名古屋市千種区の歯科医院 阿部歯科 院長です。患者様からのご質問やお悩みへお応えしたいと思います。
また最新の歯科治療に関する話題など、幅広くお届けします。
歯科治療を行う際、とても重要な歯科材料。
より良い歯科治療を行うためには、優れた型どり材の使用が欠かせません。
現在、様々な歯科材料があります。
日進月歩で進む技術革新の中、以前から未だに使われている材料もあれば消えてしまった歯科材料まで多くあります。
今回、歯医者さんでよく行われる歯の型どりの際、使用する材料(専門的には印象材といいます)についてお話ししていきたいと思います。
患者さんも、一度は歯の型どりはしたことがあるのではないでしょうか?ですが、
どういった材料が使われているかを見る機会はあまりないかもしれません。
【記事の更新日】2020年11月12日18:00
歯科治療時に使用する材料:アルジネート印象材
歯科医院で最も使われている型どり材料がこちらです。
一般的に合わせの型どり(専門的には対合)を行う際に使用し、お口の型どりをする時にゴムのようなものを
グニッといれている材料がアルジネート印象材です。
ただし、このアルジネート印象材は精密さにかけます。
再現性は75μmで、精密な型どりとしては25μmが望ましいのですが、
この型どり材だけで本命とする方の印象(本印象、精密印象)は行いません。
精密な型どり時に使用:寒天印象材
精密な型どりをする際は寒天材料を使用します。寒天だけでは印象ができませんので、
前項でご説明しましたアルジネートと合わせ、型どりをする「連合印象」という方法で精密な型どりを行います。
アルジネート印象材は水で練り使用しますため冷たい感じがしますが、寒天印象材は暖めてから使用します。
口の中へ入れる時、暖かいものが入りますとドクターから言われた時は寒天材料を使用しています。
寒天印象材の準備として、煮沸・テンパリングをしなければなりません。
準備が煩雑ではありますがアルジネート印象材と比較しても、寒天印象材は弾性回復率は98.8%で弾性ひずみは11%、
再現性も25μmと優れています。アルジネート印象材の利点と寒天印象材の利点を合わせることで、
連合印象という方法を歯科医院では取り入れています。
型どり材:縮重合型シリコン印象材
縮重合型シリコン印象材は以前からあるポリサルファイドラバー印象材のデメリットを補う印象材です。
この縮重合型シリコン印象材は重合反応により、アルコールを生じてしまうことが欠点で、
印象材の時間とともに小さくなってしまう(収縮率が大きい)ため、実際には臨床上使い勝手があまり良くありません。
そして、その改善のために付加重合型シリコン印象材が開発されました。
縮重合型シリコンラバーはハイドロポリジメチルシロキサンからできています。
反応はアルキルシリケートによって起き、エラストマー形成がシリコンポリマーとアルキルシリケートが反応し、
先程デメリットとしてお話したエチルアルコールが副産物として、硬化反応時に生じることとなります。
付加重合型シリコン印象材(ポリビニルシロキサン)
縮重合型シリコン印象材の改善版として開発された、付加重合型シリコン印象材はベースとキャタリストを
混和すると白金触媒活性シラン基によってベースポリマー付加反応重合が起きます。
そしてこの付加反応で先程のエチルアルコールのような副産物を生じないので、
縮重合型シリコン印象材やポリサルファイドラバー印象材と比較しても寸法安定性が良い利点があります。
ちなみにシリコンラバー印象材は再現性としては25μmで、弾性回復率は99.5%、
弾性ひずみは5%と寒天印象材と比較しても優れています。
臨床上はマルチプルダイシステムによる石膏模型作成で、より精度を高めることが可能となります。
24時間後収縮率は0.6%となります。寒天アルジネート印象での石膏模型作成はおもにダウエルピンによるものとなります。
歯科治療時の型どり材:ポリサルファイドラバー印象材
ポリサルファイドラバー印象材は、古く1950年代からデンチャーやクラウンブリッジに幅広く使用されてきました。
しかし、その後に開発されてきた寒天印象材やシリコンラバー印象材、ポリエーテルラバー印象材、
そして付加重合型シリコン印象材の登場により使用頻度が減ってきました。
ベースペーストはポリサルファイドポリマーとメルカプタン、ペンダントメルカプタンを含んでいます。
ベースペーストの80%がポリサルファイドポリマーで、硬さ調整のために20%弱に過酸化チタン、
硫化亜鉛、シリカそして可塑材を含んでいます。
そしてこれらの含有量を変えることによって、シリンジ用ライトボディー、
トレー用ヘビーボディーそしてその中間のレギュラーボディーの3種類に分けられます。
キャタリストペーストはベースペーストと交叉結合反応をして固まります。
酸化材としては酸化鉛、促進剤としては硫黄、ペースト状にするためにフタール酸ジブチル、非反応性油、
重合補助目的にステアリン酸を含んでいます。
ベースペーストとキャタリストの混和によって酸化鉛触媒で、
ベースペーストのメルカプタン基重合反応が引き起こされまして交叉結合されます。
その後にポリサルファイド印象材はペースト状からゴム状になっていきます。
型どり材により固まる時間は異なるため、注意が必要
寒天アルジネート印象やアルジネート印象は2分くらいですが、
当院でも時々使用するシリコン印象材は固まる時間は約5分と長めです。
患者さんが口を開けて印象材を保持している時間が長くなってしまうため、辛くなってしまうデメリットがあります。
そのため、用途に応じ寒天アルジネート印象とシリコン印象を使い分けています。
それが石膏模型作成においてダウエルピンでいけるケースなのか、マルチプルダイシステムを
適応させた方が良いかを考えて使い分けるようにしています。
名古屋市千種区の阿部歯科では型どり材にもこだわっています
当院では型どり材についても、こだわり、より良い治療を心が得ております。
型どりがうまくできるか否かで、その後の治療精度も変わってくるため、
言うまでもなく型どり材は歯科医院での治療時に重要です。
【記事の執筆者】
千種区の歯医者 阿部歯科院長 阿部 丈洋(あべ たけひろ)
≪院長の主な経歴≫
1978年: | 名古屋市千種区生まれ |
1997年: | 名古屋 東海高校 卒業 |
2003年: | 奥羽大学 卒業 |
2003年: | 愛知学院大学歯学部研修医、稲沢市民病院勤務 |
2004年: | 愛知学院大学第2口腔外科 勤務 |
2005年: | 岐阜県立多治見病院 救命救急、麻酔科レジデント |
2006年: | 愛知県済生会病院 歯科口腔外科 医員 |
2009年: | 加藤歯科 勤務 |
2016年: | オカダ歯科クリニック 勤務 |
2018年: | 千種区の阿部歯科 院長就に就任 |