口の中はあまりしげしげと見ることがないと思いますがふとした時に何かが口の中にポツンと赤黒い点ができている事に気がついて受診される方がいます。
今回はその中でも血腫という口の中の血豆と、血種とは違う様々な良性、悪性の腫瘍や色素沈着についてお話をしようと思います。
記事の追記:2020年1月11日
口の中の赤黒いできもの(血豆の場合)
血種とは一言で言えば口の中にできた血豆です。
通常は半球状に口腔内に膨隆すらため舌で触った時に『できもの』のようなものができたと自覚して受診される方がいます。頬側にできた血豆を鏡で見て心配されて受診される患者さんがいますが、血豆ができる前に頬を噛んだりもしくは寝ている間に知らずに噛んでしまってできる事があります。
口の中に血豆ができる原因の一つに自分の歯で口腔粘膜を噛んでしまう咬傷があるため、血豆ができている方はしばしば頬を噛む事があったり、咬傷が瘢痕性治癒した跡や歯の頬粘膜への圧痕が見られる事があります。
血豆の見た目は頬粘膜との境界が明瞭で粘膜下に赤色から暗赤色の半球状の膨隆として見られる事が比較的多いです。
潰れると中から血液成分の混ざった内容物が出てきて半球状の膨隆も消滅します。
粘膜下に貯留した血液成分なので丁度手や足にできる血豆と同じ状態を呈しています。咬傷が原因でできた口腔内の血豆は再び同部位を噛む事で血豆がやぶれ膨隆が自然となくなってしまう事もしばしばあります。
境界明瞭な円形で頬にできる事が多く血の色をしている口の中の豆
色が濃く黒に近い暗赤色をしている頬にできた口の中の血豆、境界明瞭な円形をしている
舌の咬傷:咬傷は舌にもできる事があり場合によっては舌に血豆ができる事もある
さらに咬傷は唇にできる事もあり唇にできた場合は血豆にならずに唇に粘液嚢胞として腫瘍のような膨らみを作る事もあります。
(関連記事:下口唇粘液嚢胞(下唇にできる噛むと潰れる膨らみ))
口の中の血豆(血腫)ではない別の赤黒いできもの(血管腫の場合)
口腔粘膜にできる血豆と間違える事のあるできものに良性の血管腫というできものがあります。
血豆は通常は数ミリ程度の小さいものがほとんどですが血管腫の場合は大きさは様々です。
血管腫は血管組織の増殖と拡張によって腫脹する病態で腫瘍ではなく血管組織の奇形と考えられています。
血管腫は血管組織のある様々な場所にできるため口腔内の他に口唇にできる事もあり、深いところに大きな血管腫ができると口腔粘膜組織や舌などの腫脹として見られる事もあります。
血管組織の奇形なので内部には血液が循環しており粘膜の比較的浅い部位にできると暗赤色の腫瘍として見られるため血豆と似ている部分もありますが形態は円形とは限らず蛇行する様な形態として見られる事もあります。
さらにおおきな違いは血豆の場合は血液成分の貯留なのに対して、血管腫では循環する血液によって暗赤色の色を呈するため、圧迫によって血流を阻害する事で血管腫の場合は圧迫中は暗赤色が消退するのを確認する事ができる場合もあります。血豆では圧迫によって暗赤色が消退する事はありません。
下唇にできた血管腫:奇麗な円形となる血豆とは違い、血管の蛇行による形が確認される。膨隆もわずかで圧迫時に赤色が消退する。
口腔内で見られる様々な色素を伴ったもの(良性のもの、悪性のもの)
粘膜にできる色を伴った疾患としては他にもメラニン色素沈着やメタルタトゥー、悪性黒色腫などがありますがこれらは黒色に近い色をしています。
メラニン色素沈着やメタルタトゥーは歯肉に見られる事が比較的多く形態も円形ではなく不正な形をしており境界もやや不明瞭ですが悪性黒色腫のように治療が必要とはなりません。
メラニン色素沈着はホクロのようにメラニン色素細胞によって口腔内にメラニン色素が産生されて黒い色素が口腔粘膜に産生された状態です。
メタルタトゥーは歯科用金属で使われる金属粉やイオン化した金属が口腔粘膜に沈着した状態でメタルタトゥーが確認できた近くに歯科用金属が使われていたり、かつて金属が付かされていた形跡が確認できます。イオン化した金属はさらに金属アレルギーを引き起こす事もあります。
これらのメラニン色素沈着やメタルタトゥーは腫瘍のように膨隆する事や違和感を感じる事もほとんどなく、鏡で見て初めて気が付く事がほとんどです。見た目では色素がぼんやりとグラデーション状に口腔粘膜についているように見える事が多いため、初めて気が付かれた患者さんの中には驚かれる方もいます。
歯肉にできたメラニン色素沈着、上下前歯部の歯肉に横に広がるように淡い黒っぽいメラニン色素が広がっている。口の中にできる血豆のように円形にはならない
(関連記事:歯科金属アレルギーのあれこれ)
口腔内にできる悪性黒色腫
悪性黒色腫に関しては見た目がマダラ状で辺縁不正、境界不明瞭な腫瘍性組織の状態を呈しており悪性腫瘍に分類されます。
初期の段階では良性のものと見分ける事がむつかしい場合もありますが、見た目は口の中の血豆とは全く違っています。さらに、良性の色素沈着とは違い腫瘍の進行によって色素が口腔粘膜に染み出るようにひろがり、濃淡も部位によってまちまちとなります。
色素産生が進んだ部位では黒色を示しすように、もともとはメラニンを産生する細胞だったものが悪性化した腫瘍と考えられています。腫瘍の進行段階によってはびらんや潰瘍が見られる事もあり、色素産生とびらんや潰瘍などの傷が混在する状態を呈する事もあります。
特になかなか治癒しない口内炎の場合その診断に注意を払う必要があります。
悪性黒色腫の形態や大きさは様々で、時には明確な着色を認めないこともある予後の悪い悪性腫瘍です。
血豆やメラニン色素沈着、メタルタトゥーの場合は範囲が変わる事はほとんどありませんが、悪性黒色腫の場合は腫瘍の進行と共にその色素の範囲もどんどん広がってくる点が大きく違います。
悪性黒色腫と診断された場合は速やかに治療を開始する事が大変重要となります。
口腔内にできた悪性黒色腫(メラノーマ):染み出るように境界不明瞭な黒色の病変が広がり濃淡もまばらになっており、腫瘍組織の一部にびらんや潰瘍も認める。血豆とは全く見た目が異なる様子が分かる。
(関連記事:口の中の傷(治らない口内炎))
境界がはっきりしない黒色の病変が舌に見られる場合は菌交代現象による黒毛舌の可能性もありますので、色の変化が見られる前に体調を崩したり何か薬を服用したかといった情報も大切になります。
(関連記事:舌の変色(舌の色が黒くなったら))
普段あまり口の中を鏡で見る事はそれほどないと思いますが、何かのきっかけで口の中を見ると血豆の様なできものや白いものや赤いものと様々なものが見つかる事もあると思います。口の中にできた血豆とその他の良性、悪性の色のついたできものは見た目も違えば経過も全く違うのでので気になったら早めに医療機関を受診されるといいと思います。
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