になる

10年以上も前に言われていたミュータンス菌(Streptococcus mutans)がいるから虫歯になるという話は今ではすっかり変わってしまいました。

(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話

今ではミュータンス菌がいなくても虫歯になるしミュータンス菌がいても虫歯にならない人もいるという事が分かっています。

もちろんミュータンス菌は今でも虫歯の原因の代表的な細菌ですが、それぞれのステージや虫歯の進行段階においてミュータンス菌以外にも様々なStreptococcus属、Actinomyces属、Veillonella属、Propionibacterium属、Lactobacillus属、Bifidobacterium属、Atopobium属といった多種多様な細菌が虫歯に関わっている事が現在分かっています。

そして虫歯になる原因、つまりう蝕の発生は通常では害のない共生状態にある細菌叢(細菌の分布)の状態のバランスがくずれてDysbiosisという悪性度の高い細菌叢の状態に変化する事でおきる事がこの10年で分かりました。

糖分の摂取がう蝕の原因となる細菌叢の変化を引き起こす

口腔内の細菌叢のバランスが取れて共生状態にある悪性度の低いSymbiosisと呼ばれる安定した細菌叢の状態から悪性度の高い細菌叢のDysbiosisと呼ばれる状態になる事をマイクロバイアルシフト(Microbial Shift)と言います。

現在では虫歯だけでなく歯周病もこのようなマイクロバイアルシフトをおこさせないようにする事が疾患の予防として重要な要素となっています。

(関連記事:どうして歯周病になるのか

そしてこのマイクロバイアルシフトはう蝕においては糖分の摂取が一つの原因となっており実際に毎日1日10gの糖分を普段の食事に加えて3ケ月余分に摂取する事で口腔内のマイクロバイアルシフトが起きる事が判明しています。う蝕の原因となるマイクロバイアルシフトが起きると普段の細菌叢の状態とは打って変わり特定の細菌が偏って増殖する悪性度の高い細菌叢へと変化します。

特に確認されたのがStreptococcus属の増殖と分布でその際はたとえミュータンス菌が確認されなくてもエナメル質の脱灰が起きる事が確認されており、ここ10年で判明したMicrobial Shiftによるう蝕発生の説明とも一致しています。

虫歯にしても歯周病にしても体と共生状態にある安定した細菌叢から悪性度の高いDysbiosisの状態へと変化するマイクロバイアルシフトによって疾患が発生するという事が分かってきていますが、このマイクロバイアルシフトを起こす原因を明らかにして予防する事がこれからの歯科では大切な事となっていきます。

池下にある歯医者の阿部歯科でもいかにしてマイクロバイアルシフトをおこさせないようにするかといった点から予防に力を入れています。

(関連記事:阿部歯科で行っている予防歯科

虫歯の場合は従来から言われていた「糖分は良くない」という事が関係している事が改めて分かりましたが、その糖分の量が1日ティースプーン5杯までに抑えてもすべての虫歯の発生を防ぐ事ができるわけではないという難しい点もあります。

12歳の時に虫歯がないから大人になってもないというわけではない

虫歯が歯の脱灰による積み重ねでできるという特性上12歳の時に虫歯が少ないから大人になっても少ないというわけではない事になります。

12歳の時に3本ほどの虫歯治療のある子どもは32歳時点では15本まで増えるという報告があります。そして虫歯は大人になると平均で1年に1ヶ所えるとも言われます

そのため子供の時に虫歯の少ない良好な口腔内状態にあるからと言って人生全体を通して良好な口腔内状態が続くというわけではなく、常に虫歯や歯周病を引き起こす悪性度の高い細菌叢の状態へと変化させない事が大切になってくるのです。

参考文献:

1) New coronal caries in older adults: implications for prevention. S. O. Griffin, et al. J. Dent. Res. 2005.

2) Trajectory patterns of dental caries experience in the permanent dentition to the fourth decade of life. J. M. Broadbent, et al. J. Dent. Res. 2008.

3) Guideline: Sugars intake for adults and children. WHO. 2015.

4) Sugars and Dental Caries: Evidence for Setting a Recommended Threshold for Intake. P. Moynihan. Adv. Nutr. 2016.

5) In-vivo shift of the microbiota in oral biofilm in response to frequent sucrose consumption. A. C. Anderson, et al. Sci. Rep. 2018.

