どんなにうまく仕事や物事をこなせる人にも必ず初めてその事を経験した瞬間があるのと同様に、どんな歯医者さんにも当然初めて患者さんを治療したという瞬間があります。
初めて患者さんに触れる前に歯医者さんは学生の時に模型や人を模したマネキンで治療の訓練を積むのですがその訓練の方法も最近では少しずつ変わりつつあります。
池下の阿部歯科の院長と副院長も学生の時はもちろんこのような訓練を積んでいたのですが当時にはなかった実習方法も今では開発されてきています。
従来からある模型実習
私がまだ歯学部の学生だった頃の治療の訓練は昔からある模型や人を模したマネキンを使った治療の訓練でした。
模型ではプラスチック製の歯を使ってどのように歯を削ればいいか、感染してしまった歯の神経を取ればいいのかといった解剖学的な知識の習得と共に治療技術の訓練を行っていました。
時には学校の実習授業中に教員の先生の指導の基で消毒済みの抜歯された実物の歯を石こうに固定して実際に削って練習する事も行っていました。
人を模したマネキンの実習ではマネキンの口にプラスチック製の歯を付けて実際に患者さんを治療するような姿勢、状況で治療のシミュレーションを行う実習と訓練を行っていました。
これらのプラスチック製の歯やもしくは消毒済みの抜歯された歯を使った従来からある模型実習は古くから治療手技の獲得のために世界中で行われています。
このような実際の削る対象を持った実習方法とは別に最近ではバーチャルの仮想シミュレーション上で治療を行うという手法も出てきています。
仮想空間で削る歯
仮想空間で削る歯はその症例の選択はもちろん歯を削った時の感触や硬さを再現して、使う道具の選択といった事も行えます。
飛行機のコクピットのように機械に向かって歯を削るドリルを模した器具やその他の道具を模した棒を握ってコンピューター上で道具を切り替えながら仮想上の歯を削っていきます。
仮想のシミュレーションを行う場合は最も難しくなるのがやはり歯を削った時の感触や角度となりますが、最新のシミュレーターでは歯の構造による感触の変化、虫歯になった歯を削った時の感触、見る角度の変化など様々な要素が仮想上で再現されています。
このような最新のシミュレーターは普及はまだまだですが、私の働いていたアメリカのペンシルベニア大学歯学部でも取り入れられて教育に用いられていました。
仮想上で歯を削る訓練をする場合のメリットはやはり様々な症例を体験できるという事だと思います。一方で従来からある模型を使った実習にももちろん利点はありますのでそれぞれの良いところを取りながら複数の実習と訓練がこれからはすすんでいくのかなと思っています。