体の中では骨を作ったり溶かしたりして骨の再構築(骨リモデリング)が常に行われていますが、この骨リモデリングの代謝のうち骨を作る作用をしている細胞が骨芽細胞、骨を溶かす作用をしている細胞が骨芽細胞です。この骨リモデリングですが歯科領域において歯周病やインプラント、抜歯後の骨修復、根尖病巣の骨欠損部の修復など様々な疾患や治癒過程において大変重要な働きをしています。そこで今回は歯周病や炎症性疾患などの際に骨を溶かす破骨細胞についてお話をしようと思います。
骨を溶かす破骨細胞
歯周病などの炎症性疾患や嚢胞、良性腫瘍または悪性腫瘍では骨の吸収が行われますが、疾患自体は細菌感染が原因になっていたり腫瘍そのものが増殖して疾患の原因となっておりますが、この際の骨の吸収に関して共通する事はこれらの骨吸収は破骨細胞によって行われているという事です。細菌の増殖によって細菌が骨を直接溶かしているわけではなく、腫瘍が骨を直接溶かしているわけではありません。これらの細菌感染による炎症などが間接的に破骨細胞を刺激して骨の吸収を促進しています。破骨細胞を活性化させる因子としては様々な物質がありますが破骨細胞の分化に重要な役割を果たすRANKLというサイトカインが非常に有名です。この破骨細胞分化を促進するRANKLは感染による炎症の際に発現したり悪性腫瘍によって骨芽細胞を介して発現されたりします。
破骨細胞
この、様々な要因で骨を溶かす破骨細胞ですが他の細胞にはない様々な特徴があります。1番の特徴は骨を溶かすという能力です。骨はカルシウム塩結晶を成分として形成されていますが破骨細胞にはこのカルシウム塩結晶を溶解させるための水素イオンの放出能力があり骨に面した部位から水素イオンを放出し虫食いのように骨を溶かしていきます。骨が溶解された痕は破骨細胞が存在した直下にハウシップ窩と呼ばれるくぼみ状のヘコミが出来上がります。この破骨細胞は複数の核を持ち多核細胞であるマクロファージと共通の前駆細胞を持ちます。実際にマクロファージに破骨細胞分化因子などを加える事でマクロファージを破骨細胞様細胞に分化させてカルシウム塩の吸収能力を付加させる事も可能です。この破骨細胞とほぼ同様の細胞に破歯細胞という細胞があり、破歯細胞は歯質を吸収する事で歯根に対して外部吸収を引き起こします。根尖病巣での破歯細胞による外部吸収が歯内治療おける正常な根尖最狭窄部の吸収を引き起こすなどのメカニズムの理解も歯医者での治療に関して重要な項目となってきます。
このように普段あまり気にしない骨再構成のメカニズムを理解する事も千種区の阿部歯科では臨床的な歯科治療計画立案のために大切にしています。