千種区の歯医者の阿部歯科です。アレルギーには色々種類がありますが特にその中でも今回は重篤なアナフィラキシーショックに関してお話をしようと思います。頻度は低いですが、歯医者でもごく稀にアナフィラキシーショックが見られる事がありますアナフィラキシーの場合は非常に早急な対処が必要なため迷走神経反射や過換気症候群などと鑑別をしっかりして素早く対処する必要があります。
記事の追記:2019年3月18日
アナフィラキシーショックとは
アレルギー(※アレルギーとは)の種類の内でI型アレルギー、別名で即時型アレルギーとも呼ばれるアレルギーによって重篤な反応が起きてショック状態を呈したものです。アレルギー反応の延長で循環器系に大きな影響が起きてしまった状態とも言えます。I型アレルギーに付随して起きてしまった症状と捉える事もできます。アナフィラキシーショックではアレルゲンとなる抗原が体の免疫機構に関わるIgE抗体に結合する事から反応が始まります。歯科医院で使われる様々な薬剤や材料によって人によってはその人の持つIgE抗体がそれらの薬剤や材料を異物として認識して結合し、抗原抗体反応が始まる事によってアレルギー症状へとつながります。
歯医者でアナフィラキシーショックが起きる場合は、歯科で使う薬剤の成分や材料の成分が体の免疫機構のひとつであるIgE抗体に存在する抗原認識部位で異物とされます。IgE抗体の抗原認識部位と抗原の分子(エピトープ)とが結合し、それに続き免疫細胞のひとうである肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンが放出されて急激な血管拡張や血管透過性の亢進、それらに伴う急激な血圧低下や循環不全、浮腫など様々な問題となる症状を引き起こします。ひとたび急激なアナフィラキシーショックが歯科で起きた場合は非常に素早い対応が求められます。それは急激な血圧低下にともなう循環不全のみでなく、上気道における粘膜の浮腫により呼吸不全を引き起こす可能性があるからです。これらの症状はひとたび起きると症状の進行が急速で血圧低下への対応のみならず素早く呼吸の管理をするようにしなければ頻呼吸、さらには気道閉塞により息ができなくなり陥没呼吸の臨床症状を経てチアノーゼへと至ってしまう可能性があります。
I型アレルギーとは
アレルギーの型にはその発生機序によってI型からIV型まで分類されます。I型アレルギーと聞くと聞きなれませんが花粉症や食物アレルギーもこのI型アレルギーに含まれます。この型のアレルギーでは花粉や食べ物などのタンパク質が抗原として認識されるところから始まります。食べ物や花粉や他の様々な物質は色々な種類のタンパク質でその物質が構成されています。その中のタンパク質はそれぞれ特徴的な3次元的立体構造を持ちます。これは連なったアミノ酸が3次構造や4次構造を作る事で形作られその構造の中の一部の形が免疫機構によって抗原として認識されます。これをエピトープと呼び、このエピトープに体の中で作られた抗体が付着していきます。
I型アレルギーではIgE抗体という種類の抗体がエピトープに結合しこのIgE抗体を介して免疫系の肥満細胞などの免疫細胞が感作されます。感作された肥満細胞などの免疫細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され体に炎症反応が起きます。この炎症作用が急激に起きて血管拡張、浮腫、腫脹が強く出る事で血圧低下によるショック状態や呼吸困難を引き起こしたものがアナフィラキシーショックと呼ばれる状態です。
アナフィラキシーショックと過換気症候群では全く逆の対応が必要となる
歯科治療中に気分の悪さや息苦しさを訴えた際に他の迷走神経反射や過換気症候群など(※歯医者さんで治療中に気分が悪くなる色々な原因)と絶対に間違えてはいけません。それはアナフィラキシーショックが非常に素早い対応を必要とする状態で急激なアレルギー症状を呈する所見を絶対に見落としてはいけないからです。そのためにはそれぞれの状態の発生機序を理解してどういう原因で起きるのかを理解していないとそれに続くさまざまな付随症状を理解することができずに鑑別診断を行えなくなってしまいます。
特に致命的となる呼吸管理に関してアナフィラキシーショックによる気道閉塞、それに伴う酸素不足によるチアノーゼと、過換気症候群による頻回な呼吸によって引き起こされる呼吸性アルカローシスでは全く逆の対応となるためこれらの鑑別診断を確実に素早く診断する事がいざという時にそなえて歯科医療の現場でも必ず必要な知識と技術となってきます。
歯科医療の現場でも患者さんがどのような時でも安心して歯科治療を受けられるように幅広い知識が歯科医師にも必要とされるのです。
※※※千種区池下の歯医者は審美歯科・口腔外科・歯周病治療の阿部歯科※※※