こんにちは、名古屋市千種区の歯医者の阿部歯科です。細菌感染という言葉を聞いた事があると思いますが歯科疾患の多くも細菌感染によって成立しています。そのため今回はそもそも細菌感染とはどういう事なのかというお話をしようと思います。
細菌感染
その名の通り細菌が生体に対して感染を成立させている状態です。細菌とは正式には真正細菌と呼ばれる核膜を持たない原核生物の事で、カビである真核生物の真菌や非生物のウイルスとは全く別の生物です。真正細菌と同じように見られる古細菌と呼ばれる間欠泉などの過酷な環境に生息する生物もいますがこの古細菌も進化的には真正細菌とは別の種類に分類されます。この真正細菌が口腔内で感染を成立させて歯周病や歯の根の先の膿の発生を引き起こしています。
感染とは
感染とはその病巣で増殖を成立させた状況になります。例えそこに細菌がいても増殖する事ができていなければ感染とは言われず、例えば血液の循環の中に細菌が入り込んでも増殖する事ができなければ菌血症と呼ばれ、増殖が成立すれば敗血症と呼ばれます。重度の歯周病では腫脹して血管透過性も上がった感染部位の歯周組織で歯周病関連細菌が血液の流れに入り込み慢性的な菌血症の状態にあると言えます。この循環器系に入り込んだ細菌が心臓の弁などに付着して感染を成立させると心疾患の原因となり得る可能性があるのです。このように、感染とはあくまでも感染部位において細菌の増殖が成立する事が要件となるのです。
何故感染するのか
細菌が感染するためにはまずは細菌が生体の組織に対して付着もしくは侵入が成立する必要があります。この際に利用されるのがそれぞれの細菌が特異的に持つタンパク質でこのタンパク質の機能によって生体の細胞にたいして付着もしくは侵入を成立させていきます。実験的には特定のタンパク質をコードするそれぞれのORFと呼ばれる遺伝子領域を欠失させる事で細菌の特定のタンパク質が人の細胞に対して付着や侵入に寄与しているかを調べる事ができます。
付着や侵入を成立させるタンパク質を特定したら
そのタンパク質を特定する事が出来ればその細菌の細胞への付着や侵入メカニズムを解明する事が可能となってくるためそのメカニズムを抑制する薬の開発など治療法への道筋をつける事も可能となってきます。そのため、それぞれの細菌の感染成立のメカニズムを明らかにする事で治療の可能性の幅を広げる事が出来るのです。