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こちらはコラム記事になります。
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歯医者さんでの抗菌薬(抗生物質)の使用は減らした方がいいの?

歯医者での抗生物質の処方.jpg

今池からすぐの阿部歯科では患者さんが来院した際に歯が痛いといったり、
口の中が腫れたという場合に抗生物質を処方して出す事があります。

歯医者さんでは口の中の感染に対して抗生物質は比較的よく出されるのですが、
アレクサンダー・フレミングが1928年に人類最初の抗生物質であるペニシリンを
発見してハワード・フローリーが1940年に臨床現場にペニシリンを用いるようになってから100年がたちました。

しかし、当初は多くの細菌に対して有効であったペニシリンも、
この50年ほどで耐性菌が増え、有効性が下がってしまいました

それでもその後の様々な抗菌薬(抗生物質)の発見によって多くの感染症を抑えることができているものの、
次第に細菌が耐性を獲得しはじめています。

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの、
抗菌薬の断続的な使用による細菌の抗菌薬耐性の獲得が話題になっているのもここ最近の話ではありません。

歯科治療で抗菌薬の処方は控えた方がいい?

抗菌薬の断続的な使用に対する耐性獲得は歯科医療現場でも話題となりますが、
実際に口腔内の様々な感染症に対して抗菌薬が有効であるのは違いありません。

ただ、2050年には抗菌薬に耐性を獲得した細菌の影響で年間1000万人が死亡すると2014年にイギリス政府から試算されたように、
抗菌薬の有効性は耐性菌の誕生によって問題化しています。

歯科医院で目にする多くの口腔内疾患は細菌感染に由来する感染症も多く、
感染を抑える上で抗菌薬を出すという事自体は必要となります。

特に虫歯や歯周病といった感染からありとあらゆる口の中の病気が
起きる歯医者さんの現場では抗菌薬はなくてはならないものだとも言えます。

しかし、実際には過剰に抗菌薬が出されているという可能性もあります。

例えば、口腔内に歯由来の膿瘍を形成した場合には適切にドレナージ(膿の排出)を
行えば抗菌薬を処方してもしなくても経過には影響が出ない場合もあるというガイドラインがあるものの、
膿瘍のドレナージを行うと共に抗菌薬を常に処方する事が基本的に習慣化しています。

膿瘍を形成している場合は菌血症といった状態になっている事もあるため、
予防策としても抗菌薬を処方する事が通常の流れになっています。

一方で世界的には可能な限り抗菌薬の処方を減らそうという流れができつつあり、
2015年や2016年にもニューヨークの国連総会やWHOで抗菌薬の使用を減らそうという取り組みの声明が出されるようになっています

抗菌薬を使わないようにしようという事ではなく、抗菌薬の適切な使い方をしようという流れが世界的に広がりつつありますが、
これは日本の歯科医療においても避けられないのではないかなと思います。

今はまだ、抗菌薬が効いていますが、細菌の抗菌薬による耐性獲得は日に日に増えていっているので
いつかは効きが悪くなる時が来るだろうというのが一般的な予想となっています。

歯を由来とする膿瘍(膿)や根管内の感染、歯周病に関しても適切な抗菌薬のガイドラインが整備されつつあります。

歯周病に関しても、最初の段階から抗菌薬を使うという事は適切ではないとされており、侵襲性の高い歯周病の状態や、機械的清掃を実施してそれでも改善しない場合に初めて抗菌薬の使用を慎重に考えるというのが世界的な流れとなっています。

今でこそ有効性のある抗菌薬ですが、効き目のある今だからこそ適切な使い方をして今後も
長くその有効性を必要な時に発揮できるようにしていく事が歯科医療現場でも求められているのです。

実際にかつて高い有効性を誇ったペニシリンも歯を由来とする膿瘍において、
今では55%以上の細菌叢が耐性を獲得してしまっているとも報告されています。

耐性とは違う寛容(Tolerance)

薬を飲む.jpg

細菌には抗菌薬の断続的使用による遺伝子変異によって、抗菌薬に対する耐性獲得が起きる可能性があります。

しかし、一方でTolerance(寛容)という機構も存在します。

耐性菌は抗菌薬にたいする感受性が下がる(効き目が悪くなる)事で抗菌薬を無効かする事ができ、
複数の抗菌薬に対する耐性菌を多剤耐性菌と呼びます。

一方で遺伝子変異を起こさず抗菌薬に対する感受性が変わらないまま(効き目が変わらないまま)抗菌薬の効果を避ける菌の進化も存在します。
それをTolerance(寛容)と言います。

Toleranceにおいては、抗菌薬の影響を避けるために細菌自身の発育を止めたり、
遅くする事でその効果を避け、抗菌薬の影響を受けないようにします。

細菌自身が再度発育を開始すると抗菌薬は効果を発揮するため、耐性を獲得しているわけではありません。

しかし、抗菌薬の断続的使用によって細菌は発育を一時的に止めたり、遅くしてToleranceによって抗菌薬の影響を避け、
そのうえで抗菌薬に対する耐性を獲得するという機構も持ち合わせています。

この、耐性、Toleranceのいずれにせよ抗菌薬の断続的な使用によって発生する可能性があるため、
今後は抗菌薬の適切な使用を考えていく事が歯科医療においても大切になってくると思われます。

今池の阿部歯科でも歯医者さんという医療の特性上、抗菌薬を必要に応じて処方していますが、適切に出すようにつとめています。

参考文献:

  1. 1)Why we must reduce dental prescription of antibiotics: European Union Antibiotic Awareness Day. Lewis M.A. Br. Dent. J. 2008.
  2. 2)Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for the health and wealth of nations. O’Neill J. The Review on Antimicrobial Resistance. 2014.
  3. 3)Will 10 Million People Die a Year due to Antimicrobial Resistance by 2050? de Kraker M. E., et al. PLoS Med. 2016.
  4. 4)Antibiotic tolerance facilitates the evolution of resistance. Levin-Reisman I., et al. Science. 2017..

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