今池から5分の歯医者の阿部歯科には様々な職業の方が来院されますが、様々な職業の中で仕事内容によっては特定の疾患にかかりやすくなる職業があります。職業病と呼ばれる疾患なのですが、歯科領域においても酸を扱う職業で酸の影響で歯が溶けてしまい虫歯のようになる酸食症という疾患がありますが、職業病と呼ばれなくとも特定の仕事を生業にしている人が虫歯や歯周病などになりやすい事があります。その中でもスポーツを仕事にしている人、特にプロのアスリートは虫歯や歯肉炎・歯周病リスクが高まるという事が昔からしばしば言われる事をご存知でしょうか?
記事の追記:2019年10月25日
通常よりも多く歯を磨いているのに
オリンピックゲームのフィールド、トラック競技やスイミングなど、さらにはプロスポーツ選手など多くの競技においてトップアスリートは一般的な人に比べて1日に2回以上歯を磨きフロスの使用率が高いにも関わらず約半数が虫歯を持っており、酸食症も約半数ほどが疾患を抱えていると言われています。さらには歯肉炎・歯周病の罹患率も90%ほどに達していると言われます。このような虫歯や歯肉炎・歯周病による痛みがスポーツのパフォーマンスにも影響を及ぼしているという報告もたびたび上がっており、トップアスリートの約3分の1が何らかの歯科疾患により練習や試合のパフォーマンスに影響を訴えていると言われます。
アスリートの虫歯は職業病?
私も大学の時は陸上部に所属していたのですが、夏の暑い中での練習や試合中には電解質や糖質補給としてスポーツドリンクやエナジーバーを摂取していました。これらの電解質や糖質の補給は汗を多くかき激しく体を使うスポーツにはとても大切なものと言えるもので汗によって失われた体内の電解質の補給や即効性のエネルギー補給に糖質は欠かせないものとも言えます。トップアスリートにおいては約90%がスポーツドリングを利用し、エナジージェルも約70%、エナジーバーでは約60%のアスリートが何らかの形で利用していると言われています。これらを摂取して栄養補給する事が練習や試合のパフォーマンスにも大きく関わると同時に口腔内が酸性環境になってしまうという難しい点もあります。
そのため、職業の特性上どうしても口腔内環境が酸性になりやすいという事がアスリートにおいて一般的な人よりも歯を磨く傾向が高いのに虫歯や歯肉炎・歯周病になりやすいという傾向を引き起こしてしまっています。激しいスポーツをする上で電解質や糖質の摂取はとても大切な事なので虫歯はアスリートの職業病とも言えるのかもしれません。さらにトップアスリートにおいて半数ほどが1年以内に歯科医にかかっており、歯磨きの頻度と合わせてむしろ一般的な人よりも口腔内衛生環境に関心を持っていると考えられるものの仕事の特性上歯が影響を受けやすくなっているのです。そのため、アスリートに対する口腔内衛生環境への対応が世界的に現在も模索されています。職業によっては様々な歯科事情が多くありますのでそれぞれの職業の特性に合わせた歯科治療への対応がとても大切になるのです。
参考文献
1) Oral health and impact on performance of athletes participating in the London 2012 Olympic Games: a cross-sectional study. I. Needleman, et al. Br. J. Sports. Med. 2013.
2) Oral health of elite athletes and association with performance: a systematic review. P. Ashley, et al. Br. J. Sports. Med. 2015.
3) Oral health and performance impacts in elite and professional athletes. J. Gallagher, et al. Community Dent. Oral Epidemiol. 2018.
4) Oral health-related behaviours reported by elite and professional athletes. J. Gallagher, et al. Br. Dent. J. 2019