歯科治療において局所麻酔薬や飲み薬などを使う際に注意する事の一つにアレルギーという問題がありますが、アレルギーといってもいくつか種類があるのはご存知でしょうか?そこで今回はアレルギーに関してはお話をしようと思います。
そもそもアレルギーとは
アレルギーの正体は体の免疫機構が対象となる抗原に対して過剰に反応する事です。アレルギーは免疫機構が抗原のエピトープと呼ばれるタンパク質の特定の部位に対して反応を示す事で起きますが、同時に体を細菌などの外敵から守る働きをしています。金属アレルギーという言葉もありますが免疫機構の抗体はタンパク質上にあるエピトープの立体構造に対して反応をするため金属が直接免疫機構を刺激してるわけではなく、溶出した金属イオンによる影響でタンパク質の立体構造に影響を及ぼしアレルギーを引き起こすと考えられています。このように、体の防御機構である免疫機構の反応が特定のタンパク質に過剰に反応している状態がアレルギーと言う事ができます。
抗原抗体反応という言葉
抗原となるタンパク質のエピトープの部位に特異的に接続するのが抗体という事になるのですが、この反応を抗原抗体反応と言います。抗体は非常に特異的な反応を示しそれぞれの抗体に対してそれぞれにあったエピトープしか接続しません。これが遺伝子的に個人個人に割り当てられた抗体の特異性へと繋がり、人によってアレルギーが出る人と出ない人という差を生み出す事になります。人類の進化上でより多くの人々に共通して割り当てられた抗体の遺伝子もあれば極々僅かの限られた人たちだけが持っている抗体というのもあります。リウマチなどの自己に対する抗体やアレルギーといった本来の目的と違った抗原抗体反応は多くの人々の多様性の中で生まれて来たものでもあります。
アレルギーの原因は個人の持つ抗体の特異性にある
例えば花粉症もアレルギーの中に含まれますが、それぞれの作用機序によってアレルギーの起こる免疫機構の経路が変わってきます。花粉症やアレルギーの中でも注意の必要が出てくるアナフィラキシーショック(※歯科治療とアナフィラキシーショック)は共にIgEと呼ばれるY型の形をした2箇所のエピトープ認識部位を持つ抗体が原因となって起きますが、この抗体によって引き起こされるアレルギーは抗原に晒されてからすぐに起きる事から即時型アレルギーと呼ばれます。花粉症の方が花粉を吸ってすぐにアレルギー症状が出るのと同様に歯科治療で使われる薬剤などによるアナフィラキシーショックでもすぐに症状が現れます。アナフィラキシーショックはアレルギーの結果の一つなのですがくしゃみが出る花粉症でとの大きな違いは血圧の低下による循環不全を伴う全身的な機能不全という点にあります。そのため、アナフィラキシーショックはショック状態を伴った症状であり全身的な循環不全も含めて非常に注意しないといけない状態と言えます。
これらのアレルギーの他にもIgGと呼ばれる抗体や補体と呼ばれる免疫機構に関するタンパク質などが関連する様々なアレルギーがあり、一言でアレルギーと言っても抗原に晒されてからアレルギーの起きる速度や起きる機序など様々なものがあるのです。
執筆者
名古屋市千種区池下の歯医者
阿部歯科 副院長
阿部利晴