 

宇宙空間の歯科治療.jpg

阿部歯科では千種区や千種区外の患者さんが歯が痛くなっても困らず受診できるように日曜も診療しており通常の歯医者さんが休診となる木曜日も診療をしておりますが、そのような日に来られる患者さんが「やっていている歯医者さんがあって良かった」と安堵されたり、平日に来られる患者さんも「日曜もやっていて安心できる」とお声をいただいています。日曜日もやっている歯医者さんというと代理の勤務の先生に当たるのではと心配される患者さんもいるのですが阿部歯科の場合では院長と副院長が共に戦前の80年前から続く現在の阿部歯科で歯科治療を行っている祖父や父親の後を引き継いで共に治療をあたっているという体制を取っているため、院長と副院長ともに非常に責任をもって治療を行っており患者さんがいつ阿部歯科を訪れても安心できるという強みがあります(関連記事:阿部歯科ができて80年が過ぎました)。

そのような困った時でも地域の患者さんが安心して歯科受診できるように体制を整えている阿部歯科ですが世界中の職業によっては歯科治療を受けるのが非常に困難な職業というのもあります。非常に歯科治療を受ける事が困難な職業の一つに宇宙飛行士があります。もちろん宇宙空間には歯科医院はありませんし、歯が痛くなったので気軽に帰る事もできません。そのような最も歯科治療を受ける事が困難な宇宙空間での歯科事情をお話しようと思います。

宇宙空間でも起きる歯科トラブル

宇宙での歯科トラブルの報告は非常に珍しいもののそれでもひとたび歯の問題が起きるとその対応の難しさから歯科トラブルへの対応はあらかじめ非常に厳密に予防や対応が練られているようです。かつてロケットの打ち上げの際に打ち上げの振動で歯の詰め物や被せ物が取れた際に応急で詰め物をしたり歯の被せ物を付けたり、虫歯が見つかり応急的に処置がされたりといった事が報告されており、1978年には96日間の宇宙フライトミッションで残り2週間の段階で激しい歯の痛みが発生したものの痛み止めで耐え続けたという報告もあります

微小重力下での歯や口の中の影響の研究は非常に少なく、微小重力下では歯周病、虫歯、歯の痛みや顎の骨折の可能性、唾石の発生、口腔癌のリスクが上がるという研究が出ていますが研究自体の規模がまだまだ小さく確実な答えが出ていない状態です。歯周病や虫歯に関しても環境による口腔内衛生環境の維持の難しさや飛行機に乗った時にも起きる圧力変化で歯が痛みを感じているかもしれないといったバイアスを排除しきれないからです。特に歯の神経は痛みしか感じる機能がないため様々な環境の変化による影響をどのように受けているかが分からないためそのような環境下での歯や口腔内への影響がはっきりと解明されるのはまだまだ先だと思います(関連記事:歯の神経を取る時って痛いの?)。

宇宙空間で決して歯科トラブルは軽視されていない

歯のトラブルは報告こそ少ないものの実際に歯の痛みや歯茎の腫れといった問題が発生すると治療の対応の面や計画への影響から古くからどのように対応していくのかといった事が考えられていたようです。今では宇宙空間ではトレーニングを受けた乗組員が用意された歯科治療キットを利用して応急処置をするマニュアルが用意されているそうですが、それでも宇宙空間での歯科トラブルを避けるためにNASAでは打ち上げ6ケ月前に検診を受けその際に歯科治療が望まれる場合は3ケ月前までに治療を終わらせて可能な限り歯が痛くなるなどのトラブルを避ける試みがされているようです。そして計画中の万が一の歯科トラブルに対応するために医療担当者が発射前の打ち合わせで歯科トラブルの際の段取りと対応を用意するというように入念に準備がされているそうです。

最初の頃は歯科治療キットがなかった

有人火星探査計画では18ケ月から24ケ月も計画にかかると言われておりその様な長期間の歯科治療トラブルへの対応の研究がすすめられているそうですが、初期の頃には歯科治療キットそのものが存在しなかったそうです。

最初に宇宙空間での歯科の対応ガイドラインができたのが1957年の事で1960年から宇宙飛行士の歯科トラブル対応訓練が始まりました。1961年から1972年には月への有人宇宙飛行計画が始まりましたがアポロ17号の18日の最長計画を含めて歯科の問題は起きませんでした。1973年から始まった最初の地球周回の宇宙ステーションを作るスカイラブ計画では初めて歯科治療キットが準備されて乗組員の口腔内図解付きで診断と対応マニュアルが用意されて実際に歯科検診も行われました。1980年から構想の始まった国際宇宙ステーション計画では歯科の緊急トラブルに対する対応マニュアルが用意されますます歯のトラブルへの対応が進んでいきました。

このようにどんな環境でも急に歯が痛くなったらどうしようという心配がつきないのであらかじめ定期的に検診と予防処置を受けていざという時に備える事が大切なのですがやはり人によっては歯科医院に行くのをためらってしまうと思います。そのため阿部歯科では患者さんがより受診しやすい環境を整えると共に痛みの少ない治療を実践して多くの患者さんが不安なく歯科医院を受診できるようになれるように努めています(関連記事:痛くない歯科治療をするための取り組み)。

参考文献:

1) The history and importance of aeronautic dentistry. B. Rai, J. Kaur. J. Oral Sci. 2011.

