歯の治療で詰め物をしていく際に柔らかい練り物で口の中の型を取った経験のある患者さんもいると思いますが将来的に今あるような口の中の型取りの方法が減っていく可能性があるという事をご存知でしょうか
口の中の型取りのこれからの変化
歯や口の中の型をとる事を印象採得と言いますが従来使われている練り物を練って口の形を取っていく方法が今後は光学印象という画像撮影を利用した印象採得の方法に変わっていくと言われています。この方法では画像解析によって得られた歯や口腔内の3次元的なデータを基にしてミリングという削り出しによって詰め物や被せ物を作っていくことになります。
光学印象とは?
光学印象とはその名の通り光学的な映像を元にして対象となる歯や口腔内の状況を再現する方法です。この方法では実際の対象物となる歯に対して自然光もしくはカメラから照射された光で歯を照らし歯の様々な部位の立体的な位置、つまりx軸、y軸、z軸を規定して3次元的な立体を構築して行く方法です。この3次元的な位置の決定方法は様々な方法があり、3角測量やフォーカス、多数の画像からアルゴリズムで解析するなどの方法で測定する点の位置を確定していきます。この光学印象で使われるのは小さなカメラで、このカメラで口腔内を撮影する事で立体画像を構築していくため練り物を使った型取りのような不快感はありません。しかしこのカメラによる画像解析をしていく際にも必要な事があります。それは正しく映像をカメラにおさめるという事です。当然の事のように聞こえますがこれは非常に厳密な意味で画像を分析する必要性が出るため歯の表面の光沢による露出オーバーをなくすために口の中にパウダーをまぶして光沢を拡散させる必要などが出てきます。パウダーを使わない方法として偏光フィルターを使ったものなども開発されていますが、画像を正しく得るために必要なのはこの他にも水分による光の屈折をなくすために乾燥状態で撮影したりする事と複雑な形態による画像解析のミスをなくすために尖った部位は無くして滑らかに歯の形を形成しないといけないといったような制限が出てきます。
正しく画像解析ができたら
それらの方法を使って部位ごとの座標を決定したらそれらの点を結んでポリゴンで作られた口腔内の状況を再現してそのデータに対して詰め物や被せ物を設計するという工程を経て実際の詰め物や被せ物の削り出しであるミリングを行なっていく事となります。光学印象は最近出てきた新しい印象法ですが、露出過剰に弱かったり、複雑な形態に対する解析に弱いなどといった画像解析特有の弱点もありますが、今後はさらにこれらの弱点も改善されていき将来的には光学印象が広く普及するようになると思われています。しかしながら従来通りの印象方にもそれ特有の有利な点があるため必要に応じて両方の印象方を併用する事になっていくのかもしれません。
参考文献: Intraoral Scanner Technologies: A Review to Make a Successful Impression. R. Richert et al. Journal of Healthcare Engineering. 2017.
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