痛みのある患者さんが、その痛みに対しまして恐れを抱いたりひどく心配したりしますのはまれではないことであります。恐れや心配におきましては、その原因が不明であったりよくわからなかったりしたときに著しくなる場合があります。従いまして、患者さんの恐れや心配を、治療の早い段階で処理することが重要になってきます。
この事につきましては、患者さんへの指導によってできるであろうですし、それにはその異常や病気の病態生理を、患者さんへが理解できる形で説明して、よく話し合うことが必要となると思われます。患者さんは自分がなにかわからない、あるいは生命を脅かされるような病気を患ったのではないことで納得するはずです。
癌
癌などの重い病気ではないかと強く恐れている患者さんにおきましては、早く見いだして、正しい診断結果についてお話しすることで、その不安を解決するようにしていかなければなりません。患者さんが恐ろしい病気ばかり気にしていて、診断や治療にあまり進展が見られないことはまれではありません。
人間行動
人間行動の変化を含めました、すべての治療のなかで、もうひとつの重要な要素としましては、患者さんへの動機付けがあります。多くの口腔習癖や咬合異常の長期的な管理に当たりましては、患者さん側の強い意思と努力が要求されることとなります。歯医者さんは情報、熱意、援助を与えて、そして患者さんの動機付けを助けられるような適切な強化対策を講じなければなりません。
行動強化理論
人間のたいていの日常的行動におきましては、心理学者が偶発的事項による強化とよんでいること、つまりは、個人にとってその行動の結果が肯定的か否定的かによりまして、コントロールされているようであります。例えば、赤信号で止まると言う行動は、事故や交通違反切符が切られるのを避けたいことによってとられるとも考えられます。
口腔習癖抑制
口腔習癖を抑制するような偶発的事項による強化におきましては、内的なものであるとも言えます。例えば、氷を噛むという癖につきましては、ある口腔満足感によって強化されますが、このことを歯医者さんが押さえることは簡単にはできないと思います。つまりは、歯医者さんがこの行動を変えることは難しくて、患者さん側にあると思われます。
行動変化
行動を変えるということにつきましては、肯定的な強化あるいは否定的な強化の強さの度合いが関係していると思われます。ある行動を変えるためには、術者あるいは患者さんが、その行動を現在維持しているものよりもより強く働く強化偶発的事項を形成しなければならないのです。
千種区池下の歯科医師 阿部丈洋