2) Review of Spaceflight Dental Emergencies. A. Menon. NASA report. 2012.

3) Dental Treatment during a human Mars Mission with remote support and advanced technology. S. Häuplik-Meusburger, H. Meusburger, U. Lotzmann. 46th International Conference on Environmental Systems. 2016.

 

マイクロバイアルシフト.jpg

歯周病は成人の80%もの人が罹患していると言われる世界で最も有病者の多い疾患ですがその原因はかつて考えられていた特定の細菌による感染の結果から口腔内の細菌叢の変化とそれに伴う免疫反応の過剰反応による結果おきるというようにここ10年で考え方が大きく変わってきました。

(関連記事:歯周病に関わる免疫細胞

かつて言われていた歯周病の原因菌

歯周病の原因菌としてはポロフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、 トレポネーマ・デンディコラ(Treponema denticola)、 タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)という Red complexと総称される細菌群が引き起こしていると考えられていましたが現在ではこれらの細菌がいなくても歯周病になりえ、さらにこれらの細菌が口腔内から分離されても歯周病になっていない人もいるという事が分かっています。

(関連記事:歯周病は誰からうつる?

元々Red complexとは歯周病患者から細菌を分離してその歯周病の程度と分離頻度の多さにより分類されたもので、その中でもRed complexと呼ばれる赤色でまとめられた菌群が疫学的に最も歯周病に大きな影響を及ぼすという事で歯周病の原因菌として研究がすすめられました。

(関連記事:歯周病に関連する細菌

特定の細菌ではなく細菌集団全体の悪性度の変化により起きる歯周病

ある特定の細菌から歯周病が起きていると考えられていた10年前とは変わり今ではマイクロバイアルシフト(Microbial Shift)と呼ばれる細菌集団全体の悪性度の変化により免疫が過剰反応して歯周病が起きると考えられるように変化してきました。

そして、Red complexの細菌群は歯周病を悪化させる強い要因になりえるもののそれ自体がいなくても歯周病になりえるため、特定の細菌による歯周病の発症という考え方から細菌集団全体の悪性度の変化、Symbiosisと呼ばれる共生状態にある安定した細菌集団の状態からDysbiosisと呼ばれる安定性が失われて悪性度が増した細菌集団の状態へと変化する事でその結果免疫が過剰反応し歯周病になると考えられるようになってきました。

マイクロバイアルシフトという考え方は虫歯の原因論に関しても大きな影響を及ぼしており、虫歯の原因に関してもここ10年ほどで考え方ガラリと変わりました。

(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話

細菌集団の悪性度の変化とは

共生状態にある安定した悪性度の低い細菌集団の状態から悪性度の高いDysbiosisの状態へとマイクロバイアルシフトする事で細菌集団内では様々な変化が起きます。

細菌同士の相互作用により強いプラークを作り出すと共にお互いの代謝産物を相互に活用し、混合感染によるお互いの細菌の遺伝子発現の変化とタンパク質発現、それに対する過剰な免疫反応と炎症に伴う出血による細菌への栄養供給、それらの結果起きる歯止めの効かない細菌の増殖と炎症反応という悪循環を引き起こす事となります。現在ではそのような悪循環の結果が歯周病を引き起こす原因だと考えられるように変わってきたのです。

千種区にある歯医者の阿部歯科ではこのような歯周病の悪循環に対応するために顕微鏡や特別な器具を用いた処置によって治療を行っています。

(関連記事:阿部歯科では健康保険内、別途費用なしで特別な歯周病検査・処置を行っています

参考文献:

1) Periodontal microbial ecology. S. S. Socransky, A. D. Haffajee. Periodontol 2000. 2005.

2) Microbial Shift and Periodontitis. A. B. Berezow, R. P. Darveau. Periodontol 2000. 2011.

