下唇に小さな丸い豆のような腫れができる事があります。唇をよく噛む方で豆のような腫れが潰れたりできたりして痛みもない場合はもしかしたらそれは粘液嚢胞かもしれません。
こんにちは、千種区の池下にある歯医者の阿部歯科です。今回は粘液嚢胞という病気についてお話をしようと思います。
粘液嚢胞
これは良性の偽嚢胞と呼ばれる疾患です。組織学的には唾液が結合組織中に停滞して嚢胞様構造を作っています。嚢胞とは通常は炎症によって上皮性組織が増殖し風船状に結合組織内もしくは骨内で炎症性細胞の浸潤を伴い膿を抱えながら膨隆していく疾患なのです。一方で今回お話しする粘液嚢胞の様な偽嚢胞は上皮性組織の増殖を伴いません。結合組織内には膿の代わりに唾液が封じ込められておりわずかに炎症性細胞の浸潤が見られるといった様に炎症によって上皮性の増殖や感染が起きる嚢胞とは基本的に違います。
なぜ粘液嚢胞ができるのか
唾液を作る組織は唾液腺と呼ばれますがこれには大唾液腺と小唾液腺という種類があります。このうちの小唾液腺の出る経路に導管という組織がありますが、例えば唇を噛む癖があるとこの導管が破れて唾液が漏れ出して結合組織内に貯留する場合があります。丁度水道管が破れて地面の中で水が溜まってしまう様に唾液が結合組織の中に溜まり続けてやがて腫れてくるのです。この粘液が停滞している状態が粘液嚢胞と呼ばれる状態で粘液停滞嚢胞とも呼ばれます。上で書いた様に通常は嚢胞は上皮性の増殖を伴う疾患なのですが、以上の様な疾患の原因から粘液嚢胞は嚢胞と名前がついていますが偽嚢胞に分類されます。
粘液嚢胞は治す必要があるのか
粘液嚢胞は下唇に比較的出来やすく、唇を噛んでしまうお子さんにできる事がしばしばあります。そのため何度も粘液嚢胞を噛んでしまう場合は外科的に摘出をする事があります。通常、粘液嚢胞は腫れたり潰れたりして治ったり腫れたりを繰り返します。ただ、そのまま腫れがひいて治る場合もありますのでしばらく様子を見て腫れがひかない様なら外科的に摘出をする必要が出てくる場合もあります。その場合は粘液嚢胞ができるのは比較的お子さんに多いので暴れずに治療を受けられるという事が必須の条件になります。摘出の際は当然メスや針を使うので暴れてしまうと非常に危険で治療を中止せざるをえないからです。
粘液嚢胞は下唇以外にもできる
粘液嚢胞は唾液腺から伸びる導管の破損によって唾液が結合組織内に漏れ出した状態なので下唇以外にも唾液の出てくるところにはできる可能性があり、例えば口の中の底の部分や舌にもできる事があります。