こんにちは、千種区の歯医者、阿部歯科の阿部利晴です。虫歯や歯周病、口の中の細菌感染や口唇ヘルペスなどの病気は微生物によって起きる疾患ですが、微生物とは何かという事を今回はお話しようと思います。
微生物とは
肉眼で見えない生物や非生物を総称したものです。これには原生生物や真菌、真正細菌、ウイルスなどが含まれています。微生物という言葉は非常に広い意味で使われており実際に歯科医学的に使われる場合は真菌や真正細菌、ウイルスなどに分類されて細かく使われます。
真菌
歯科医療において出てくる真菌で有名なものにはカンジダ・アルビカンスがあります。カンジダ・アルビカンスは長期の抗生物質服用や義歯などの清掃が不十分な場合に口腔内に発生するカビの事です。真菌は細胞の中に核膜を持つ真核生物で大きさ的には真正細菌よりも大きく真正細菌に効く抗菌薬の多くが無効になるため抗菌薬の長期投与で真菌が口腔内に過剰に増殖してしまう場合があります。
真正細菌
虫歯や歯周病、多くの感染がこの真正細菌によって引き起こされています。真正細菌は真菌とは全く別の生物で生物学的には遺伝子情報であるDNAの周りに核膜を持たず特殊な環状のDNAを持つ原核生物でその構造もペプチドグリカンで構成される細胞壁などの真正細菌にはない特殊な構造があり、これらの真正細菌特有の構造などを狙って抗菌薬は開発がされています。真正細菌には非常に多くの種類が存在し、それぞれの特性によって様々な病原性を発揮して虫歯や歯周病などといった疾患を引き起こします。
ウイルス
歯科領域において問題となる多くのウイルスが口唇ヘルペスや帯状疱疹ウイルスなどのヘルペス属と呼ばれるウイルスや乳頭腫ウイルスなどといったものです。ただ、多くの人に関連があるウイルスは口唇ヘルペスウイルスがほとんどで、口内炎や口角炎の原因になります。歯科領域においては他にも様々なウイルスが関連してきますが比較的稀なものが多くあります。ウイルスが真菌や真正細菌と違う1番の点はウイルスは生物ではないという点です。ウイルスは断片状になったDNAもしくはRNAの断片がカプシドと呼ばれるタンパク質の殻に包まれた非生物で自律増殖ができません。生物であるためには自ら増殖できる自立増殖の能力が必要不可欠ですがウイルスには自立増殖する能力はなく他の細胞に感染する事で宿主の増殖機構を利用して増えるという特徴があります。
これら真菌、真正細菌、ウイルスのように生物学的には全く別の生物でその生物学的な特性を利用して薬による治療も行われるのです。