 

 

 

 

 

アスリートと歯科.jpg

今池から5分の歯医者の阿部歯科には様々な職業の方が来院されますが、様々な職業の中で仕事内容によっては特定の疾患にかかりやすくなる職業があります。職業病と呼ばれる疾患なのですが、歯科領域においても酸を扱う職業で酸の影響で歯が溶けてしまい虫歯のようになる酸食症という疾患がありますが、職業病と呼ばれなくとも特定の仕事を生業にしている人が虫歯や歯周病などになりやすい事があります。その中でもスポーツを仕事にしている人、特にプロのアスリートは虫歯や歯肉炎・歯周病リスクが高まるという事が昔からしばしば言われる事をご存知でしょうか?

記事の追記:2019年10月25日

通常よりも多く歯を磨いているのに

オリンピックゲームのフィールド、トラック競技やスイミングなど、さらにはプロスポーツ選手など多くの競技においてトップアスリートは一般的な人に比べて1日に2回以上歯を磨きフロスの使用率が高いにも関わらず約半数が虫歯を持っており、酸食症も約半数ほどが疾患を抱えていると言われています(関連記事:デンタルフロスの効果的な使い方と頻度)。さらには歯肉炎・歯周病の罹患率も90%ほどに達していると言われます。このような虫歯や歯肉炎・歯周病による痛みがスポーツのパフォーマンスにも影響を及ぼしているという報告もたびたび上がっており、トップアスリートの約3分の1が何らかの歯科疾患により練習や試合のパフォーマンスに影響を訴えていると言われます。

アスリートの虫歯は職業病?

私も大学の時は陸上部に所属していたのですが、夏の暑い中での練習や試合中には電解質や糖質補給としてスポーツドリンクやエナジーバーを摂取していました。これらの電解質や糖質の補給は汗を多くかき激しく体を使うスポーツにはとても大切なものと言えるもので汗によって失われた体内の電解質の補給や即効性のエネルギー補給に糖質は欠かせないものとも言えます。トップアスリートにおいては約90%がスポーツドリングを利用し、エナジージェルも約70%、エナジーバーでは約60%のアスリートが何らかの形で利用していると言われています(関連記事:1日にどれだけ甘い物を食べると虫歯になるのか)。これらを摂取して栄養補給する事が練習や試合のパフォーマンスにも大きく関わると同時に口腔内が酸性環境になってしまうという難しい点もあります。

そのため、職業の特性上どうしても口腔内環境が酸性になりやすいという事がアスリートにおいて一般的な人よりも歯を磨く傾向が高いのに虫歯や歯肉炎・歯周病になりやすいという傾向を引き起こしてしまっています(関連記事:正しい歯磨きの回数や時間は?)。激しいスポーツをする上で電解質や糖質の摂取はとても大切な事なので虫歯はアスリートの職業病とも言えるのかもしれません(関連記事:「ミュータンス菌が虫歯の原因に」というのは10年前の話)。さらにトップアスリートにおいて半数ほどが1年以内に歯科医にかかっており、歯磨きの頻度と合わせてむしろ一般的な人よりも口腔内衛生環境に関心を持っていると考えられるものの仕事の特性上歯が影響を受けやすくなっているのです。そのため、アスリートに対する口腔内衛生環境への対応が世界的に現在も模索されています。職業によっては様々な歯科事情が多くありますのでそれぞれの職業の特性に合わせた歯科治療への対応がとても大切になるのです(関連記事:宇宙空間での歯科事情)。

参考文献

1) Oral health and impact on performance of athletes participating in the London 2012 Olympic Games: a cross-sectional study. I. Needleman, et al. Br. J. Sports. Med. 2013.

2) Oral health of elite athletes and association with performance: a systematic review. P. Ashley, et al. Br. J. Sports. Med. 2015.

3) Oral health and performance impacts in elite and professional athletes. J. Gallagher, et al. Community Dent. Oral Epidemiol. 2018.

4) Oral health-related behaviours reported by elite and professional athletes. J. Gallagher, et al. Br. Dent. J. 2019

 

 

【お電話でのご予約】TEL:052-751-0613
診療時間
10:00~14:00

16:00~19:30

▲ 土日:9:30~13:00 / 15:00~18:00 休診・・・祝日
阿部歯科 特別コラム

医院情報


千種区の歯医者 阿部歯科

〒464-0074
愛知県名古屋市千種区
仲田2-18-17

【お電話でのご予約】
TEL:052-751-0613

ご予約・お問い合わせ 平日の遅めの時間と土日が予約が取りづらくなっていますので、お早めのご予約をおすすめします

駐車場:あり

地下鉄池下駅より徒歩5分、
今池駅から6分

千種区の歯医者さん|Copyright © 阿部歯科. All Right Reserved.
Web Management Exe.
ご予約
ご相談
ページ
最上部へ