歯周病は細菌と免疫機構の関わりによって起きる恒常性の維持の破綻によって引き起こされますが歯周病の関連細菌にPorphyromonas gingivalisがいます。
P. gingivalisはTannerella forsythiaやTreponema denticolaと合わせて歯周病の発生と関連が深い細菌群として同定されレッドコンプレックスと命名されました。そこで今回はこのレッドコンプレックスの内のP. gingivalisの病原性に関してお話をしようと思います。
記事の追記:2020年6月14日
Porphyromonas gingivalis
グラム陰性の編性嫌気性菌で空気の存在下では培養できません。
血液寒天培地上で培養すると通常は黒色のコロニーを形成して独特の強い臭いを発生させます。この様な細菌の発生させるガスも口臭の原因のひとつとなります。
このP. gingivalisは歯肉の上皮細胞に付着侵入する能力があり、細胞内に侵入する事で口腔内で生き延びる能力があるとされます。
細菌学的には様々な病原因子が指摘されており、ジンジパインと呼ばれる病原因子は菌体より分泌されて細菌自体の栄養の確保などに貢献する事でP. gingivalisの生存に寄与します。
ジンジパインの機能は様々なものが報告されており、栄養の獲得の他にコロニーの集積や細胞への侵入、免疫機構の一部から逃れるなどの役割があると言われて言われています。
他にも莢膜多糖や繊毛などの病原因子があり、免疫機構からの回避や細胞への付着など様々な病原因子が報告されています。
レッドコンプレックスの細菌群はよく研究がされている
レッドコンプレックスの細菌群は歯周病関連細菌として臨床的にも基礎医学的にもよく研究がされています。
歯周病は病原性の細菌と免疫機構の間に起きる恒常性の維持の破綻によって引き起こされていますが、何かひとつの単独の細菌のみが歯周病を引き起こしているわけではありません。
しかしながら疫学的にはP. gingivalisの関わりが深く指摘されており歯周病の発生において重要な役割を果たしているという様に考えられています。
歯周病は免疫反応の結果である
レッドコンプレックスが歯周病において注目されるためどうしても細菌に目がいってしまいますが歯周病は究極的には免疫機構の破綻の結果であるという事も忘れてはいけないとても重要な要素のひとつです。
それは歯周病の臨床症状である歯槽骨の吸収や炎症による血管透過性の行進、発赤、腫脹などは破骨細胞や免疫細胞などによる作用の結果だからです。
齲蝕(虫歯)の場合はStreptococcus mutansを代表とする齲蝕を引き起こす細菌が直接歯質を侵食するのに対して、歯周病の場合は細菌感染の結果免疫機構のを含めた歯周組織での恒常性の維持の破綻に結びつき発症するという流れに大きな違いがあります。
(関連記事:歯周病で骨を溶かす破骨細胞)
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